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色覚異常の副作用を持つ薬とは?―ゴッホの「黄色い世界」から考える、目と薬の深い関係
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目次
色覚異常の副作用を持つ薬とは?―ゴッホの「黄色い世界」から考える、目と薬の深い関係

「最近、色が薄く見える気がする」
「信号の色が分かりにくい」
「なんとなく世界が黄色っぽい」
こうした“見え方の変化”は、多くの人が「疲れているだけ」「年のせいだろう」と流してしまいがちです。しかし実は、薬の副作用として色覚異常が起きている可能性もあります。
このテーマを語るとき、よく登場するのが、あの有名な画家
Vincent van Gogh(フィンセント・ファン・ゴッホ)です。
ゴッホの絵には、ひまわり、黄色い家、夜のカフェなど、「異常なほど黄色が強い作品」が数多くあります。
そして昔から、
「あの黄色は、薬の副作用で世界が黄色く見えていたからではないか?」
という説が語られてきました。
今回は、そんなロマンあるエピソードも交えながら、色覚異常と薬の関係について、わかりやすく、少し物語的に解説していきます。
1.ゴッホの「黄色い世界」と薬の副作用説
ゴッホは晩年、精神的にも身体的にも不安定な状態にあり、医師の治療を受けていました。
当時使われていた薬のひとつに、「ジギタリス」という植物由来の強心薬があります。現在のジゴキシンの原型です。
このジギタリスには、昔から有名な副作用があります。
「黄視(おうし)」――すべてが黄色っぽく見える現象
もし、ゴッホがこの薬を飲んでいて、世界が黄色く見えていたとしたら……。
彼の作品の“異様なほどの黄色”も、単なる表現ではなく、「実際に見えていた世界」だったのかもしれません。
もちろん、これは確定した事実ではありません。
芸術的意図、精神状態、色彩理論など、さまざまな要因が重なった結果だと考える研究者も多くいます。
それでも、
「薬が、芸術の色を変えたかもしれない」
という話は、医学と芸術が交差する、とても魅力的なエピソードです。
そしてこれは、決して昔話だけではありません。
現代の医療でも、薬によって“見える世界”が変わることは、実際に起きているのです。
2.薬による色覚異常とは何か?
薬による色覚異常とは、生まれつきの色覚特性とは違い、
→服薬をきっかけに後から起こる見え方の変化
です。
よくある訴えには、こんなものがあります。
・色がくすんで見える
・全体が黄色っぽい
・青みがかって見える
・赤と緑が区別しにくい
・光がにじんでまぶしい
・中心だけ見えにくい
多くの場合、患者さん自身も
「はっきり説明できない違和感」
として感じています。
だからこそ、見逃されやすいのです。
3.なぜ薬で色の見え方が変わるのか?
色覚異常が起こる理由は、大きく3つに分けられます。
① 網膜の“色センサー”が影響を受ける
目の奥には、色を感じ取る「錐体細胞」があります。
一部の薬は、この細胞の働きを一時的に乱します。
すると、
→色が薄い、青い、変に見える
といった症状が出ます。
② 視神経がダメージを受ける
網膜から脳へ情報を送るケーブルが「視神経」です。
これが傷つくと、色覚異常や視力低下が起こります。
このタイプは重症化しやすく、特に注意が必要です。
③ 網膜に障害が蓄積する
長期間の服用で、少しずつ網膜が傷つくタイプです。
初期はほとんど自覚症状がありません。
気づいたときには進行していることもあります。
4.色覚異常が知られている代表的な薬
(1)ED治療薬:青く見える世界
シルデナフィルなどのED治療薬では、
・青っぽく見える
・色調が変わる
・まぶしい
といった症状が出ることがあります。
これは、視覚に関わる酵素にも影響するためです。
多くは一時的ですが、初めて体験すると驚く人も少なくありません。
(2)抗結核薬エタンブトール:最重要注意薬
色覚異常で最も警戒すべき薬が、エタンブトールです。
この薬では、
・赤緑色覚異常
・中心暗点
・視力低下
などが起こることがあります。
しかも、放置すると回復しないケースもあります。
まさに、
「気づいた人だけが守られる副作用」
です。
(3)ジゴキシン:現代版ゴッホの黄視
ジゴキシンでは、
・黄色っぽく見える
・緑っぽく見える
・ものが歪む
といった症状が出ることがあります。
ここで重要なのは、これが
→中毒のサインになることがある
という点です。
ゴッホの話はロマンですが、現代医療では命に関わることもあります。
(4)膠原病治療薬:じわじわ進む網膜障害
ヒドロキシクロロキンなどは、長期使用で網膜障害を起こします。
怖いのは、
「自覚症状がほとんどないまま進む」
ことです。
だから定期検査が不可欠なのです。
(5)抗ヘルペス薬アメナリーフ
アメナリーフでも、
・色覚異常
・視力低下
・まぶしさ
などが報告されています。
頻度は高くありませんが、「まれだから安心」とは言えません。
5.どこまでが様子見で、どこからが危険?
すぐ相談すべき症状
・片目だけおかしい
・中心が見えない
・急に視力低下
・視野が欠ける
・強いまぶしさ+痛み
これらは“赤信号”です。
比較的よくあるが注意が必要な症状
・軽い青み
・一時的な色の変化
・疲労時の違和感
ただし、続く場合は相談しましょう。
6.患者さんへの伝え方:怖がらせず、軽くしすぎず
色覚異常の説明は、とても難しいテーマです。
不安を煽りすぎてもいけませんし、軽く扱ってもいけません。
理想的なのは、こんな伝え方です。
「まれに見え方が変わることがあります。変だと思ったら、すぐ教えてくださいね。」
この一言が、重症化を防ぐこともあります。
7.色覚異常は「世界が変わる」体験である
考えてみてください。
もし、ある日突然、
・世界が黄色くなる
・青くなる
・色が消える
としたら、どう感じるでしょうか。
ゴッホが見ていたかもしれない世界。
ジゴキシンを飲む高齢患者さんが見る黄色い風景。
エタンブトールで赤信号が見えにくくなる恐怖。
色覚異常は、単なる「副作用」ではなく、
→人の人生の風景を変えてしまう現象
でもあります。
おわりに:ゴッホの黄色から、私たちが学べること
ゴッホの黄色は、今も世界中の人を魅了しています。
もしそれが薬の影響だったとしても、それは彼の人生の一部でした。
そして私たちは今、はるかに安全な医療の中にいます。
それでも、
✔ 薬は体だけでなく「見える世界」も変える
✔ 小さな違和感が、大きなサインになる
✔ 気づいて相談すれば、多くは防げる
という事実は変わりません。
もし、あなたや家族が、
「最近、見え方が変だな」
と感じたときは、どうか軽く流さないでください。
それは、体が出している静かなメッセージかもしれません。




