2025年5月16日更新.2,475記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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半錠は本当に半分に割れているのか?

調剤現場での「半錠」の精度とリスク

医師からの処方箋に「1回0.5錠」「1/2錠服用」などと書かれていると、薬剤師はその錠剤を調剤時に半分に割って患者に交付することになります。

では、その「半錠」は本当に“正確に半分”に割れているのでしょうか?
そしてそれは、どれほど重要なのでしょうか?

錠剤カッターでも誤差は避けられない

調剤室では、錠剤を割る際に専用の錠剤カッターを使用することが一般的です。
しかし、どんなに丁寧に割っても、常に50:50に分割できるとは限りません。

たとえば以下の図をご覧ください。これは、実際に調剤した半錠が45:55程度に割れてしまった例を想定したイメージです。

左半分のみ↓

右半分のみ↓

見た目では「ほぼ半分」でも、薬物の含有量が正確に半分である保証はありません。
特に、有効成分が錠剤全体に均一に分散していないタイプの製剤では、含量偏差が大きな問題となり得ます。

「割線がある=半分にしてOK」とは限らない

割線がついているからといって、必ずしもそれが「正確に半分に割ることを想定した設計」だとは限りません。

添付文書には、以下のようなパターンがあります。
・「分割しても使用に差し支えない」:半錠投与を想定している
・「分割は推奨されない」:コーティングや製剤特性によって効果が変わる可能性あり
・記載なし:慎重な対応が必要

調剤で分割する場合は、添付文書やインタビューフォームを確認することが必須です。

精度が重要な薬は「半錠」に注意

特に以下のような薬剤では、わずかな量の違いが臨床効果に影響する可能性が高くなります。
・抗てんかん薬、抗不整脈薬など治療域の狭い薬
・ホルモン製剤や精神科薬などの微量調整が必要な薬
・小児・高齢者向けの用量調整がシビアなケース

こうした薬剤においては、半量製剤が存在するかを確認し、可能な限りそちらを採用する方が安全です。

半錠で渡す薬、どう患者に説明するか?
調剤で割った錠剤は、見た目にもやや不均等に見えることがあります。
そのため、以下のような声かけが望まれます。

「この薬は元は1錠のものを半分に割っています。量としては問題ありませんので、このままお飲みください。」

また、患者からの不安の声(「これでいいの?」「量が違うように見える」)にも対応できるよう、製剤の情報や処方の意図を把握しておくことが重要です。

「半錠」は単に「錠剤を2つに割る」作業ではありません。
その製剤の特性・割線の意味・治療域の広狭・用量調整の重要性などを考慮した、薬剤師の判断と責任が求められる調剤行為です。

「ちゃんと半分に割れているか?」という問いには、
「外観だけでなく、薬効やリスクを見極めたうえで適切な対応ができているか?」という視点で向き合いたいものです。

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