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軟膏とクリームはどう使い分ける?
公開. 更新. 投稿者:皮膚外用薬/皮膚病.この記事は約4分56秒で読めます.
8,210 ビュー. カテゴリ:塗り薬の使い分け
塗り薬には、クリームや軟膏、ローションやジェルと色々あります。
どのように使い分けるのでしょうか?
まずクリームはサラっとしていて、軟膏はベタつくので、夏場はクリームが好まれます。
軟膏は顔に塗るとテカテカするのでイヤですね。クリームが好まれます。
水で洗い流すときも軟膏よりもクリームのほうがいいですね。
クリームは界面活性剤や防腐剤が入っていて、傷口などに塗るとしみます。
ジュクジュクした部位には軟膏のほうがいいです。
クリームのほうが使用感がいいので、患者に任せるとクリームの希望のほうが多そうです。
しかし、水分の入っているクリームは水分を吸収してしまうので、乾燥している肌に使うと、さらに乾燥してしまいます。
保湿効果を求めるなら軟膏のほうが適しています。
分類 | 分類 | 分類 | 例 | 特徴 | 商品 |
---|---|---|---|---|---|
疎水性基剤 | 油脂性基剤 | 鉱物性 | 白色ワセリン | 創面の保護および水分喪失を防ぐ。吸水性が低いため(水数9~15)、浸出液の吸収・保持能は極めて低い。 | キンダベート軟膏、リンデロンV軟膏 |
白色軟膏 | 白色ワセリンに界面活性剤とミツロウが加えられ、吸水性が高く、稠度は高くない。 | 亜鉛華軟膏 | |||
プラスチベース | ワセリンより液相の流動性が高く、展延性に優れており、温度による稠度変化が少ない。 | ブレオS軟膏 | |||
動植物性 | ミツロウ | パルミチン酸ミリシルとミリシルアルコールのエステルで、体温で軟化する。軟膏に稠度を与える目的で使用される。 | サトウザルベ軟膏 | ||
親水性基剤 | 乳剤性基剤 | 水中油型基剤(O/W型) | 親水軟膏 | 水分蒸発による冷却、消炎・止痒効果をもち、乾燥性皮疹に有用である。浸潤面では分泌物の再吸収により悪化させる。 | マイザークリーム、ロコイドクリーム |
油中水型基剤(W/O型) | ①水相を欠くもの 親水ワセリン | 白色ワセリンの吸水性を改善したもので、水数は170であり、展延性に優れている。結痂および落屑の創面に有用である。 | エキザルベ、レダマイシン軟膏 | ||
精製ラノリン | 粘着性および吸水性が高く、皮膚の柔軟剤として優れている。アレルギーの発生が多く報告されている。 | エキザルベ、レダマイシン軟膏 | |||
②水相を有するもの 吸水軟膏 | 外相が油相であるため親水軟膏よりも滑らかで塗布しやすいが、水洗で除去しにくい。親水軟膏と同様に、乾燥性皮疹に有用であり、浸潤面には適さない。 | オクソラレン軟膏、ネリゾナユニバーサルクリーム | |||
水溶性基剤 | マクロゴール基剤 | 吸水性が強いため、漿液性びらんに有用であり、分泌物を吸収してゼリー状となる。水洗性に優れている。 | アクトシン軟膏、カデックス軟膏 | ||
懸濁性基剤 | ハイドロゲル基剤 | 無脂肪性軟膏 | 冷却効果を有し、吸水性が非常に高い。浸潤面に有用であるが、乾燥能力が強力であるため、過乾燥に気をつける必要がある。 | ボルタレンゲル、イドメシンコーワゲル | |
懸濁性基剤 | リオゲル基剤 | FAPG基剤 | 脂肪族アルコールとプロピレングリコールからなり、油脂性基剤の特徴をもつが、外観はクリームに似ており、水洗で容易に除去できる。 | トプシムクリーム |
基剤の選択
患部の状態に合わせて適切な基剤を選択することが重要です。
滲出液が出てジュクジュクしていたり、びらんがあるとき、乾燥が強い場合はワセリンを用いた油脂性基剤の軟膏が適しています。
クリームは使用感はいいですが、乳化剤や防腐剤が配合されているため、皮膚への刺激がある場合があります。
毛髪のある部位はローション剤を選択します。
①軟膏:刺激性が少なく、患部を保護する作用があります。乾燥(カサカサ)した患部、びらん・潰瘍など湿潤した患部の両方に使用できます。べたつき感があります。
②クリーム:使用感がよく、主に乾燥した患部に適しています。若干の刺激性があります。
③ローション:軟膏やクリームが塗りにくい頭髪部などへの使用に適しています。若干の刺激性があります。
④スプレー:軟膏やクリームが塗りにくい頭髪部などへの使用に適しています。手を汚さずに広範囲に使用できますが、使用量がわかりにくいし、正常な皮膚にも散布する危険性があります。
⑤ジェル:炎症部位がかさついている場合や脂漏性皮膚炎に適しています。湿潤した患部には適しません。若干の刺激性があります。
水溶性基剤
水分を吸収する基剤であることから、主に湿潤面へ適応する基剤であり、水疱、膿疱、びらんおよび潰瘍面には最適ですが、乾燥しすぎることがあるので注意が必要です。
この基剤は水分を吸収すると溶けるため、病巣からの水分は基剤であるマクロゴールを通してガーゼに吸着されます。
そのため、ガーゼの交換および量には注意しなくてはなりません。
水溶性基剤の欠点として皮膚刺激があります。
この皮膚刺激は長時間持続するので十分な観察を行うことが大切です。
軟膏よりクリームのほうが効く?
一般に軟膏に比べクリームは皮膚透過性に優れている。
この一因として、クリームは乳化をしていること、および基剤中に主薬がより高い濃度で溶けていることが考えられる。
一方、臨床効果では軟膏とクリームは大きな差はなく、軟膏の方がクリームよりも効果が高いと評価されている製剤もある。
この透過量と効果の乖離の原因は明らかではないが、クリームは軟膏に比べ衣服で取れ易いとの意見もある。
また、クリームやローションは添加物が多いことから接触皮膚炎を起こし易く、水疱、びらん、および潰瘍には適していない。
湿潤面にクリームはダメ?
従来はクリームに代表される乳剤性基剤は滲出液がある湿潤面に使用すると、一度クリームに吸収された滲出液が再度皮膚から吸収されることにより、症状が悪化することから使用しない方がよいと考えられてきました。
また、乳剤性基剤の乳化剤である界面活性剤による刺激も問題となっていました。
しかし、最近では刺激性も随分と軽減され、乳剤性基剤を湿潤面に使用してもいいという意見もあります。
ただし、あまり滲出液が多い場合では乳剤性基剤は水をあまり吸収しないために適応しづらい場合もあります。
一般的には滲出液が多い場合には水溶性基剤を使用します。
クリームと軟膏の吸収
一般に、基剤からの薬物の吸収は
クリーム剤>FAPGゲル>軟膏剤・ヒドロゲル>液剤
の順である。
軟膏もクリームも同じ値段?
~軟膏、~クリーム、~ローションは全て同じ薬価です。
これらはすべて同じ剤形区分とされているためです。
外用薬
外-1 軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、液剤、散布剤、ゼリー、パウダー剤
外-2 噴霧剤、吸入剤、カプセル剤
外-3 眼科用剤(点眼剤、眼軟膏)
外-4 耳鼻科用剤(点鼻液、耳科用液、耳鼻科用吸入剤・噴霧剤)
外-5 パップ剤、貼付剤、硬膏剤
外-6 坐剤、膣剤
外-7 注腸剤
外-8 口嗽剤、トローチ剤(口腔内に適用するものを含む。)
外-9 外-1から外-8までのそれぞれの区分のキット製品
(注)ただし、上記で同一の剤形区分とされる薬剤であっても、組成及び規格が同一であって、製剤の工夫により効能、効果、用法又は用量が明らかに異なる場合は、別の剤形区分とみなす。
ローションで皮膚が乾燥?
塗り薬には、軟膏やクリーム、ローションなど色々な剤形があります。
皮膚がカサカサしたときには、基本的には油分を補うといいので、軟膏が用いられます。
しかし、ベトつきが気になります。
皮膚内部の水分も不足しているので、使用感の良いクリームやローションを使う、ということもあります。
しかし、ローションやクリームは皮膚につけて、その水分が蒸発する際に、一緒に皮膚の水分を奪ってしまい、逆効果の場合もあります。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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