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間質性肺炎の原因は薬?
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間質性肺炎(interstitial pneumonia)は、肺の間質(肺胞と肺胞の間の組織)に炎症が起こる疾患であり、進行すると不可逆的な肺線維症を引き起こす可能性があります。その原因は多岐にわたり、感染症、膠原病、粉塵や石綿の吸入、放射線、カビ(真菌)などがありますが、医薬品による薬剤性間質性肺炎も重要な原因の一つとして知られています。
薬剤によって引き起こされる間質性肺炎に焦点を当て、代表的な原因薬剤、発症のメカニズム、早期発見のポイント、漢方薬との関連、治療や予後などについて勉強します。
薬剤による間質性肺炎:どの薬が危険?
薬剤性の間質性肺炎は、極めて多くの医薬品で報告されており、その頻度や重篤度も薬剤によって異なります。以下に代表的な原因薬剤を挙げます。
代表的な原因薬剤(添付文書「警告」より抜粋)
・小柴胡湯(漢方薬)
黄ごんを含有。間質性肺炎を起こす可能性があり、発熱・咳・呼吸困難などの症状に注意。
・アンカロン(アミオダロン)
抗不整脈薬。致死的な間質性肺炎や肺線維症の報告あり。
・アラバ(レフルノミド)
抗リウマチ薬。既往歴のある患者では致死的な経過をとることも。
・イレッサ(ゲフィチニブ)
分子標的治療薬。特に投与初期に間質性肺炎のリスクが高い。
・タイケルブ(ラパチニブ)
抗HER2薬。死亡例も報告。
・ブレオS軟膏(ブレオマイシン)
抗腫瘍薬。外用でも全身性の副作用に注意。
・プログラフ(タクロリムス)
免疫抑制薬。重篤な副作用の一つとして間質性肺炎を報告。
・リウマトレックス(メトトレキサート)
抗リウマチ薬。使用頻度が高く、注意が必要。
漢方薬による間質性肺炎
漢方薬が原因となる場合、特定の構成生薬に原因があると考えられています。たとえば、小柴胡湯に含まれる黄ごん(オウゴン)が原因ではないかとされますが、全てのオウゴン含有製剤で発症が報告されているわけではありません。
・黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)では報告あり
・温清飲(オンセイイン)では報告なし
・麦門冬湯や防已黄耆湯、補中益気湯など、オウゴンを含まない製剤でも報告あり
このように、原因成分の特定は困難であり、患者の体質や併用薬、基礎疾患なども影響していると考えられます。
発症のメカニズムと早期発見の重要性
薬剤性間質性肺炎の機序は、以下のような複合的な要因が考えられています:
・アレルギー反応や免疫機序の関与
・活性酸素やサイトカインによる肺組織の傷害
・代謝産物による毒性
初期症状に注意すべきポイント
・空咳(痰のない乾いた咳)
・息切れ(特に運動時)
・発熱
・胸部レントゲンやCTでのすりガラス影
・肺音の異常(捻髪音など)
無症状のまま進行する例もあるため、上記の薬剤を使用している患者には定期的な肺機能検査や画像検査が推奨されます。
治療と予後
間質性肺炎の治療の基本は、原因薬剤の中止と、ステロイド療法(副腎皮質ステロイドの投与)です。早期に中止できれば回復が期待できますが、発見が遅れたり、進行して肺線維症となると予後は不良になります。
予後を左右する因子
・発症の早期発見と薬剤中止のタイミング
・病変の広がりと線維化の程度
・併用薬や基礎疾患の有無
患者への説明と薬剤師の役割
薬剤師は、服薬中の患者が以下のような症状を訴えた場合、間質性肺炎の可能性を考慮し、すぐに医師に相談するよう助言することが重要です。
「最近、階段を上ると息切れする」
「咳が止まらないけど風邪ではなさそう」
「微熱が続く」
また、医師に伝える際は、次の情報も併せて提供すると診断に役立ちます:
・使用薬剤とその開始時期、服用期間
・症状の経過、発現時期
・既往歴や肺疾患の有無
まとめ
薬剤性間質性肺炎は、進行すれば命に関わる可能性のある重篤な副作用です。特に高頻度に使用される抗リウマチ薬や抗がん剤では、薬剤師が日常的に観察・確認することで早期発見・対応が可能です。
「ただの咳」「少しの息切れ」でも、服薬状況とあわせて注意深く観察し、間質性肺炎の可能性を念頭に置いて対応することが、安全な薬物療法を支える重要なポイントとなります。