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燃やせないゴミで注射器を捨てちゃダメ?
公開. 更新. 投稿者:糖尿病.この記事は約4分22秒で読めます.
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注射器・注射針・血糖測定器具の正しい捨て方

近年、医療は「病院で受けるもの」から「自宅で行うもの」へと大きく変わりつつあります。特に糖尿病の治療や慢性疾患の管理では、インスリン自己注射や在宅血糖測定が日常の一部となりました。さらに、在宅酸素療法や自己注射製剤(自己免疫疾患治療薬など)の普及も進んでいます。
こうした「在宅医療の拡大」に伴って大きな課題になっているのが、医療廃棄物の適切な処理です。
「注射器はどのゴミに出せばいいの?」「使用済みの針は家庭ごみでいいの?」「血糖測定器のセンサーはどうするの?」
こうした疑問は多くの方が抱えています。
法律・自治体のルール・安全面の観点から、家庭で使う注射器や針、血糖測定器具の廃棄方法を勉強します。
「感染性廃棄物」ってそもそも何?
まず、基本的な用語を整理します。
「感染性廃棄物」という言葉を聞くと、なんでもかんでも感染リスクがあるゴミを指すように感じますが、法律上の定義は明確です。
廃棄物処理法(正式名称:廃棄物の処理及び清掃に関する法律)
では、感染性廃棄物は
医療関係機関などで診療や治療、検査などに伴って生じるもので、感染症の原因となるおそれのあるもの
と定義されており、「事業系の医療廃棄物」を指します。
つまり、
・病院、クリニック、介護施設などで発生した使用済み注射針
・検査時の血液付きガーゼ
・血液や体液で汚染された医療器具
などが「感染性産業廃棄物(特別管理産業廃棄物)」として、法律上も厳格な処理が求められます。
一方、家庭で生じた同じもの(使用済みの注射針など)は、法律上「一般廃棄物(家庭ごみ)」に分類されるのが原則です。ただし感染性リスクが高い鋭利物であることに変わりないため、多くの自治体では「家庭ごみとして出すことを禁止」しています。
自宅で使う注射針は「感染性廃棄物」じゃない?
ここで混乱しがちなのが、病院と家庭で同じ注射針を使っても、法的な扱いが変わることです。
結論から言うと、
・自宅で使った注射針は「感染性産業廃棄物」には該当しません。
・しかし感染リスクを伴う危険廃棄物であるため、家庭ごみに混ぜて廃棄することは禁止されています。
自治体によっては条例などで、
「家庭で発生した注射針は家庭ごみとして出すことはできません。医療機関や薬局に持ち込んでください。」
と明記されています。
このため「感染性廃棄物」という用語は法律上は事業系廃棄物を指しますが、実務的には家庭で使った注射針もほぼ同様に「感染性の恐れがあるもの」として厳重な扱いが必要です。
インスリン注射に使った注射針の捨て方
糖尿病治療で日常的にインスリンを自己注射している方も多いでしょう。
・使用済みのインスリン針は医療機関・薬局に回収してもらうのが原則です。
多くの薬局では「使用済み針回収ボックス」を設置しており、処方を受けている患者さんは無料で持ち込みできます。
【廃棄手順の例】
・使用後すぐに針キャップを装着
・専用シャープスボックスに投入(なければ厚手のプラスチック容器に一時保管)
・薬局・病院の回収ボックスに持参
これを徹底することで、収集員や家族の刺傷事故を防げます。
注射器(本体部分)の捨て方
針が付いていない注射器本体はどうでしょう?
・基本的にプラスチック製の注射器本体は「燃やせるごみ」や「燃やせないごみ」として自治体の分別ルールに従って出せます。
【ポイント】
・使用済みの注射器でも針がなければ感染リスクは極めて低い
・とはいえ残薬や汚染がないか確認
・ビニール袋などで包み、作業員に分かるよう表示
「燃やせるごみか燃やせないごみか」は自治体により異なります。
例えば東京都は「プラスチック製品として燃やせるごみ」、一部自治体は「燃やせないごみ」に区分します。
血糖測定の針・チップの捨て方
自己血糖測定に使うランセット(指先穿刺針)やセンサーも混乱しやすい部分です。
ランセット(穿刺針)は注射針と同様、鋭利で血液が付いているため、
医療機関・薬局に回収を依頼するのが最適です。
一方、
チップ(センサー)は感染リスクが低く、法的には「一般ごみ」で問題ないとされています。
この扱いは「鼻血を拭いたティッシュ」と同様、感染リスクが極めて低いとみなされているためです。
ただし、血が大量に付いている場合は、袋に入れてしっかり封をし、「血液付着あり」と明記して廃棄しましょう。
家庭ごみと医療廃棄物の境界線
ここが一番混乱するポイントです。
・同じ針や器具でも、病院で出たら「感染性産業廃棄物」、家庭で出たら「一般廃棄物」です。
この理由は、
「排出元が医療機関か家庭か」で法律上の区分が分かれるためです。
しかし自治体は安全上、家庭でも注射針を一般ごみに出さないよう、条例で「回収を依頼する」ルールを定めています。
ではオムツは?
家庭で介護や育児に使用するオムツも同様です。
・自宅で使ったオムツは感染性廃棄物ではなく「一般廃棄物(家庭ごみ)」です。
処理方法は、
・排泄物はトイレに流す
・オムツを丸めてビニール袋に密閉
・燃えるごみへ
ただし、感染症(ノロウイルス、コロナなど)が疑われる場合は、袋に「感染性の恐れあり」と書いて封をし、収集員の方にリスクを知らせる配慮が推奨されます。
迷ったときの対応
「これはどこに捨てればいいの?」と迷ったら、自己判断は禁物です。
・まず自治体の公式サイトで「注射針」「医療廃棄物」で検索
・次にかかりつけ薬局に電話で相談
不明確なまま家庭ごみに混ぜると、収集作業員の命に関わるリスクが生まれます。
在宅医療の進展と廃棄の意識
これからさらに在宅医療が普及し、在宅で医療廃棄物が増える時代に入ります。
家庭であっても「自分で出したものに責任を持つ」という意識が必要です。
・「この注射針はどこに捨てる?」
・「この容器は燃える?燃えない?」
迷ったら必ず確認し、適切に処理することが、すべての人の安心を守ります。