2025年7月2日更新.2,507記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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公費負担医療制度一覧

公費負担制度一覧

法別番号制度負担割、ほか根拠法
10結核医療自己負担5%、健康保険優先感染症法第37条の2
11結核入院医療感染症法第37条
12医療扶助健康保険優先、自己負担の可能性あり生活保護法第15条
13戦傷病者療養給付全額公費戦傷病者特別援護法
14戦傷病者更生医療全額公費戦傷病者特別援護法
15自立支援医療(更生医療)原則1割、健康保険優先障害者自立支援法第5条
16自立支援医療(育成医療)原則1割、健康保険優先障害者自立支援法第5条
17療育医療自己負担の可能性あり、健康保険優先、18歳未満の結核児童児童福祉法
18原爆認定医療全額公費原爆被爆者援護法
19原爆一般医療自己負担ゼロ、健康保険優先原爆被爆者援護法
20措置入院精神保健福祉法
21自立支援医療(精神通院医療)原則1割、健康保険優先障害者自立支援法法第5条
22麻薬入院措置医療保険優先麻薬及び向精神薬取締法第58条の8
23養育医療自己負担の可能性あり、健康保険優先、入院を要する未熟児母子保健法第20条
24自立支援医療(療養介護医療)原則1割、健康保険優先障害者自立支援法
25中国残留邦人健康保険優先中国残留邦人自立支援法
28一類・二類・指定感染症医療保険優先感染症予防法
29新感染症原則全額公費感染症予防法
30心神喪失心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律による医療の実施に係る医療の給付心神喪失者医療観察法
38肝炎治療特別促進事業健康保険優先
51特定疾患など健康保険優先、疾病により自己負担の可能性あり、保険薬局では自己負担ゼロ特定疾患治療研究事業
52小児慢性特定疾患新規は18歳未満、継続して治療を要する場合は20歳未満まで 健康保険優先、疾病により自己負担の可能性あり、保険薬局では自己負担ゼロ児童福祉法による小児慢性特定疾患研究事業に係る医療の給付
53児童福祉施設措置医療健康保険優先、自己負担ゼロ児童福祉法第50条
54特定医療(指定難病)健康保険優先難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)
66石綿健康被害救済制度健康保険優先、自己負担ゼロ石綿による健康被害の救済に関する法律
79障害児施設医療原則1割、健康保険優先児童福祉法

公費負担医療

病気や障害に応じて、医療費の負担を軽減する仕組み

公費負担医療制度とは、簡単に言えば「公費」、すなわち国や地方公共団体の予算を財源として、特定の疾病や障害、患者の状態に応じて医療費の一部または全部を助成する制度です。通常、私たちが病院にかかるときには、健康保険証を提示して診療費の一部(原則3割、子どもや高齢者は軽減措置あり)を自己負担します。しかし、公費負担医療制度の対象となる場合には、さらにその自己負担分が軽減されたり、全額免除になったりする仕組みが用意されています。

公費負担医療制度は、患者や家族の経済的負担を軽くすることで、必要な治療の継続を支援し、社会全体として適切な医療の提供を推進することを目的としています。対象は難病や障害、感染症、精神疾患など多岐にわたり、それぞれに定められた要件を満たせば、国や自治体からの公費が充当されます。

公費負担医療制度の基本的な仕組み

まず公費負担医療制度は、大きく分けると以下の2つの考え方に基づいて設計されています。

特定の病気・状態に該当する場合に、自己負担を軽減する仕組み
・例:特定医療費(指定難病)助成制度
・例:小児慢性特定疾病医療費助成

一定の経済的条件や福祉的支援を要する人を対象に負担を軽減する仕組み
・例:生活保護による医療扶助
・例:被爆者援護法に基づく医療給付

いずれも、健康保険で賄われる部分以外の自己負担の減免、または保険適用外部分への支援が含まれる場合があります。

公費負担医療制度を利用するためには、必ず「申請」が必要です。診断書、所得状況の確認書類などを添えて、自治体(市区町村)または保健所に提出し、認定を受ける必要があります。認定後は「受給者証」や「医療券」などが交付され、それを医療機関に提示することで助成が適用されます。

公費負担医療制度の対象となる主な疾病・障害

対象となるのは、多くの場合「治療の継続が不可欠で、医療費負担が高額になりやすい疾患や障害」です。代表例として以下が挙げられます。

指定難病
国が定める難病(2024年4月時点で338疾患)に該当し、一定の重症度基準や所得要件を満たす場合、「特定医療費(指定難病)助成制度」が適用されます。
・医療費の自己負担は原則2割(上限あり)。
・月ごとの自己負担上限は所得に応じて設定。
・診断書は主治医が作成。

小児慢性特定疾病
18歳未満の子どもが特定の慢性疾患にかかっている場合、「小児慢性特定疾病医療費助成制度」により医療費が助成されます。

結核医療
結核は感染症法上の二類感染症に分類され、入院治療などが必要な場合、公費負担での治療が認められます。

精神通院医療
精神疾患で継続的に通院治療を受ける場合、「自立支援医療(精神通院医療)」が利用でき、医療費負担が原則1割に軽減されます。

更生医療・育成医療
身体障害者手帳を有する成人や18歳未満の児童に対する医療費助成制度です。
・更生医療は成人が対象。
・育成医療は子どもが対象。

生活保護(医療扶助)
経済的困窮により保険診療の自己負担分を支払えない場合、医療費が全額公費負担になります。

被爆者援護法による医療
被爆者健康手帳を有する方には、指定医療機関での治療が無償または一部自己負担で提供されます。

このほか、HIV感染症、肝炎治療、原爆被爆者、戦傷病者などを対象とした制度も複数あります。

公費負担医療の申請方法と流れ

多くの制度で共通する流れは以下の通りです。

●診断を受ける
・主治医が診断書を作成します。
・制度に応じた所定の様式を使用する必要があります。

●申請書類を準備する
・診断書
・申請書
・所得の証明書(住民税課税証明書など)

●自治体窓口へ提出
・保健所または市区町村役場の担当窓口
・審査・認定
・審査後、「受給者証」等が交付されます。

●医療機関での提示・利用
・医療機関に提示し、会計時に公費が適用されます。

なお、有効期限が1年(または2年)と定められている制度が多いため、継続利用には更新手続きが必要です。

公費負担医療制度の利用上の注意

公費負担医療を利用する場合、以下の点に注意しましょう。

●申請前にかかった医療費は対象外
申請後、認定を受けてからの医療費が助成対象です。

●一部自己負担が残る場合がある
所得や医療内容により、全額ではなく一部負担が残るケースもあります。

●指定医療機関での治療に限られる
制度により、指定を受けた医療機関・薬局でのみ利用できます。

●都道府県や市町村で助成内容が異なる場合がある
国の制度でも、自治体の独自上乗せがある場合があります。

●入院や訪問看護、薬局利用に関する規定が別に定められている
精神通院医療などは入院医療は対象外です。

よくある疑問

Q. 健康保険証がないときでも利用できますか?
公費負担医療は健康保険を前提にしているため、原則として保険証が必要です(生活保護は例外)。

Q. 他の制度と併用できますか?
併用できる場合とできない場合があります。たとえば、難病医療と精神通院医療は併用できることがありますが、自己負担の軽減割合に上限が設定されています。

Q. 収入が多いと利用できませんか?
所得制限がある制度もあります。所得超過の場合は対象外や軽減割合が変わります。

まとめ

公費負担医療制度は、患者が経済的な理由で治療を断念することを防ぎ、安心して医療を受けるための大切な社会保障の仕組みです。医療従事者も患者本人も、対象や申請手続きをきちんと理解しておくことが重要です。

病気や障害によって使える制度は異なるため、分からない場合は主治医や医療ソーシャルワーカー、自治体窓口に相談してみてください。これらの制度を活用することで、治療の継続がしやすくなり、生活の質の向上にもつながります。

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