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乳腺炎で抗生物質が処方されたら授乳中止?
公開. 更新. 投稿者:妊娠/授乳.この記事は約4分55秒で読めます.
3,937 ビュー. カテゴリ:授乳中の抗生物質
抗生物質は、添付文書上では「授乳を避ける」と記載されているものが多いです。しかし、小児に適応がある抗生物質であれば、まず心配はありません。
セフェム系とペニシリン系は、乳汁中移行が少ないです。
アミノグリコシド系薬は乳汁中に移行しやすいですが、乳児の消化管吸収率が低いので影響はそれほど大きくないです。
テトラサイクリン系は母乳中のCaとキレートを作るので乳児の腸管からの吸収は少ないと思われますが、小児への投与で歯牙着色の問題があるので避けたいです。
相対的乳児薬剤摂取量
・乳児の理論的薬剤摂取量=摂取した母乳の量①×母乳中の薬剤濃度②
①摂取した母乳の量:乳児期前半は150mL/kgとして計算
②母乳中の薬剤濃度=母親の血中濃度×M/P比③
③M/P比(Milk/Plasma ratio):母乳中薬剤濃度/母体血漿中濃度比
・相対的乳児薬剤摂取量=乳児薬剤摂取量(mg/kg/day)/母親の薬剤摂取量(mg/kg/day)
乳腺炎に対するアモキシシリン
添付文書上は「授乳中の婦人への投与は避けることが望ましいが、やむを得ず投与する場合は、授乳を避けること」と記載されている。
実際には成人が1回250mgを内服したときの最高血中濃度は3.68μg/mLで、M/P比は0.014〜0.043である。
体重5kgの乳児として理論的薬剤摂取量を算出すると、多く見積もっても3.68μg/mL×0.043×(150mL/kg×5kg)=0。118mgとなる。
通常、小児にアモキシシリンを使用する場合は20〜40mg/kg/dayであることから20mg/kg/dayで考えると、0.118mg÷(20mg/kg×5kg)=0.00118となり、治療で使用する量の0.12%である。
相対的乳児薬剤摂取量は0.25%となり、ほとんど乳児への影響はないことがわかる。
したがって、添付文書に記載されているような授乳中止は必要ないと言える。
乳腺炎
乳腺炎では乳腺がつまって炎症が起こり、痛みや発熱が起きます。
母乳はどんどんできるのに、出ていかないのが原因なので、一番の対処法は、赤ちゃんにいっぱい飲んでもらうことです。
しかし、乳腺炎のときに授乳をするのはとても痛いようです。なかなか出ないと赤ちゃんに噛まれますし。
そんなときは自分で搾乳するように言われることもあります。
乳腺炎と抗生物質
アンケートに授乳中と書かれた授乳婦さんに、セフゾンが処方されました。
セフゾンの添付文書を読むと、
組織内移行
患者喀痰中、扁桃組織、上顎洞粘膜組織、中耳分泌物、皮膚組織、口腔組織等への移行が認められた。なお、乳汁中への移行は認められていない。
乳汁に移行しないなら、授乳中でも安心だな。
と思い、話を伺うと、乳腺炎で処方された模様。
乳腺炎で処方される抗生物質が、乳汁中に移行しなくても効くのか、と悩む。
合成ペニシリンは、セフェム系に比べて乳汁中に分泌されやすい。セフェム系はほとんど移行しないので、乳腺炎の治療には合成ペニシリンを first choiceにする。ただし、新生児に下痢やカンジダ症を起こすことがあるので注意する。[産婦人科の実際 Vol.38 No.11 1989 ]
妊娠と薬_02-05
こんな記載もあった。
他のセフェムも調べてみると、
フロモックスは、
喀痰,肺組織,胸水,扁桃組織,中耳分泌液,上顎洞粘膜・貯留液,皮膚組織,胆汁・胆嚢組織,女性性器組織,抜歯創貯留液,口腔内嚢胞壁等への移行は良好であった。
なお,乳汁中への移行は認められなかった。
トミロンは、
喀痰、耳漏、扁桃、上顎洞粘膜、鼻茸、篩骨洞粘膜、尿道分泌物、抜歯創等へ良好な移行が認められた。また、子宮各組織への移行も認められたが、乳汁中への移行はほとんど認められなかった。
メイアクトは、
患者の喀痰、扁桃組織、上顎洞粘膜、皮膚組織、乳腺組織、胆嚢組織、子宮腟部、子宮頸部、瞼板腺組織、抜歯創内等への移行が認められた。また、乳汁中への移行は認められなかった。
バナンは、
投薬中は授乳させないよう注意すること。[母乳中へ移行する。]
おお、バナン。乳汁へ移行するじゃないか。
でも、授乳させられないってのは、乳腺炎がますます悪化する可能性があるので、やっぱり乳汁中には移行しないほうがいいのかな。
抗菌剤の投与は、乳腺の炎症部位に働かせるのが目的ではなくて、二次感染予防ってことなのかな。
よくわからないので、詳しい方がいればご教授いただきたい。
授乳中にニューキノロンはダメ?
授乳中にニューキノロンが処方されたら、まず疑義照会でしょうね。
オゼックスとかなら大丈夫なんじゃないか、とも思いますが。
オゼックスは禁忌にはなってませんが、
「母乳中への移行が報告されているので、授乳中の婦人に投与する場合には授乳を中止させること。」
と書かれています。
産婦人科や小児科医で無ければ、簡単に授乳中止させそう。
でも、メリットとデメリットを考えたら、授乳継続させたほうが良いでしょう。
「安全に使用できると思われる薬」に、クラビット、アベロックス、バクシダール、シプロキサン、タリビッドなどのニューキノロン系抗菌剤が挙げられています。
禁忌じゃなければ、医師の判断で使うこともあります。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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