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褥瘡かどうか見分ける方法
公開. 更新. 投稿者:褥瘡.この記事は約8分4秒で読めます.
5,085 ビュー. カテゴリ:褥瘡の見分け方
皮膚が赤くなっている場合、それが一時的なものか褥瘡(床ずれ)なのかを見分ける必要があります。
最も簡単なのは、赤くなった部位が圧迫されない姿勢にして、約30分後に赤みが消えているかどうかを観察する方法です。
赤みが残っていれば褥瘡(床ずれ)の可能性がありますので、すぐに医師または看護師に相談しましょう。
褥瘡の原因
褥瘡(床ずれ)ができる直接の原因は、ベッドのマットや布団、車いすなどと接触する部分の皮膚への持続的な圧迫ですが、その他にも褥瘡(床ずれ)を発生させやすくしたり、治りにくくするさまざまな原因があります。
・皮膚における原因:ベッドのマットや布団、車いすなどと皮膚の間に摩擦・ずれが生じ、皮膚が弱くなっている/発汗や尿失禁・便失禁などにより皮膚が湿っているなど。
・全身的な原因:食事が十分に摂れず栄養が不足している/やせている(骨が突出している部分にできやすいため)/持病(糖尿病など)があるなど。
・社会的な原因:介護力(マンパワー)の不足/福祉制度・サービスなどに関する情報の不足など。
褥瘡は重大な問題
褥瘡は合併症ですが、重症化すると敗血症を引き起こし、命を落とす人もいます。
また、褥瘡が原因でほかの病院に転院できない、施設に入れないといった患者さんが多いという現状もあります。
高齢化に伴い、在宅医療へのシフトや入院している患者さんの「持ち込み褥瘡」の増加などがみられ、褥瘡対策の重要性はますます高くなっています。
「床ずれ」と軽く考えられがちですが、基礎疾患と同じくらい重く考えるべきもの。
「たかが褥瘡、されど褥瘡」という認識をすべての医療者がもつ必要があります。
褥瘡のデザイン
褥瘡や熱傷などで局所的にできた傷のことを医学的に創と呼び、褥瘡の創の重症度を評価するツールとしては、日本褥瘡学会が開発したDESIGN(デザイン)が用いられている。
DESIGNとは、創の深さ(Depth)、浸出液(Exudate)、大きさ(Size)、炎症/感染(Inflammation/Infection)、肉芽組織(Granulation tissue)、壊死組織(Necrotic tissue)、の英語の頭文字を取ったもので、それぞれアルファベットで軽度のものを小文字、重度のものを大文字で表記するという工夫がなされており、それの経過を簡便に記録できる票になっている。
Pocket(ポケット)
ポケットが存在しない場合は何も書かず,存在する場合のみDESIGNの後に-Pと記述する。たとえば,深さ,大きさ,壊死組織が重度であり,他が軽度でポケットの存在する場合は,DeSigN-Pと表記する。
外用薬を正しく選ぶためのポイント
ほかの疾患にも当てはまるることですが、まずは病態を評価し、そのうえで病態に応じた外用薬を選択します。
褥瘡の病態評価では、①発症部位、②創部と骨突出部との位置、③創の形態、④創縁の性状、⑤残存組織、⑥肉芽の形態と性状、⑦ポケットの有無と方向、⑧創周囲の皮膚の移動方向と大きさ、から選択すべき外用薬を判断します。
ただし、褥瘡の場合は1つの創のなかに、さまざまな病態がみられますので、その点に注意が必要になります。
褥瘡
褥瘡は、局所の圧迫やずれによる血流障害によって、皮膚や皮下組織が障害されることで発症する阻血性の皮膚潰瘍です。
そのため外力を十分除去できない活動性の低下した患者の骨突出部位である仙骨部、尾骨部、踵部、大転子部などに好発する。
発症部位は仙骨部でおよそ50%を占め、次に踵部、尾骨部、大転子部があげられている。
高齢者は、皮膚の加齢変化(水分量・たんぱく質量・皮膚脂質量の低下、コラーゲン線維の減少、皮下組織の萎縮など)によって皮膚の弾力性が低下し、圧迫やずれに弱い皮膚組織になっています。
そのため、褥瘡患者の半数以上は高齢者といわれます。
褥瘡は、基礎疾患や廃用症候群などによる寝たきり状態の患者さんに多く見られますが、歩行可能な方でも拘縮や神経麻痺、抗精神病薬やパーキンソン病治療薬などの薬剤による無動、仰臥位(仰向けの姿勢)からベッドの上半身部分を挙上する頭側挙上や車椅子移乗などの際の皮膚のずれによっても発症することがあります。
褥瘡の病期分類
褥瘡には皮膚壊死が真皮浅層に止まる浅い褥瘡と、皮下脂肪組織以下に及ぶ深い褥瘡とがあります。
浅い褥瘡は短期間で治癒も可能ですが、筋肉まで病変が及ぶような深い褥瘡では、治癒までに1年以上かかることもあります。
深い褥瘡が治ってゆく過程で、褥瘡の表面の色に変化があります。
通常は「黒色期」、「黄色期」、「赤色期」、「白色期」の順で推移します。
黒色期・・・壊死した組織の塊が黒く変色して付着した状態
黄色期・・・塊状の黒色壊死組織が取り除かれ、黄土色の深部壊死組織や不良肉芽が露出するようになる状態
赤色期・・・傷が治る過程で「肉芽組織」と呼ばれる血管に富む組織が成長してくる時期
白色期・・・肉芽組織が盛り上がり、周囲の皮膚との段差がなくなると周囲皮膚から「上皮化」と言って皮膚ができて傷が塞がる過程が始まる時期
浅い褥瘡
浅い褥瘡では、発赤や腫脹、出血、水疱、びらんといった症状がみられます。
浅い褥瘡が形成される前段階では、「反応性充血」がみられ、輪郭不鮮明な発赤を認めます。
反応性充血による発赤は患部を指で押すと、白く退色し、再び赤く戻りますが、浅い潰瘍の発赤は輪郭が鮮明で、患部を押しても白く退色しないため、このことで両者を鑑別できます。
反応性充血に対しては、非ステロイド外用薬やヒルドイドソフト軟膏を用いて、これ以上進行しないようにします。
浅い褥瘡のうち、発赤や腫脹がみられる場合は、白色ワセリンを塗り、フィルムドレッシング材で被覆して患部を保護します(フィルム材だけでも可)。水疱、びらんが生じた場合では、水疱が緊満状態であれば痛みを伴うことが多いため、水疱内の水を抜き、ガーゼで保護します。
緊満状態でなければ、ガーゼで保護するか、マクロゴール軟膏を塗布してフィルム材で被覆します。
びらん形成まで進んだ場合は、オルセノン軟膏+リフラップ軟膏(1:1)などで湿潤状態を作ります。
なお、滲出液が多めで、十分に肉芽形成がみられず、上皮化が難しい場合は、ユーパスタコーワ軟膏などを選択します。
また、壊死組織がある場合は、湿潤環境を作りながら、ゲーベンクリームなどで化学的デブリードマン(壊死組織の除去)を行います。
膿性分泌物が多い場合はユーパスタコーワ軟膏などを使用します。
深い褥瘡
深い褥瘡は、創の色調から黒色期、黄色期、赤色期、白色期に分類され、これらの段階を経て治癒していきます。
黒色期
硬い壊死組織がみられ、壊死組織は細胞増殖を阻害したり、感染の原因になる可能性もあるため、できるだけ速やかに除去することが望まれます。
また、壊死組織を速やかに除去することで、その後の肉芽形成や上皮化が円滑に進行します。
創表面を鑷子で押して、ブヨブヨしている場合は、深部の感染を疑い、直ちに壊死組織を切開して排膿、洗浄します。
硬い壊死組織に対しては、外科的デブリードマンを施行し、ヨード製剤などで清浄化を図ります。
軟らかい壊死組織に対しては化学的デブリードマンが必須で、滲出液が多いときはブロメライン軟膏などを、少ないときはゲーベンクリームなどを選択します。
黄色期
黄色壊死組織が露出する黄色期では、滲出液量をコントロールして、適正な湿潤環境のもとで壊死組織を除去し、肉芽形成を促すことが大切です。
そのため、水分量が多い場合はブロメライン軟膏などを、少ない場合はゲーベンクリームなどを選択します。
壊死組織が少なくなったら(移行期)、水分量が多ければユーパスタコーワ軟膏などを、少なければゲーベンクリームなどを選択します。
表面上は小さくみえても皮膚の下でポケットのように広がっている穴洞状の創をポケットといいます。
ポケット部の治療では壊死組織の除去、感染制御、湿潤環境の適正化、変形防止が重要です。
変形防止では、創を拡大させないようバンデージ(布製の伸縮テープ)による創固定を行って、創を安定化させます。
ポケット内の壊死組織を除去するためにはブロメライン軟膏やヨードホルムガーゼ、ゲーベンクリームなどを使用し、ポケット内の肉芽形成を促進するにはオルセノン軟膏やユーパスタコーワ軟膏、フィブラストスプレーなどを使用します。
その際、軟膏類はポケット内も含めて創内にしっかり充填し、ガーゼ類は詰めすぎない程度に詰め、最奥部に届くことが重要です。
ポケット内に滲出液が多い場合、充填した軟膏がすぐに溶けて薬剤が充填されていない死腔ができることがあります。
その場合には、デブリサンペーストをブレンドします。
これにより吸水性が持続し、また膨潤して死腔ができにくくなります。
いずれの場合も、湿潤環境の維持と感染制御、変形防止のために、フィルム材を必ず使用します。
赤色期
創面が清浄化された肉芽組織の段階で、良性の肉芽を形成させて上皮形成へ移行させるために、肉芽形成促進効果のあるオルセノン軟膏を選択します。
なお、オルセノン軟膏は補水性基剤を使用しているため、水分量が多い場合はマクロゴール軟膏などをブレンドして薬剤全体の水分量を下げます。
白色期
創の収縮と創周囲からの上皮化が起こります。
上皮化を促進するには水分コントロールを行って、緩やかな湿潤低下を図ることが重要で、水分量が多い場合はマクロゴール基剤を含むアクトシン軟膏を、少ない場合はフィブラストスプレーやリフラップ軟膏、オルセノン軟膏を選択します。
ドレッシング材
ドレッシング材は創を直接覆う治療剤料です。
創面保護や創面閉鎖・湿潤環境形成・滲出液吸収、感染抑制、疼痛緩和などの目的に応じ様々な種類のものが存在します。
外用剤の被覆
外用剤使用時の創傷被覆材には一般的にガーゼが使用されますが、創の乾燥や創への固着などに注意が必要となります。
・滲出液の少ない創にガーゼのみで被覆したり、軟膏を薄く塗布したガーゼで覆ったりすると、滲出液がガーゼに吸収されることで創が乾燥する。そのため、塗布量の増量やガーゼに生理食塩水を含ませる、水分含有量の高い乳剤性基剤(o/w)の外用剤に変更するなどの工夫が必要となる。また、基剤の特性に基づき湿潤環境を保持するために、ポリウレタンフィルム材により被覆する。
・滲出液が減少し、創縁が肥厚し表皮の巻き込みがみられる場合は、湿潤環境の保持のために外用剤の上から直接、またはガーゼの上からポリウレタンフィルム材で被覆する。
・ガーゼが創面に固着すると、交換時に再生した組織を傷つける可能性があり、治癒の遅延につながる。ガーゼの固着を防ぐには、外用剤を多めに使用したり、非固着性ガーゼを使用したりする。
ラップ療法
いわゆるラップ療法とは、「非医療機器の非粘着性プラスチックシート(例えば、食品包装用ラップなど)などを用い、体表面の創傷を被覆する処置を総称する」ものとして日本褥瘡学会用語集検討委員会で定義されています。
医療用として認可された創傷被覆材の継続使用が困難な在宅等の療養環境において使用することを考慮していよいとする、日本褥瘡学会の見解がしめされています。
注意として、すべての褥瘡に有効ではなく、滲出液の多い創や感染創への使用は慎むべきである。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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