記事
かゆみを測る評価指標とは?かゆみの数値化
公開. 更新. 投稿者: 33 ビュー. カテゴリ:未分類.この記事は約4分23秒で読めます.
目次
かゆみを測る評価指標とは?― NRS・VASを中心に、薬剤師が知っておきたい「そう痒」の数値化 ―

「この薬で、かゆみはどうですか?」
薬剤師として、そう尋ねる場面は少なくありません。
しかし患者さんから返ってくる答えは、
「前よりマシです」
「まだ結構かゆいです」
「なんとなく良くなった気がします」
といった主観的で曖昧な表現が多いのが実情です。
かゆみ(そう痒)は痛みと同様、本人にしか分からない感覚です。そのため、治療効果を客観的に評価するには、数値化された評価指標が欠かせません。
・かゆみ評価がなぜ重要なのか
・代表的な評価指標である NRS と VAS
・それぞれの特徴・使い分け
・薬剤師が服薬指導でどう活かせるか
を中心に、勉強していきます。
なぜ「かゆみ」を評価する必要があるのか
かゆみはQOLを大きく低下させる症状
かゆみは一見軽視されがちですが、慢性的なそう痒は、
・睡眠障害
・集中力低下
・不安・抑うつ
・皮膚損傷(掻破痕・感染)
など、生活の質(QOL)を著しく低下させます。
特に以下の患者では、かゆみが治療満足度を大きく左右します。
・アトピー性皮膚炎
・透析患者の尿毒症性そう痒
・胆汁うっ滞性そう痒
・薬剤性そう痒(オピオイド、抗がん薬など)
「良くなった/良くない」だけでは不十分
治療評価を
・感覚的な印象
・医療者側の推測
だけで判断すると、
・効果が不十分なのに治療継続
・実は効いているのに不要な変更
といった判断ミスにつながる可能性があります。
そこで重要になるのが、かゆみの数値化です。
かゆみ評価の基本は「主観的評価」
かゆみには、
・血液検査
・画像検査
のような客観的な指標が存在しません。
そのため評価は基本的に、
患者自身の訴えを数値で表現する主観的評価
に依存します。
この主観的評価を、
・再現性を持たせ
・経時的に比較可能
にするために開発されたのが、NRS や VAS です。
NRS(Numerical Rating Scale)とは
NRSの概要
NRS(数値評価スケール)は、最もシンプルで使いやすい評価指標です。
評価方法
患者さんに次のように質問します。
「今のかゆみを、
0を“まったくかゆくない”、
10を“これ以上ないほど強いかゆみ”
としたとき、いくつくらいですか?」
患者は 0~10の数字で回答します。
NRSの特徴
長所
・非常に簡便
・記録しやすい
・高齢者にも使いやすい
・外来・薬局で即使用可能
・経時的変化を追いやすい
短所
・数字の選び方に個人差がある
・微細な変化の検出はやや苦手
NRSが向いている場面
・外来診療
・調剤薬局での服薬指導
・抗ヒスタミン薬・外用薬の効果確認
・生物学的製剤の治療経過観察
薬剤師が日常業務で最も使いやすいスケールといえます。
VAS(Visual Analogue Scale)とは
VASの概要
VAS(視覚的アナログスケール)は、より詳細な評価が可能な指標です。
評価方法
・10cmの直線を用意
・左端:「かゆみなし」
・右端:「想像できる最大のかゆみ」
・患者に現在のかゆみの位置に印をつけてもらう
・左端からの距離(mm)を測定して数値化
VASの特徴
長所
・連続量として扱える
・微妙な変化を捉えやすい
・統計解析に適している
短所
・実施にやや手間がかかる
・高齢者・小児では理解が難しいことがある
・日常診療では使いにくい場合も
VASが向いている場面
・臨床研究
・専門外来
・新薬の有効性評価
・学会・論文データ取得
NRSとVASの比較
| 項目 | NRS | VAS |
|---|---|---|
| 評価方法 | 数字(0–10) | 直線(mm) |
| 簡便さ | ◎ | △ |
| 高齢者対応 | ◎ | △ |
| 微細変化検出 | ○ | ◎ |
| 研究適性 | ○ | ◎ |
| 薬局実務 | ◎ | △ |
薬剤師業務ではNRSが基本、
研究・専門領域ではVAS、
という使い分けが現実的です。
かゆみ評価でよくある注意点
① 痛みと混同しない
患者によっては、
・ヒリヒリ
・チクチク
といった感覚を「かゆみ」と表現することがあります。
必要に応じて、
「掻きたくなる感じですか?」
「触らなくてもムズムズしますか?」
などの補助質問を行うと、評価の精度が上がります。
② 時間帯を意識する
かゆみは、
・夜間に悪化
・入浴後に増悪
することが多く、評価のタイミングが重要です。
可能であれば、
「今のかゆみ」
「昨日一番ひどかったかゆみ」
を分けて聞くと臨床的価値が高まります。
かゆみに特化した評価指標(補足)
Itch NRS(Pruritus NRS)
・NRSをかゆみに特化
・「最悪のかゆみ」を評価する場合も多い
WI-NRS(Worst Itch NRS)
・過去24時間の最悪のかゆみを0~10で評価
・生物学的製剤の臨床試験で多用
5-D Itch Scale
・Duration(期間)
・Degree(強さ)
・Direction(変化)
・Disability(生活障害)
・Distribution(範囲)
多面的評価が可能ですが、実務ではやや煩雑です。
薬剤師はかゆみ評価をどう活かすか
服薬指導での活用例
・初回:「今のかゆみは0~10でいくつですか?」
・次回:「前回は7でしたが、今回はどうですか?」
この一言で、
・効果の有無
・改善度
・追加対応の必要性
が明確になります。
医師への情報提供
「患者さん、かゆみNRSが
8 → 4 に下がっています」
と数値で伝えることで、
情報の説得力が大きく向上します。
おわりに
かゆみは、見た目では分からず、数値化しなければ評価が難しい症状です。しかし、NRSやVASといった評価指標を用いることで、治療効果を明確にし、患者とのコミュニケーションを深めることができます。
特に薬剤師は、
・継続的に患者と接する
・経時変化を把握できる
という立場にあり、かゆみ評価のキーパーソンになり得ます。
「かゆみはどうですか?」から一歩進んで、
「今のかゆみ、0~10でいうと?」
この問いかけを、ぜひ日常業務に取り入れてみてください。




