2026年9月26日更新.2,807記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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何歳になったら薬を減らす?―65歳・70歳・75歳・80歳で用量が変わる薬

高齢者の減量

「高齢者では減量すること」

薬の添付文書では、このような記載をよく見かけます。

しかし、「高齢者」とは何歳なのでしょうか?

65歳でしょうか。75歳でしょうか。それとも、その患者の体格や身体機能をみて薬剤師が判断するのでしょうか。

「高齢者」という表現だけでは、実際の処方監査では判断に迷うことがあります。

一方、

  • 65歳以上
  • 70歳以上
  • 75歳以上
  • 80歳以上

など、具体的な年齢が用量設定や減量基準に組み込まれている薬もあります。

このような薬では、「今日から75歳になった」というだけで、昨日まで問題なかった処方が確認対象になる可能性があります。

今回は、年齢が処方監査のトリガーになる薬について整理します。

「高齢者」は何歳から?

一般的には65歳以上を高齢者とすることが多く、医薬品の電子添文の記載要領でも、高齢者は原則として65歳以上を目安としています。

ただし、これは「すべての薬について65歳になったら自動的に減量する」という意味ではありません。

例えば、
「高齢者では少量から投与を開始すること」
と書かれていた場合、患者の年齢だけでなく、

  • 腎機能
  • 肝機能
  • 体重
  • 併用薬
  • 転倒リスク
  • 薬物動態
  • 全身状態

などを考慮して判断することになります。

そのため、65歳の患者と85歳の患者を同じ「高齢者」として一律に扱うことにも無理があります。

薬剤師としても、「高齢者なので減量してください」と疑義照会するのは、少し曖昧です。

ところが、
「75歳以上では1日300mgを超えないことが望ましい」
などと具体的に書かれていれば話は変わります。

患者の年齢という客観的な数字から処方を確認できるからです。

年齢が用量に関係する薬

代表的なものを整理すると、次のようになります。

年齢薬剤年齢と用量の関係
65歳以上シルデナフィル25mgから開始
70歳以上ダビガトラン110mg×2回/日への減量を考慮する条件
75歳以上トラマドール1日300mgを超えないことが望ましい
80歳以上アピキサバン体重・血清Crと合わせて減量判定
80歳以上を目安エドキサバン高出血リスク患者で15mg/日を考慮する条件

ただし、これらをすべて「その年齢になったら自動的に減量する薬」と考えてはいけません。

年齢の使われ方がそれぞれ違うからです。

65歳以上―シルデナフィル

シルデナフィルは、具体的な年齢が開始用量に関係する分かりやすい薬です。

通常、成人には1日1回25~50mgを投与しますが、高齢者については、
65歳以上では25mgを開始用量とする
という設定があります。

つまり、単に「高齢者には慎重に」という注意喚起ではありません。

65歳という数字が明示されています。

例えば、65歳以上の患者に初回から50mgが処方されていれば、
「65歳以上なので25mg開始ではないか?」
という具体的な処方監査ができます。

「高齢者だから」という主観的な判断ではなく、年齢そのものを根拠に確認できるわけです。

70歳以上―プラザキサ

プラザキサ(ダビガトラン)は少し違います。

非弁膜症性心房細動における通常用量は、
1回150mgを1日2回
です。

一方、出血リスクが高い患者では、
1回110mgを1日2回
への減量を考慮します。

この減量を考慮する条件の一つとして、
70歳以上
があります。

重要なのは、
70歳になったら必ず110mgにするわけではない
ということです。

70歳という年齢は「強制的な減量ライン」ではなく、減量を検討するための条件です。

したがって、
「69歳で300mg/日だった患者が70歳になったから、処方ミス」
とはいえません。

しかし、70歳になったことをきっかけに、
「この患者は110mg×2回への減量を検討しなくてよいか?」
と処方を再確認することはできます。

75歳以上―トラマドール

年齢による上限量の違いとして非常に分かりやすいのがトラマドールです。

通常、トラマドールは1日400mgまで使用できます。

しかし、
75歳以上の高齢者では、1日300mgを超えないことが望ましい
とされています。

例えば、
74歳 トラマドール400mg/日
で使用していた患者が、そのまま継続して75歳になった場合です。

薬剤師からすると、
「75歳以上なのに400mg/日になっている」
という明確なチェックポイントが生まれます。

もちろん、「300mgを超えてはならない」という絶対的な禁忌ではなく、「超えないことが望ましい」という表現である点には注意が必要です。

それでも「高齢者では減量を考慮」とだけ書かれている薬と比べれば、処方監査の根拠はかなり明確です。

80歳以上―エリキュース

エリキュース(アピキサバン)はさらに面白い例です。

非弁膜症性心房細動では通常、
1回5mgを1日2回
ですが、次の3項目のうち2項目以上に該当すると、
1回2.5mgを1日2回
に減量します。

  • 80歳以上
  • 体重60kg以下
  • 血清クレアチニン1.5mg/dL以上

ここでは年齢だけでは減量になりません。

しかし、「80歳以上」が明確な判定項目になっています。

例えば、
79歳・体重58kg・血清Cr 1.3mg/dL
なら該当するのは体重だけです。

ところが同じ患者が80歳になれば、
80歳以上+60kg以下
の2項目を満たします。

つまり、誕生日を迎えたことで減量基準に該当する可能性があるわけです。

これは薬局で継続処方を監査するときにも重要なポイントです。

「前回と同じ処方だから問題ない」とは限りません。

患者自身が変わっていなくても、年齢という条件が変化しているからです。

80歳以上を目安―リクシアナ15mg

リクシアナ(エドキサバン)にも高齢者に特徴的な用量があります。

非弁膜症性心房細動患者で、
80歳以上を目安とする高齢者
かつ、出血リスクなどの条件から通常用量の抗凝固療法が困難な場合には、
15mgを1日1回
投与することを考慮できます。

ここで注意したいのは、
「80歳以上ならリクシアナ15mg」
という単純なルールではないことです。

80歳以上という年齢に加えて、体重、腎機能、出血歴、併用薬などを評価したうえで使用される特殊な用量です。

したがって、これも「年齢による強制減量」というより、
年齢が治療選択の重要な条件になっている薬
と考えたほうがよいでしょう。

「高齢者」と「75歳以上」では処方監査のしやすさが違う

薬剤師として重要なのはここだと思います。

例えば電子添文に、
「高齢者では少量から投与を開始すること」
と書かれていたとします。

80歳の患者に通常量が処方されていたとしても、それだけで処方が間違っているとは判断できません。

患者の状態を考慮したうえで医師が通常量を選択している可能性もあります。

疑義照会するとしても、
「高齢者ですが、この用量でよろしいでしょうか?」
という少し曖昧な問い合わせになります。

一方、
「75歳以上では1日300mgを超えないことが望ましい」
という薬なら、
「患者さんが75歳で、現在400mg/日となっています。電子添文では75歳以上は300mg/日を超えないことが望ましいとされていますが、このままでよろしいでしょうか」
と具体的に確認できます。

年齢という数字があることで、処方監査の根拠が明確になるわけです。

誕生日が処方監査のトリガーになる

薬局では、同じ患者に同じ薬が何年も処方されることがあります。

そのため、
「前回と同じだから問題ない」
と思ってしまいがちです。

しかし、年齢基準がある薬では事情が違います。

例えば、
74歳 → 75歳
79歳 → 80歳
という変化だけで、用量の確認が必要になる可能性があります。

腎機能や体重なら検査値を確認しなければ変化に気づけません。

しかし年齢は薬局の患者情報から確実に分かります。

その意味では、
「特定の年齢に到達した患者の薬を再チェックする」
という処方監査は比較的実践しやすい方法です。

年齢だけで減量する薬と、年齢が条件の一つになる薬を区別する

今回の薬を大きく分けると、次のようになります。

年齢によって開始量・上限量が変わる

シルデナフィル
→ 65歳以上では25mg開始

トラマドール
→ 75歳以上では300mg/日を超えないことが望ましい

年齢が減量判断の条件になる

ダビガトラン
→ 70歳以上では減量を考慮

アピキサバン
→ 80歳以上が減量判定3項目の一つ

エドキサバン
→ 80歳以上を目安とする高齢者で、その他の条件も踏まえて15mgを検討

この違いは重要です。

「80歳以上」という文字だけを見つけて機械的に減量するのではなく、
その年齢が「必須の減量基準」なのか、「減量を考慮する条件」なのか、「複数ある判定項目の一つ」なのか
まで確認する必要があります。

「高齢者」より「○歳以上」のほうが処方監査しやすい

高齢者では薬物代謝・排泄能が低下することが多く、多くの薬で慎重な投与が求められます。

しかし、「高齢者」という言葉だけでは境界が曖昧です。

一方、
65歳、70歳、75歳、80歳
という具体的な数字が設定されている薬では、その年齢に到達したこと自体を処方監査のきっかけにできます。

特に長期継続処方では、
「前回と同じ薬・同じ量だからOK」ではなく、「患者が減量基準となる年齢に到達していないか」
という視点を持っておきたいところです。

薬は変わっていなくても、患者の年齢は毎年変わります。

そして一部の薬では、誕生日を境に昨日までとは処方監査上の意味が変わるのです。

まとめ

年齢が明記されている薬は、「高齢者では慎重に」という薬より処方監査のポイントが明確です。

特に覚えておきたいのは、
65歳:シルデナフィル
70歳:ダビガトラン
75歳:トラマドール
80歳:アピキサバン、エドキサバン
です。

ただし、年齢の意味は薬によって異なります。

「その年齢になれば減量」なのか、「減量を考慮」なのか、「他の条件と組み合わせて判定」なのかを電子添文で確認する必要があります。

処方監査では薬の変更だけでなく、
「患者が何歳になったか」
にも目を向ける必要がありそうです。

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