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ネプリライシン阻害薬で血圧が上がる?
公開. 更新. 投稿者:心不全/肺高血圧症.この記事は約2分0秒で読めます.
7,712 ビュー. カテゴリ:エンレスト錠
エンレストに含まれるネプリライシンの役割は?
2020年6月に、慢性心不全治療薬エンレスト錠が製造販売承認を取得しました。
薬効分類名は「 アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI) 」。成分は「 サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物 」。
なんだか、組み合わさった薬効分類名、成分名である。
サクビトリルがネプリライシン阻害薬で、バルサルタンがアンジオテンシン受容体阻害薬である。
エンレストの作用機序は以下の通り。
サクビトリルバルサルタンは、サクビトリル及びバルサルタンに解離して、それぞれネプリライシン(NEP)及びアンジオテンシンⅡタイプ1(AT1)受容体を阻害する。サクビトリルは、エステラーゼによりNEP阻害の活性体であるsacubitrilatに速やかに変換される。NEP阻害は、血管拡張作用、利尿作用、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAAS)抑制作用、交感神経抑制作用、心肥大抑制作用、抗線維化作用、及びアルドステロン分泌抑制作用を有するナトリウム利尿ペプチドの作用亢進に寄与する。バルサルタンのAT1受容体拮抗作用は、血管収縮、腎ナトリウム・体液貯留、心筋肥大、及び心血管リモデリング異常に対する抑制作用をもたらす。
バルサルタンはARBでおなじみですが、サクビトリルの作用機序がわからない。ネプリライシンって何だろう?
ネプリライシン
ネプリライシンとは、タンパク質分解酵素の一種である。
心保護作用のあるBNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)、降圧作用があるブラジキニン等の生理活性ペプチドや、脳の老廃物でアルツハイマー病の原因となるアミロイドβを分解する働きがある。
つまり、ネプリライシンを阻害するとBNPやブラジキニンの分解を阻害するので、心保護作用や降圧作用が期待できる。
しかし、ネプリライシンはアンジオテンシンⅡの分解にも関与しており、ネプリライシンを阻害することで、アンジオテンシンⅡの活性化につながり、AT₁受容体を介する系を亢進させてしまうという。そのため、ARBであるバルサルタンを組み合わせているのだ。
また、同時にアミロイドβの分解も妨げることになるので、認知症に対する影響が気になるところ。
ネプリライシンが加齢とともに脳内で減少するとアミロイドβが増加すると報告されています。
しかし、ネプリライシン阻害薬を長期間服用した場合の認知症リスクについては、まだまだ検証中であり、今後の報告を注視したい。
エンレストは配合錠?
エンレスト錠の0.5錠という処方がきて、「配合錠じゃなかったかな?割っていいのかな」と思いましたが、エンレストは配合錠ではない。
エンレスト錠100mgには割線もあり、粉砕することも問題ない。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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