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男性にしか使えない薬、女性にしか使えない薬
公開. 更新. 投稿者:調剤/調剤過誤.この記事は約6分34秒で読めます.
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男性の薬、女性の薬
「男性にしか使えない薬」と聞いて、何の薬を思い浮かべるだろうか?
男性型脱毛症の薬や、前立腺肥大症、前立腺癌の薬など。
「女性にしか使えない薬」といえば、閉経後骨粗鬆症の薬や、子宮癌、乳癌の薬、子宮内膜症の薬など。
病名から判断して、女性用の薬、男性用の薬と判断することができる。
また、添付文書の禁忌に「女性」と記載されている薬もある。
禁忌に記載されると、適応外で処方することもできない。
前立腺肥大症の薬「アボルブ」、前立腺癌の薬「カソデックス」、脱毛症の薬「ザガーロ」などが女性に禁忌となっている。そもそも女性に前立腺は無いので、前立腺関連の薬を女性に使うことは無いが、適応外で使われる可能性も考えると害のあるものは禁忌に挙げておいた方が無難だろう。
男性に禁忌となっている薬はない。
男性に加味逍遙散を使っちゃダメ?
男性に加味逍遥散という処方は見たことがありませんが。
加味逍遥散の効能効果には、
体質虚弱な婦人で肩がこり、疲れやすく、精神不安などの精神神経症状、ときに便秘の傾向のある次の諸症
冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症
と「体質虚弱な婦人で」と明記されている。
婦人じゃなきゃダメなのか、と思いますが、冷え性・虚弱体質の適応で保険は通るらしい。
保険は通るかも知れませんが、処方的には「?」と思うので、疑義照会は必要だろう。
当帰芍薬散と認知症
当帰芍薬散といえば、婦人病に使う漢方薬として有名なので、男性に処方されていると「?」と思います。
しかし、証さえ合えば男性に処方されても不思議ではありません。
当帰芍薬散は、アセチルコリン神経系を賦活し、認知症症状を改善するとして、アルツハイマーなどに使用されることがあります。
当帰芍薬散は、女性に繁用される漢方薬ですが、認知症、脳障害後遺症のほか、男性のニキビ、男性更年期障害(頭痛、肩こり)、男性不妊等で使うケースもあります。
耳鼻科領域では、循環障害によるめまいに用いられることがあり、嗅覚障害(特に感冒疾患後や頭部外傷後の嗅覚障害)に用いた事例も報告されています。
男性不妊と漢方薬
婦人科で男性に桂枝伏苓丸が処方されることがあります。男性不妊症に用いられます。桂枝茯苓丸は精索静脈瘤、特発性造精機能障害を改善する作用があると報告があります。
精索静脈瘤とは、精巣から心臓へ還る静脈の血液の流れが途中で滞る病気です。左側に起こることがほとんどで、症状としては陰嚢に腫れた静脈を触れたり、痛みや違和感として感じたりすることがあります。精巣内の温度が上昇することにより精子の造精機能が障害されるために不妊症になるといわれています。
その他男性不妊症に対して、柴胡加竜骨牡蛎湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、補中益気湯、牛車腎気丸など用いられることがあります。
人参と不妊症
男性不妊の多くは原因不明の特発性造精機能障害ですが、漢方製剤の適応となる症例もあるものと考えられます。
男性不妊には、一般的に牛車腎気丸や補中益気湯がよく用いられています。
これらの補腎・補気剤の有用性は漢方製剤による漢方治療においても単独投与や併用療法によって評価されています。
最近では、薬用人参が乏精子症に臨床的に有用であり、また基礎的にも睾丸のDNAや蛋白生合成を促進する作用が明らかにされていることから、漢方製剤では人参の配剤された補中益気湯や人参湯が男性不妊に用いられています。
また心因性の不妊に用いられる柴胡加竜骨牡蠣湯にも人参が配剤されています。
男性にエビスタはダメ?
エビスタの適応は「閉経後骨粗鬆症」となっているので、保険請求上、男性にエビスタを処方することはできません。
ラロキシフェンは選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERMs:Selective Estrogen Receptor Modulators)で、子宮や乳房等の生殖器には抗エストロゲン作用を示しますが、骨ではエストロゲン様作用を示し、骨吸収を抑制して椎体や大腿骨および全身の骨密度を増加させます。
成人男性の骨代謝を調節するホルモンは主にテストステロンですが、エストロゲンも重要な役割を果たしており、前立腺癌でゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)による治療などを受けている患者において臨床試験が行われています。
前部腰椎や股関節などの骨密度が増加した報告はありますが、明確なエビデンスやガイドラインはありません。
ルトラールは女性用、プロスタールは男性用?
ルトラールとプロスタールはどちらもクロルマジノン酢酸エステルを成分とする薬です。
しかし、ルトラールは含量が2mgで、生理不順や生理の出血量異常、不妊症の治療など、女性特有の症状を改善するための薬です。
つまり、ルトラールは女性にしか処方されません。
一方、プロスタールは、含量が25mgまたは50mgと10倍以上になっており、前立腺肥大症、つまり男性特有の疾患に用いられます。
主成分が同じでも、含量を調節することにより、女性専用や男性専用の薬として利用できるホルモン剤は面白い物質です。
ジェントスルーコーワは男性用?
レディガードコーワは女性の排尿トラブル用。
ジェントスルーコーワは男性の排尿トラブル用。
というパッケージイメージ。
レディガードコーワを男性に販売することはできない。
しかし、ジェントスルーコーワを女性に販売することは差支えない。
レディガードの成分はブラダロンで、医療用でもある成分なのでわかりやすい。
一方、ジェントスルーは漢方薬で、八味地黄丸加五味子麦門冬なのだそうだ。
八味地黄丸じゃあダメなのかな。
八味地黄丸に五味子と麦門冬が追加され、言わば十味地黄丸というとこか。
「疲れやすくて、口に渇きなどがある方の排尿困難・夜間尿・頻尿などに」という商品特徴のようなので、レディガードで口が渇く頻尿の方には勧めてみてもよいのかな。
レディーガードコーワは女性用?
レディーガードコーワとは、フラボキサート塩酸塩、ブラダロンのOTCです。
女性専用のお薬です。
レディガードコーワの製品情報 コーワの製品情報・CM情報サイト
フラボキサート塩酸塩を配合した女性用の頻尿・残尿感改善薬です。膀胱機能を調整し、過敏な状態を正常に改善しますので、頻尿や残尿感といった尿トラブルにすぐれた効果をあらわします。
1週間程度の服用で、しだいにトイレの回数が減っていきます。
頻尿に使われる抗コリン薬。
ポラキス、バップフォー、ベシケア、デトルシトール、ウリトス、ステーブラ、トビエースと医療用では色々あります。
トイレの近い人の薬。
ブラダロンの抗コリン作用は弱い。
前立腺肥大症や緑内障に禁忌とはなっていない。
「弱い副交感神経抑制作用があるので、排尿筋を弛緩、膀胱括約筋を収縮させるおそれがある。」
「弱い副交感神経抑制作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させるおそれがある。」
弱い抗コリン作用がある、と明記されている。
レディーガードコーワは、その名の通り、女性専用の薬。
男性が買いに来たら、それは奥さん用でしょう。
ブラダロンの適応は「神経性頻尿、慢性前立腺炎、慢性膀胱炎」となっているので、男性に使うこともある。
しかし、最近は新しい抗コリン薬(ベシケア・デトルシトール・ウリトス・ステーブラ)がたくさん出てるから、使われる頻度も少なくなっています。
バップフォーレディは女性用?
2021年11月にバップフォーのOTC「バップフォーレディ」が発売されましたが、レディーガードコーワ同様女性用の薬です。
やはり男性は尿閉を起こしやすいという理由から、OTCレベルでは抗コリン薬は男性に禁忌という位置づけなのでしょう。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。
2 件のコメント
加味逍遙散は男性の場合は保険適用できないということでしょうか?。
コメントありがとうございます。
医師の裁量権もありますし、男性更年期に使われるという話も聞いたことがあるので、保険が効かないというわけではないと思いますが。
ただ男性に処方された際には、「間違いじゃないかな?」という視点は必要かと思います。