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HDLコレステロールは高すぎても大丈夫?
公開. 更新. 投稿者:脂質異常症.この記事は約4分57秒で読めます.
4,344 ビュー. カテゴリ:善玉コレステロールは高い方が良い?
コレステロールには善玉コレステロールと悪玉コレステロールの2種類があります。
まあ、悪玉といっても、生命維持活動に必須であり、本来善玉も悪玉もありませんが。
LDLコレステロールは肝臓からコレステロールを体内の各細胞へ運搬する役目を果たします。
HDHコレステロールは血管壁に存在する余分なコレステロールを回収し、肝臓へ戻す役割があります。
LDLコレステロールが増えすぎると、体内で消費しきれなかったコレステロールが血管内で溜まってしまい、動脈硬化の原因となります。
HDLコレステロールの基準値は、男35~70mg/dL、女40~80mg/dLです。
HDLが低い場合は問題になりますが、基準値を超えて高い場合にはどうなのでしょうか。
HDLコレステロールが上昇する要因として、アルコールや薬剤の摂取、胆汁性肝疾患や甲状腺機能低下などがあるので、これらの習慣や疾患をチェックすれば、基本的に高すぎても問題ないでしょう。
L/H比 悪玉÷善玉が2.5を超えると要注意?
悪玉コレステロールが140以上、善玉コレスロールが40未満のどちらか一方でも当てはまると脂質異常症と診断されます。
しかし、今注目されているのが、この悪玉と善玉の比。
「悪玉割る善玉」が2.5を超えると要注意で、通常は2.0以下、冠動脈疾患を経験した人や、心筋梗塞のリスクが高い糖尿病、高血圧などの人は1.5以下を目指すように求めています。
この「悪玉÷善玉」を計算すると、基準値の範囲内でも、悪玉135、善玉45なら3.0で対策が必要となります。
悪玉と善玉のバランス
コレステロールの検査値をみるとき、悪玉コレステロールLDLに主に着目しますが、善玉コレステロールHDL、総コレステロールにも着目します。
このとき、悪玉コレステロールLDLと善玉コレステロールHDLは別々に考えるのでなく、両方のバランスが重要とされ、LH比はその目安として注目されています。
LH比=LDL(悪玉)÷HDL(善玉)
LH比が2.0を超えると血管内のコレステロールの蓄積が増えて動脈硬化が疑われ、2.5を超えると血栓ができている可能性があり、心筋梗塞のリスクも高いことが指摘されています。
LH比が1.5以下では、血管内がきれいで健康な状態です。
スタチンなど脂質異常症治療薬を服用している患者の検査値は基準値におさまっていることが多いですが、理想の綺麗な血管を目指すために、LH比の話をしてみるのもいいかも知れません。
悪玉と善玉以外のコレステロール
血液中にはLDL-CとHDL-C以外にもコレステロールが流れているので、LDL-CとHDL-Cを足しただけではTCにはならないのです。
TCは低ければ低いほど良いと思っている方が多いようですが単純にそうとはいえません。
コレステロールは身体になくてはならないものです。
コレステロールの働きは様々で、身体に必要な次のような成分の原料になります。
・胆汁酸
・細胞膜
・各種ホルモン
・脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)
コレステロールは、食事からも摂取されますが、多くは肝臓で作られます。
そして、肝臓から血液中に入り、全身の細胞に届けられるのです。
コレステロールは単独では血液中に存在しない
コレステロールは水に溶けないので、コレステロールのままでは血液中に存在することができません。
そのために蛋白質と脂質とコレステロールのかたまりを作ります。
このかたまりはリポ蛋白と呼ばれ、含まれているタンパク質、脂質、コレステロールの割合によって、いくつかの種類に分けられます(カイロミクロン、VLDL、LDL、HDL)。
LDLやHDLというのはこのリポ蛋白の種類の1つで、コレステロールそのものではありません。
LDLに含まれるコレステロールがLDL-C、HDLに含まれるコレステロールがHDL-Cです。
これらは、コレステロールを多く含んでいるので、身体の中の脂質の指標としてまずはLDL-CとHDL-Cに着目するのです。
LDLとHDL
コレステロールの運び屋が「LDL」と「HDL」です。
LDLが増えすぎるとコレステロールが血管壁に付着して固まりをつくるので、血液の流れが悪くなり、血栓ができやすくなって、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などの動脈硬化性疾患のリスクが増すことになります。
そのため、LDLコレステロールは「悪玉」と呼ばれています。
HDLは、血管壁に付着したコレステロールをほぐし剥がれやすくして、動脈内から運びだしてくれます。
これによって動脈硬化のリスクが抑えられるため、HDLコレステロールは「善玉」と呼ばれています。
高脂血症とはもう言わない?
コレステロールが高い状態を高脂血症と言います。
いや、言いました。
現在は脂質異常症。
その理由は善玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロールのためです。
HDLコレステロールは高いほうがいい。
低いほうが問題。
そこの矛盾があったため、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセライド血症を含めた病態を脂質異常症と呼ぶようになりました。
日本動脈硬化学会が2007年、ガイドラインを改訂し、これまでの「高脂血症」という呼称を「脂質異常症」に改めました。
しかし、低HDLコレステロール血症以外の、高LDLコレステロール血症と高トリグリセライド血症を一括して高脂血症と呼ぶことには間違いは無いので、高脂血症と言っても差し支えありません。
脂質異常症診断基準(空腹時採血) | ||
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LDLコレステロール | 140mg/dL以上 | 高LDLコレステロール血症 |
120~139mg/dL | 境界域高LDLコレステロール血症 | |
HDLコレステロール | 40mg/dL未満 | 低HDLコレステロール血症 |
トリグリセライド | 150mg/dL以上 | 高トリグリセライド血症 |
Non-HDLコレステロール | 170mg/dL以上 | 高non-HDLコレステロール血症 |
150~169mg/dL | 境界域高non-HDLコレステロール血症 |
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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