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オラドールトローチとオラドールSトローチの違い
公開. 更新. 投稿者: 190 ビュー. カテゴリ:抗菌薬/感染症.この記事は約6分35秒で読めます.
オラドールトローチとオラドールSトローチの違い

オラドールトローチ0.5mgには、よく似た名前の「オラドールSトローチ0.5mg」があります。
「S」が付いていることで成分や効果が違うようにも見えますが、有効成分、含量、効能・効果、用法・用量は同じです。
大きな違いは、味・色・添加剤などの製剤上の違いです。
しかし、エンシュア・リキッドのように同一製品の「味違い」として扱われているわけではありません。オラドールとオラドールSはそれぞれ別の販売名で薬価収載されています。
そのため薬局では、「味が違うだけだから」と自由に入れ替えることはできません。
オラドールとオラドールSの違い
主な違いをまとめます。
| オラドールトローチ0.5mg | オラドールSトローチ0.5mg | |
|---|---|---|
| 有効成分 | ドミフェン臭化物0.5mg | ドミフェン臭化物0.5mg |
| 色 | 白色 | 淡紅色 |
| 芳香 | ハッカ様 | いちご様 |
| 識別表示 | t 401 | t 402 |
| 開封後の保存 | 湿気を避ける | 湿気を避け、遮光する |
| 販売開始 | 1960年 | 1972年 |
| 薬価収載 | 別品目 | 別品目 |
現在の電子添文では、どちらも1錠中にドミフェン臭化物0.5mgを含有しています。
一番わかりやすい違いは「味」
患者さんにとって最もわかりやすい違いは味でしょう。
オラドールトローチはハッカ系、オラドールSトローチはいちご系です。
電子添文上も、オラドールは「ハッカ様の芳香」、オラドールSは「いちご様の芳香」とされています。
トローチは通常の錠剤のようにすぐ飲み込むのではなく、口の中で徐々に溶かして使用します。そのため、味の好みは服用しやすさにも関係します。
ちなみに「S」はStrawberryのSなのでは?とも思ってしまいますが、公開されている資料から名称の由来までは確認できませんでした。
色と添加剤も違う
色にも違いがあります。
オラドールは白色、オラドールSは淡紅色です。
当然ながら添加剤も同じではありません。
オラドールSには着色料として赤色106号が含まれているほか、香料、プロピレングリコールなど、通常のオラドールとは異なる添加剤が使用されています。
したがって、
「同じ薬に違う香料を付けただけ」
というほど単純な違いではなく、それぞれ異なる製剤として作られています。
オラドールSだけ「遮光」が必要
調剤上、覚えておきたい違いが保存方法です。
電子添文の「取扱い上の注意」には次のように記載されています。
オラドールトローチ0.5mg
アルミピロー包装開封後は、湿気を避けて保存すること。
オラドールSトローチ0.5mg
アルミピロー包装開封後は、湿気を避けて遮光して保存すること。
つまり、Sだけ「遮光」が追加されています。
両製剤は有効成分と含量が同じなので、S特有の添加剤や製剤特性が関係していると考えられます。
ただし、公開されている資料では「なぜSだけ遮光が必要なのか」という具体的な理由までは明記されていません。
そのため原因について推測するよりも、薬局では、
「オラドールSはアルミピロー開封後、防湿+遮光」
と覚えておけばよいでしょう。
効能・効果は同じ
味や色は違いますが、効能・効果は同じです。
両剤とも、
- 咽頭炎
- 扁桃炎
- 口内炎
- 抜歯創を含む口腔創傷の感染予防
に使用されます。
用法・用量も同じで、通常、ドミフェン臭化物として1回0.5mgを1日3~6回、口中で徐々に溶解して使用します。
つまり、治療上の基本的な位置づけに違いはありません。
味違いなのに「別の薬」
ここがオラドールで少し不思議なところです。
医療用医薬品では、一つの製品に複数の味が用意されていることがあります。
代表的なのが経腸栄養剤です。
たとえばエンシュア・リキッドには複数のフレーバーがありますが、それぞれが「エンシュア・リキッド○○味」という別の薬価収載品目になっているわけではありません。
ところがオラドールの場合、
オラドールトローチ0.5mg
と
オラドールSトローチ0.5mg
は別の販売名を持つ医薬品です。
薬価基準収載医薬品コードも異なります。
つまり、患者さんから見れば「ハッカ味といちご味」の違いでも、保険調剤上は単なるフレーバーの選択ではありません。
薬局で勝手に変更できる?
ここで実務上の問題が出てきます。
たとえば処方箋に、
「オラドールトローチ0.5mg」
と記載されているものの、薬局にはオラドールSしか在庫がなかったとします。
有効成分も同じ。
含量も同じ。
効能・効果も同じ。
用法・用量も同じ。
それならSを渡してもよさそうに思えます。
しかし、両者は同一製品のフレーバー違いではなく、別の販売名で薬価収載されている医薬品です。
そのため、処方箋にオラドールと銘柄名で記載されているものを、薬局の判断だけでオラドールSへ変更することはできません。
変更するのであれば、処方医に疑義照会して変更の了承を得ることになります。
実際には、
「オラドールの在庫がないため、同成分・同含量のオラドールSへ変更してよいでしょうか」
という内容なので、比較的確認しやすい変更ではあるでしょう。
ただし、ハッカ味といちご味では患者さんの好みもあります。トローチという剤形を考えると、患者さんにも味が変わることを伝えておいた方がよいでしょう。
一般名処方で選べるわけでもない
「それなら一般名処方ならオラドールとSを薬局で選べるのでは?」
とも思います。
しかし、オラドールは一般名処方マスタの対象となっていません。
したがって通常は、
「ドミフェン臭化物トローチ0.5mg」
という一般名処方を受けて、患者さんに「ハッカ味といちご味、どちらにしますか?」と選んでもらうような薬ではありません。
基本的には、オラドールまたはオラドールSという銘柄名で処方される薬です。
この点でも、単なる味違いの製品とは少し事情が異なります。
なぜ別々の製品になっている?
現在の感覚では、
「オラドールトローチ0.5mg ハッカ味/いちご味」
のように、一つの製品のフレーバー違いとして扱った方がわかりやすそうです。
ただ、オラドールは非常に古い薬です。
通常のオラドールは1960年、オラドールSは1972年に販売が開始されています。
つまり、オラドールSが登場したのは50年以上前です。
現在の製品名や承認制度の感覚だけで考えるのではなく、歴史的に別々の製剤として発売され、それぞれが現在まで残っている薬と考えると理解しやすいでしょう。
まとめ
オラドールトローチとオラドールSトローチは、名前だけを見ると「S」が付いているかどうかの違いですが、製剤としてはいくつか違いがあります。
最もわかりやすいのは、
オラドール:白色・ハッカ系
オラドールS:淡紅色・いちご系
という違いです。
一方、有効成分はいずれもドミフェン臭化物0.5mgで、効能・効果、用法・用量も同じです。
ただし添加剤は異なり、保存方法にも違いがあります。特にオラドールSはアルミピロー開封後に遮光が必要という点には注意が必要です。
そして薬局実務上、もっとも重要なのは、
「味違いのように見えるが、別の販売名で薬価収載されている」
という点です。
エンシュア・リキッドのフレーバーを選ぶような感覚でオラドールとオラドールSを自由に入れ替えることはできません。
在庫の都合などで変更したい場合には、処方医への確認が必要になります。
味以外はよく似た薬なのに、薬局では意外と融通が利かない。
オラドールとオラドールSは、そんな少し珍しい組み合わせです。



