記事
チュアブル錠と口腔内崩壊錠の違いは?
公開. 更新. 投稿者:製剤/ジェネリック.この記事は約3分42秒で読めます.
11,441 ビュー. カテゴリ:目次
チュアブル錠と口腔内崩壊錠の違い─噛み砕いて飲める薬

「チュアブル錠とOD錠ってどう違うの?」「どっちが早く効くの?」
患者さんからも薬剤師の間でもたびたび話題になるこの疑問。
チュアブル錠と口腔内崩壊錠(OD錠)の違い、使用感、薬効、そして添付文書上で”噛み砕いてもよい”とされている例外的な薬剤について勉強します。
チュアブル錠とは?
チュアブル錠(chewable tablet)は、その名のとおり噛み砕いて服用する錠剤です。
特徴:
・服用時に噛んで服用することが前提の設計
・比較的用量の多い医薬品(制酸剤など)に用いられる
・小児や嚥下困難者でも服用しやすい
・水がなくても服用可能(ただし唾液量は必要)
使用例:
・カルシウム製剤や制酸剤
・一部のビタミン剤
・アレルギー薬(ロラタジンチュアブル錠など)
口腔内崩壊錠(OD錠)とは?
OD錠(Orally Disintegrating Tablet)は、口の中で唾液で素早く崩壊し、水なしでも服用できる錠剤です。
特徴:
・嚥下困難な高齢者に配慮された製剤
・噛まずに舌の上で自然に崩壊
・飲水は不要だが、飲んでも可
●OD錠と速効性の誤解:
・「口の中ですぐ溶ける=速く効く」と思われがち
・実際には吸収部位は通常の錠剤と同じく消化管であり、効果発現時間は大きく変わらない
・例:マクサルト錠 vs RPD錠(OD錠) Tmax:錠剤=1.0±0.6時間、RPD錠=1.3±0.7時間
OD錠とチュアブル錠の違いまとめ
項目 | チュアブル錠 | OD錠(口腔内崩壊錠) |
---|---|---|
服用方法 | 噛み砕く | 舌の上で崩壊させて飲む |
対象患者 | 小児、嚥下困難者 | 高齢者、嚥下困難者 |
飲水の必要性 | 不要 | 不要(必要に応じて可) |
崩壊速度 | 比較的遅い | 速い |
使用薬剤例 | 制酸剤、ビタミン剤 | 抗うつ薬、降圧薬など幅広い |
保険点数と服用形態の関係
チュアブル錠とOD錠の違いは、実は調剤報酬にも関係します。
調剤点数の算定上の取り扱い(抜粋):
・普通錠とチュアブル錠は「服用方法が異なる」とみなされ、別剤として算定可能
・普通錠とOD錠は、服用方法が同一とされ、まとめて1剤として算定
「どうせ口の中で溶かすなら一緒じゃないの?」と思うかもしれませんが、そこには保険制度上の分類の壁があるのです。
噛み砕いて服用可能な特別な錠剤─エスカゾール錠
通常、錠剤は噛み砕かずに服用するのが基本です。しかし、一部の薬剤では添付文書上で「噛み砕いて服用してもよい」と明記されているものがあります。
エスカゾール錠(一般名:メベンダゾール)
・駆虫薬(条虫や線虫など)
・添付文書に明確に「噛み砕いて服用してもよい」と記載
・小児への投与や嚥下困難な成人患者への服用支援に役立つ
・血中移行性が低く、局所で効果を発揮するタイプの薬剤であることが背景
注意点:
・「噛み砕いてもよい」かは必ず添付文書で確認
・特に腸溶錠、徐放錠は噛み砕くと副作用リスクが高まるため厳禁
噛み砕いてはいけない薬の例
腸溶錠:胃ではなく腸で溶かす必要があり、胃を刺激するリスク
徐放錠(持続性製剤):時間をかけて薬を放出するため、急激な薬効や副作用リスク
コーティング錠:特定の部位での吸収を狙っている
まとめ:服用方法の違いを理解して安全に使おう
薬剤ごとに設計された服用方法は、患者さんにとっての飲みやすさや効果、安全性に直結します。
・チュアブル錠は噛み砕くことが前提、OD錠は口腔内で崩壊させて飲む
・OD錠は速効性があるわけではない。吸収部位は通常錠と同じ
・調剤報酬上、チュアブル錠と錠剤は別剤として扱えるが、OD錠は扱えない
・添付文書で「噛み砕いてもよい」と記載された薬剤(例:エスカゾール錠)もある
患者さんには、服薬方法とその意味を正しく伝えることが、服薬コンプライアンスの向上と副作用回避に繋がります。
薬の飲み方ひとつとっても、その背景にある製剤設計や制度的な意味を理解して、より適切な服薬支援を行っていきましょう。