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青魚を食べると蕁麻疹が出る?ヒスタミンと食中毒の関係
公開. 更新. 投稿者:花粉症/アレルギー.この記事は約3分46秒で読めます.
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青魚を食べると蕁麻疹が出る?ヒスタミンと食中毒の関係

「サバにあたる」「青魚を食べると蕁麻疹が出る」という言い伝えは、単なる迷信ではありません。その背景には、ヒスタミンやアニサキスによる“アレルギー様反応”が関与している可能性があります。食中毒と誤解されやすい蕁麻疹やアレルギー症状の原因について、ヒスタミンとアニサキスの視点から勉強します。
背の青い魚と蕁麻疹の関係
日本では古くから「背の青い魚を食べると蕁麻疹が出る」と言われてきました。サバやアジ、サンマなど、いわゆる青魚を食べた後に皮膚に発疹が現れるケースが多く報告されています。
この原因として挙げられるのが、魚に含まれるアミノ酸の一種「ヒスチジン」が変化して生じる「ヒスタミン」です。
ヒスタミンとは何か?
ヒスタミンは、体内でアレルギー反応や炎症反応に関与する生理活性物質です。鼻炎薬やじんましん治療に使われる「抗ヒスタミン薬」の対象となる物質でもあります。
通常、ヒスタミンは体内で必要に応じて生成・分解されていますが、外部から摂取された場合、過剰な量が体内に入ると以下のような症状を引き起こします:
・蕁麻疹
・皮膚の紅斑・かゆみ
・嘔吐・下痢
・頭痛・動悸
これは「ヒスタミン中毒」または「ヒスタミン食中毒」と呼ばれます。
ヒスタミン食中毒のメカニズム
青魚(サバ、アジ、サンマ、マグロ、カツオなど)にはヒスチジンというアミノ酸が多く含まれています。これらの魚が鮮度を失う過程で、表面に付着した細菌がヒスチジン脱炭酸酵素という酵素を使ってヒスチジンをヒスタミンに変換します。
このようにして生成されたヒスタミンが魚肉中に蓄積され、それを食べることで中毒症状が発生するのです。
特徴:
・加熱や冷凍では分解されない
・見た目や匂いで判断できない
・少量でも症状が出ることがある
つまり、「加熱調理済みの魚でもヒスタミン中毒は起こる」のです。
ヒスタミン中毒と食物アレルギーの違い
ヒスタミン食中毒と食物アレルギーは症状が似ているため混同されがちですが、原因と対処法が異なります。
項目 | ヒスタミン食中毒 | 食物アレルギー |
---|---|---|
原因物質 | 食品内のヒスタミン | アレルゲン(たんぱく質) |
発症時間 | 食後数分~数時間 | 食後すぐ~数時間 |
主な症状 | 蕁麻疹、頭痛、吐き気 | 蕁麻疹、呼吸困難、アナフィラキシー |
加熱による影響 | 無効(ヒスタミンは熱安定) | 加熱でアレルゲン減少することあり |
再発性 | 鮮度の良い魚なら起こらない | 一度感作されると再発しやすい |
アニサキスによるアレルギーもある
もう一つ、青魚でのアレルギー様反応の原因として知られているのがアニサキスです。
アニサキスは魚介類に寄生する線虫で、生魚(特にサバ、サンマ、イカなど)に多く含まれます。
従来は胃壁や腸壁に侵入して急性腹症を起こす「物理的障害」として知られていましたが、近年ではアニサキス由来の抗原によるアレルギー反応も報告されています。
特徴:
・胃痛・下痢とともに蕁麻疹が出現することがある
・加熱・冷凍処理で死滅するが、アレルゲンは残る可能性がある
アニサキスによるアレルギー症状は、時にヒスタミン中毒や食物アレルギーと見分けがつきにくく、注意が必要です。
ヒスタミン中毒を防ぐには?
・鮮度のよい魚を選ぶ(購入後すぐ冷蔵・冷凍)
・室温で長時間放置しない
・生魚はすぐに食べる
・加熱しても無害化されないため、調理前の保管が重要
・異常がなくても体調が悪くなったら医療機関を受診
特に業務用給食などでは、ヒスチジンの多い魚(サバ、マグロ、カツオ、アジなど)の取り扱いに注意が求められます。
まとめ
「青魚を食べると蕁麻疹が出る」という言い伝えには、医学的な根拠がありました。
・ヒスタミン中毒は食中毒の一種であり、鮮度低下によるヒスタミン蓄積が原因
・アニサキスによるアレルギーも、蕁麻疹の一因となる
・食物アレルギーとは異なるが、症状が似ているため混同されやすい
魚をおいしく、そして安全に食べるためには、「鮮度」と「調理前の保存状態」が何よりも大切です。とくに青魚を家庭や施設で扱う際には、ヒスタミン食中毒のリスクも念頭に置いて対応しましょう。