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ASTやALTが低いのはビタミンB6欠乏症?
公開. 更新. 投稿者:栄養/口腔ケア.この記事は約3分14秒で読めます.
6,331 ビュー. カテゴリ:ALT・ASTとビタミンB6
肝機能の指標である検査値、ASTやALTが高いと肝疾患が疑われる。
しかし、たまにそれらの数値が1桁の患者をみかける。
高いのは問題だが、低いのは気にしなくてもいいのでしょうか?
ASTやALTは、アミノトランスフェラーゼというアミノ酸の利用に関わる酵素です。
ASTはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼのことで、α-ケトグルタル酸のα-ケト基とL-アスパラギン酸のアミノ基の転移反応を触媒し、オキサロ酢酸とL-グルタミン酸を生成します。
ALTはアラニンアミノトランスフェラーゼのことで、α-ケトグルタル酸のα-ケト基とL-アラニンのアミノ基の転移反応を触媒し、ピルビン酸とL-グルタミン酸を生成します。
これらの数値が低くなる原因として、まずタンパク質不足が挙げられます。
酵素はたんぱく質でできているので、たんぱく質不足で両方とも低くなります。
そして、これらの酵素が働くための補酵素としてビタミンB6があり、ASTやALTはビタミンB6と結合しないと血液中で活性を維持できず、減少してきます。
特にALTはビタミンB6と結合したホロ酵素としての形でしか血液中に存在できないといわれており、ALTのほうがよりB6不足の影響を受けやすいのでAST>ALTとなります。
利尿薬とビタミン欠乏
利尿薬で尿量を増加させると、チアミンなど水溶性のビタミンの排泄が促進されて欠乏を引き起こすことが知られており、実際、1日80mgのフロセミドを服用した患者の96%(25人中24人)にチアミン欠乏が認められたとの報告があります。
チアミン欠乏がある場合、他の水溶性ビタミンも不足していることが多い為、治療にはチアミン誘導体の単味薬(アリナミンF)ではなく、チアミン誘導体を含む複合ビタミン剤がよく用いられる。
生活指導としては、玄米や豚肉などチアミン含有量が多い食品の摂取や節酒を勧めることが大切である。
脚気からくる心不全
脚気(ビタミンB1欠乏)からくる心不全に、利尿剤を使うと水溶性ビタミンであるビタミンB1が流れて失われ、悪化するという話。
まず、ビタミンB1欠乏症は大きく分けて、末梢神経障害と中枢神経障害があります。末梢神経障害が脚気、中枢神経障害が Wernicke 脳症です。
ビタミンB1(チアミン)には、糖質をエネルギーに変換する反応の補酵素としての作用と、神経機能を正常に保つ作用があります。
このチアミンの欠乏により脚気が起こります。
脚気の語源は、心不全によって足のむくみ、神経障害によって足のしびれが起きることから脚気と呼ばれます。
脚気は、多発性末梢神経障害を主体とする乾性脚気と、心不全症状が強い湿性脚気に分類できます。
脚気の心不全症状は、心筋のエネルギー代謝障害や末梢神経障害に伴う末梢血管拡張により生じるとされます。
チアミン欠乏の主要な原因には、①摂取量不足、②需要量増大(糖質過剰摂取、重労働など)など、③吸収障害(アルコールなど)、④活性化障害(肝障害など)があります。
また、薬剤性のチアミン欠乏もあり、利尿薬のフロセミドなどが原因薬となる。
PPIでビタミン欠乏
胃酸はビタミン、ミネラルの吸収の際にも必要とされることが多く、PPIによるビタミン、ミネラルの吸収への影響についても注意することが重要となります。
よく知られているのはビタミンB12です。
ビタミンB12は、食品では動物性食品に含まれ、タンパク質と結合しています。
その吸収は、酸性の胃内でタンパク質から切りだされ、遊離型のビタミンB12となり、胃壁細胞で産生される内因子と結合して回腸から吸収されるか、遊離型のビタミンB12が胃液R因子と結合し、膵臓のタンパク分解酵素により切り出され、再度遊離型となり内因子と結合し吸収される経路と、医薬品やサプリメントなどで過量に服用した場合の濃度勾配依存性の吸収が知られています。
食物中からの切り出しや、内因子との結合には、胃酸の存在が必要となり、PPI服用時のビタミンB12の吸収抑制が報告されています。
ワラビでビタミン欠乏
ワラビやゼンマイ、貝類、鯉などの淡水魚にはビタミンB1を分解するアノイリナーゼという酵素が含まれているため、これらとビタミンB1を同時に摂取すると吸収量が低下します。
アノイリナーゼは熱によって失活するので、これらの食材を使用する場合には、加熱することが勧められます。
また、アノイリナーゼを産生する腸内細菌を有する人がいることも知られています。
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