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遅発性ジスキネジア治療薬ジスバル
公開. 更新. 投稿者:統合失調症.この記事は約4分33秒で読めます.
5,296 ビュー. カテゴリ:遅発性ジスキネジア治療薬ジスバル
ジスバルで口のモゴモゴが治る?
遅発性ジスキネジアという薬の副作用がある。抗精神病薬やパーキンソン病治療薬などで起こることがある。
症状としては、「繰り返し唇をすぼめる」「舌を左右に動かす」「口をもぐもぐさせる」「口を突き出す」「歯を食いしばる」「目を閉じるとなかなか開かずしわを寄せている」「勝手に手が動いてしまう」「足が動いてしまって歩きにくい」「手に力が入って抜けない」「足が突っ張って歩きにくい」といったものです。
薬の副作用であるため、原因薬剤の中止、他の薬への変更などが対応として考えられるが、どうしても止められない場合には、対症療法として薬物治療も検討される。
2022年5月25日、遅発性ジスキネジア治療薬のジスバルカプセル(バルベナジントシル酸塩)が薬価収載された。
ジスバルはVMAT2阻害剤であり、神経終末に存在する小胞モノアミントランスポーター(Vesicular Monoamine Transporter :VMAT)2を阻害することにより、ドパミンのシナプス小胞への再取り込みを減らし、ドパミン放出量を減少させます。
抗精神病薬による錐体外路症状に、抗コリン薬のアーテンやアキネトンが使われるが、その効能効果は、
向精神薬投与によるパーキンソニズム・ジスキネジア(遅発性を除く)・アカシジア
となっており、(遅発性を除く)と書かれている。
ジスキネジアと遅発性ジスキネジアの違い
抗パーキンソン病薬を使用すると黒質線条体系においてドパミン量が過剰となり、ジスキネジアが現れます。
一方、遅発性ジスキネジアとは、抗精神病薬を使用したときに現れるジスキネジアです。
抗精神病薬を長期使用すると、黒質線条体系においてドパミン受容体の感受性が過剰となり、ドパミンの働きが過剰になります。抗精神病薬によってドパミンを遮断するはずが、長期間の使用により逆にドパミンの働きが過剰になってしまうのです。このようにして現れるジスキネジアを遅発性ジスキネジアと呼びます。長期使用により症状が現れることから「遅発性」と呼ばれています。
したがって、ドパミンを補充しても、ドパミンを遮断してもジスキネジアが現れます。
このドパミン過剰状態の遅発性ジスキネジアに対して、抗コリン薬を使えば悪化してしまう。
ドパミンの過剰な働きを抑えるジスバルが効果的なわけです。
錐体外路症状
錐体外路症状とは、黒質線条体のドーパミン受容体の78%以上を抗精神病薬が遮断したときに起こる副作用です。EPS (Extrapyramidal symptoms)とも呼ばれます。
延髄に錐体という部分があります。
そこには筋肉に動かそうという人の意思を伝える神経の線維が通っていて、この神経の通り道を錐体路といいます。
人は運動という行為のなかで、動かした筋肉を「思った位置まで動かしていく」という随意の部分しか自覚していませんが、実は筋肉を「ちょうどよい位置に止める」という不随意の隠された行為があって、運動は成立しています。
この後者を司る神経線維群が通る道を錐体外路といいます。
自動車で例えるなら、錐体路系がアクセル、錐体外路系がブレーキで、これらをうまく制御して運動を円滑にしているのです。
錐体外路症状が発現すると、歩行や嚥下など広い範囲にわたる不随意運動が障害されます。
黒質線条体は、黒質から大脳基底核までをつなぐ経路です。
正常な黒質線条体経路では、コリン作動性神経による「興奮」と、ドーパミン神経に よる「抑制」との均衡がとれており、運動が調節されています。
しかし抗精神病薬によってドーパミン受容体が過剰に遮断されてしまうとその均衡がくずれ、 アセチルコリンの遊離を抑制できなくなり、興奮の信号が過剰に伝達されてしまいます。
そのために大脳基底核が担っていた運動の調整機能が作動しなくなり、錐体外路症状が起きます。
錐体外路症状には次のような症状群があります。
アキネジア、パーキンソン病様症状
筋緊張が冗進して筋肉がなめらかに動かず運動が減少するもの(筋強剛、振戦、小刻み歩行、すりあし歩行など)。
ジストニア
筋緊張が異常となり、強直、 捻転が生じ奇妙な姿勢となる。
抗精神病薬の投薬初期や増量によって早期にみられる。
アカシジア
手や足に不快感が生じ、特に足の不快がひどいために歩き回り、じっと座っていられない(静座できない)状態。
遅発性ジスキネジア
抗精神病薬を長期(数か月から数年)服用したあとに急に発現する症状。
口部にみられるオーラルジスキネジアは何も食べていないのに絶えず口をモグモグと咀嚼運動のように動かしたり、舌を出したり戻したりを繰り返したりするため、非常に目立ち、患者さんの苦痛は大きい。
睡眠中には症状はみられず、しゃべっているときも比較的症状は緩和されるケースが多いが、なかには会話が困難になるケースもある。また、ストレスや緊張が高いと症状は悪化する。
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