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副作用被害救済制度の不支給事例
公開. 更新. 投稿者:副作用/薬害.この記事は約4分4秒で読めます.
3,146 ビュー. カテゴリ:副作用被害救済制度
添付文書の用法用量が守られていない、適応外処方といった例は日常の処方のなかで割と多くみられる。
そのため、薬剤師の中でも麻痺してしまっている感覚の者もいるが、添付文書上の用法用量を守らずに処方、調剤した際に、医療機関や薬局への査定減額といった形での不利益を被るだけであれば、大した問題では無い。
添付文書上の用法用量を守らずに、副作用が起こってしまった際、本来であれば副作用被害救済制度の対象となるはずの患者が、適応外の用法用量で服用させられたため、給付金の支給対象外となり、患者が不利益を被ることになってしまうということが大問題なのである。
ということで、不支給事例として挙げられることの多い、ラミクタール、メルカゾール、ユリノームについて、チェックポイントを確認したい。
ラミクタールの用法用量
ラミクタールの用法用量は、「 てんかん患者に用いる場合 」「 単剤療法の場合 」「 双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制に用いる場合 」「小児の場合」「 バルプロ酸ナトリウムを併用する場合 」「 バルプロ酸ナトリウムを併用しない場合 」「 本剤のグルクロン酸抱合を誘導する薬剤:フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、プリミドン、リファンピシン、ロピナビル・リトナビル配合剤 を併用する場合」など、細かい条件で、漸増方法が指示されており、複雑になっている。
1.最大 1 日投与量を超えないこと
2.バルプロ酸ナトリウム併用時の投与開始 2 週間までは 隔日投与にすること (成人のみ)
3.増量のタイミングを守ること
といった点を注意するよう指示されている。
―ラミクタール錠の適正使用のお願い― ~重篤な皮膚障害と用法・用量 遵守について~
「増量のタイミングを守ること」という記載もあるので、増量すべきタイミングで増量していない場合、についても一応疑義照会しているが、不支給事例では「増量までの間隔が短すぎ」が問題となっているので、通常の用量よりも少ない分については副作用被害救済制度的には不支給にはならないだろうとは思っている。
メルカゾールと血液検査
メルカゾールの添付文書の警告には、
重篤な無顆粒球症が主に投与開始後2ヶ月以内に発現し、死亡に至った症例も報告されている。少なくとも投与開始後2ヶ月間は、原則として2週に1回、それ以降も定期的に白血球分画を含めた血液検査を実施し、顆粒球の減少傾向等の異常が認められた場合には、直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。また、一度投与を中止して投与を再開する場合にも同様に注意すること。
と、書かれています。
投与開始後2カ月は、原則として2週間に1回血液検査を実施する。
メルカゾール錠により引き起こされる可能性のある無顆粒球症とは好中球が著しく減少し、細菌に対する抵抗力が弱くなった状態のことを言う。臨床検査値は顆粒球数がほぼ0あるいは500/μL以下で、基本的に赤血球および血小板数の減少はない。体内に入った細菌を殺すことができないためかぜのような症状として突然の高熱、のどの痛みなどの感染に伴う症状が見られる。
報告によると無顆粒球症の71%が投与開始2か月以内で起こっているが、それ以降でも29%と比較的高い割合で発現している。
投与開始2か月間の定期的な検査について実施期間の目安についてメーカーに確認すると1か月間隔程度との返答だったが、来院頻度に合わせて多少長くなることに関しては問題ないとのこと。
「原則として」というのが気になるが、
甲状腺機能亢進症のためチアマゾールを服用し,無顆粒球症を発症。投与開始以降,無顆粒球症が認められるまで約7週間血液検査が実施されていなかったため,適正な使用とは認められませんでした。
という不支給事例があるので、血液検査の実施を確認しましょう。
抗甲状腺薬の副作用と対策
副作用は服用開始3ヶ月以内に起こることが多い。
従って、少なくとも服用開始3ヶ月間は原則として2~3週の間隔で副作用のチェックを行う。
なかでも特に開始2ヶ月間は、2週間ごとに診察することが望ましい。
ただし、プロピルチオウラシル(PTU)によるMPO-ANCA関連血管炎症候群は、服用開始1年以上たって起こることが多いので注意を要する。
PTUがダメならMMI
抗甲状腺薬にはMMIとPTUがあるが、一方の薬剤で副作用を認めた時に、すぐに他方を投与するのは望ましくない。
というのも例えばPTU休薬後すぐにMMIを開始して肝機能障害が持続した場合、MMIでも肝機能障害が起こったのか、PTUによる肝機能障害が遷延化しているのかといった評価が難しいためである。
ユリノームと肝機能検査
ユリノームの警告欄には以下のように記載されている。
劇症肝炎等の重篤な肝障害が主に投与開始6ヶ月以内に発現し、死亡等の重篤な転帰に至る例も報告されているので、投与開始後少なくとも6ヶ月間は必ず、定期的に肝機能検査を行うこと。また、患者の状態を十分観察し、肝機能検査値の異常、黄疸が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
そして、不支給事例は、この肝機能検査を行っていなかったために不支給となっている。
高尿酸血症のためベンズブロマロンを服用し,薬物性肝障害を発症。投与開始以降,肝障害が 認められるまで約10ヶ月間肝機能検査が実施されていなかったため,適正な使用とは認められませんでした。
肝機能検査の実施確認と、患者の自覚症状( 食欲不振、悪心・嘔吐、全身倦怠感、腹痛、下痢、発熱、尿濃染、眼球結膜黄染等 )の確認が必要です。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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