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効能効果、用法用量等に違いのある後発医薬品リスト
公開. 更新. 投稿者:調剤/調剤過誤.この記事は約4分33秒で読めます.
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効能効果・用法用量等に違いのある後発医薬品リスト

後発医薬品(ジェネリック)の普及が進む中で、先発品と効能効果や用法用量に差異のあるジェネリック製品について、改めて注目が集まっています。
「適応症が異なる後発医薬品」に関する最新の事情を踏まえ、薬局や薬剤師としての対応方針、疑義照会の実務、厚労省の見解、日本ジェネリック製薬協会が公開するリストの活用方法などを勉強していきます。
適応症が異なるジェネリックは変更してはいけない?
かつては「適応症が違っていても、レセプト減点されることはまずない」との見方が主流でした。その背景には、厚生労働省が出していた次のような見解があります:
「先発医薬品と効能効果に違いがある後発医薬品について、一律に査定を行うことは、後発医薬品への変更調剤が進まなくなること、また、それに伴い、医療費が増える可能性があること等を保険者に説明し、影響を理解してもらうよう努めていただきたい。」
つまり、「一律に査定するな」ということであって、「査定しない」と明言されているわけではありません。
最近では、実際に適応症の違いを理由にレセプト査定されたケースも報告されるようになっています。ジェネリック普及政策と査定方針の間で現場が揺れている状況と言えるでしょう。
疑義照会が求められるケースとは?
レセプト請求において、診療録や患者への聞き取りなどから承認された効能効果・用法用量と異なる可能性がある場合には、疑義照会が必要とされています。
しかし、実際には次のような課題があります:
・医師が病名を患者に伝えていないケースが多く、患者からの聞き取りだけでは適応の有無が分からない
・診療科名や処方内容から判断するにも限界がある
・疑わしいからといって毎回疑義照会をしていては業務が逼迫する
そのため、薬局としては「適応のないジェネリックは変更せず、すべて先発品に統一する」という方針を検討する場合もありますが、以下のような問題も生じます:
・先発メーカーがジェネリック対策として細かく適応症を追加する傾向にあるため、加算算定に影響が出る可能性
・現在ジェネリックを使っている患者に対して、自己負担増加の説明が必要
・生活保護受給者は原則ジェネリック使用であるため例外対応が難しい
査定リスクと現場対応の実際
「適応違いの後発医薬品を使った場合でも査定されることは稀」との感覚は、今なお一部現場に根強くあります。しかし、以下のような条件が揃うと査定対象となる可能性があります:
・疑義照会を行っていない
・診療科や患者属性から明らかに適応外と判断できる
・一部の保険者が独自に厳格な査定基準を設けている
薬局としては、疑義照会の履歴を記録し、変更理由を明示できるようにするなど、文書による対応を徹底することが重要です。
日本ジェネリック製薬協会のリスト活用
日本ジェネリック製薬協会(JGA)では、「効能効果、用法用量等に違いのある後発医薬品リスト」を公開しています:
このリストには、先発医薬品と効能・効果、用法・用量に違いのある後発医薬品が掲載されています。また、同じ成分でも、後発メーカーごとに適応症が異なるケースもあるため、薬局の採用品選定時に重要な資料となります。
◎ 薬局における対応提案:
・採用品検討時には、必ずJGAリストと添付文書を併用確認
・適応症に差のない後発医薬品を優先的に採用する
・日々の業務で判断が難しい場合は、リストを定期的に確認・更新
先発医薬品と効能効果が異なる後発医薬品
以下に一部の代表的な製剤を例示します(※詳細はJGAの最新リストを参照):
有効成分名 | 先発医薬品名 | 違いのある効能効果等 |
---|---|---|
オキシコドン塩酸塩水和物 | オキシコンチンTR錠 | ①非オピオイド鎮痛薬又は他のオピオイド鎮痛薬で治療困難な中等度から高度の慢性疼痛における鎮痛 |
スニチニブリンゴ酸塩 | スーテントカプセル12.5mg | ①膵神経内分泌腫瘍 |
トルバプタン | サムスカ | ①抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)における低ナトリウム血症の改善 ②腎容積が既に増大しており、かつ、腎容積の増大速度が速い常染色体優性多発性のう胞腎の進行抑制 |
フェンタニル | デュロテップMTパッチ ワンデュロパッチ | ①中等度から高度の慢性疼痛における鎮痛 |
フェンタニルクエン酸塩 | フェントステープ | ①中等度から高度の慢性疼痛における鎮痛の効能と用法 ②中等度から高度の疼痛を伴う各種がんに対する用法から「オピオイド鎮痛剤から切り替えて使用する」を削除 |
ボセンタン水和物 | トラクリア錠 | ①全身性強皮症における手指潰瘍の発症抑制 |
ミコフェノール酸モフェチル | セルセプトカプセル250 | ①全身性強皮症に伴う間質性肺疾患の効能と用法 |
リバーロキサバン | イグザレルト | ①成人 静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制 ②小児 静脈血栓塞栓症の治療及び再発抑制 ③Fontan手術施行後における血栓・塞栓形成の抑制 |
レベチラセタム | イーケプラ | ①部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する生後 1 ヵ月以上 4 歳未満の小児てんかん患者の用法 |
薬局の方針と今後の課題
薬局としては以下のような現実的な選択が求められます:
・すべてのジェネリックを疑義照会するのは非現実的
・かといって適応外変更が常態化すれば個別指導のリスクあり
・査定が実際に起こり得る以上、何らかのガイドライン整備が必要
現時点では、適応症が明確に異なる場合は疑義照会し、曖昧なケースではリストや添付文書、診療科情報を加味して慎重に判断するのが無難とされています。
また、薬歴記載や疑義照会結果の文書保存も、指導・監査時の重要な防御材料となります。
まとめ
・適応症・用法用量が異なる後発医薬品は、査定リスクがゼロではない
・厚労省は「一律査定は望ましくない」としつつも、個別査定の可能性は排除していない
・疑義照会が現実的でないケースも多く、薬局の採用品選定と情報更新が鍵
・JGAの「効能効果・用法用量に違いのある後発医薬品リスト」は、必ず確認すべき一次資料
薬剤師としては、適応の確認・照会の実務に追われつつも、患者負担・調剤体制加算・行政方針のバランスを意識した対応が求められています。
今後もリストは更新されるため、定期的な情報収集と院内・薬局内の体制整備が重要です。