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体の中に石ができる原因は?
公開. 更新. 投稿者:肝炎/膵炎/胆道疾患.この記事は約5分50秒で読めます.
4,706 ビュー. カテゴリ:石の成分
胆石とか尿路結石とか原因は違うの?
「体の中に石ができた」と聞いたら、胆石か尿路結石かな?と思う。
しかし、他にも「胃石」や「唾石」「膵石」、「耳石」なんてのもありますね。
とりあえず、頻度の高い「胆石」と「尿路結石」について学ぶ。
不摂生がたたると、石ができるというイメージですが、具体的に石ができる原因は何なのでしょうか?
胆石
胆石の種類としては、「コレステロール胆石」と「ビリルビン胆石」があります。
昔はビリルビン胆石が多かったのですが、近年では80%以上がコレステロール胆石だそうです。食生活の変化とともに増加しています。
コレステロールはわかります。脂肪分の多い食事が原因となっているのでしょう。
ビリルビン胆石はビリルビンカルシウム石とも言うので、カルシウムの摂取がダメなのではないかと思う人もいますが、カルシウムの摂取は問題ありません。
ビリルビン胆石は、胆汁に細菌感染が起こると生じるので、衛生環境の改善とともに減少しています。
種類(頻度) | 胆嚢結石(約70%) | 総胆管結石(約14%) | 肝内(胆管)結石(3.5%) |
発生部位と機序 | 胆嚢の収縮不良 | 胆嚢内からの落下 細菌の上行性感染 | 肝左葉に好発 肝内胆管の拡張 細菌の上行性感染 |
胆石の組成 | コレステロール結石が多い | ビリルビンカルシウム結石が多い | |
予後・合併症など | コレステロール結石は軽いため胆石発作を生じる | 重篤な胆管炎を発症する危険性がある。65%で胆嚢結石を合併 | 再発率が高く、難治性である 肝内胆管がんの合併が多い |
種類 | コレステロール結石(60%) | 色素結石(40%) | |||
純コレステロール石 | 混成石 | 混合石 | ビリルビンカルシウム石 | 黒色石 | |
頻度 | 10% | 10% | 40% | 20% | 20% |
形状 | 白色放射状 | 放射状構造(内層) 層状構造(外層) | 放射・層状構造 | 層状構造、黒褐色 | 不整形、光沢ある黒色 |
成分 | 純コレステロール | 純コレステロールをビリルビンカルシウムが囲む | コレステロールとビリルビンが混じる | ビリルビンとカルシウム | |
主な部位 | 胆嚢 | 胆管(肝内、肝外) | 胆嚢 | ||
生成機序 | 以下の3つの因子が重なって生成される ・胆嚢収縮機能の低下 ・胆汁中コレステロールの過飽和 ・コレステロールの結晶化・成長 | 腸内細菌の上行性感染により、β-グルクロニダーゼなどの酵素が産生されることで、不溶性ビリルビンが増加しカルシウムと結合、析出すると考えられる。 | 溶血や肝硬変などにより肝でのグルクロン酸抱合能力を超えたビリルビン負荷がかかり、ビリルビン↑により生成されると考えられる。 |
胆石の成分
胆石は、胆汁成分であるコレステロールやビリルビンが胆汁中に溶け切れなくなって結晶化したものであり、その原因には、これら胆汁成分の胆汁中への過剰な排泄、胆嚢収縮能の低下、感染などが指摘されている。
胆石は、形成された部位により胆嚢結石、総胆管結石、肝内胆石と称される。
また、組成により
1)コレステロールを主成分とするコレステロール結石
2)ビリルビンカルシウムを主成分とし、胆道系に感染を起こすことで生ずるビリルビンカルシウム結石
3)同じくビリルビンカルシウムを主成分とするが、感染していない胆嚢内に生じる黒色石
に大別される。
通常、胆汁中のコレステロールは、レシチンと胆汁酸の作用により液体のまま十二指腸に送られる。
しかし、カロリーの高い食事を摂り続け、さらに胆嚢収縮能の低下や感染などが加わって胆汁の粘張度が高くなると、胆嚢や胆管内でコレステロールが凝集して胆石を生じやすくなる。
尿路結石
尿管結石による痛みはとてもしんどい。胆石、膵炎、尿管結石の痛みは、「3大激痛」といわれ、中でも尿管結石は昔から、「七転八倒の苦しみ」と表現されるほどです。のたうちまわるほどの痛み。
尿路結石の種類としては、シュウ酸カルシウム結石、リン酸カルシウム結石、尿酸結石があります。感染結石というのもある。
シュウ酸カルシウムやリン酸カルシウムも「カルシウム」が入っているので、カルシウムの摂取は控えたほうがいいのか、と思いがちです。
アスパラCAの禁忌には、
腎結石のある患者〔腎結石を増強させるおそれがある。〕
と書かれています。
以前は、カルシウム結石の予防にはカルシウムを多量に摂らない方がいいと考えられていましたがその後の研究で、結石患者さん達の方が、結石のない人達に比べて、摂取しているカルシウム量が有意に少ないということが報告されました。
カルシウムは腸管内でシュウ酸と結合してこれを便に排出させ、シュウ酸の吸収を抑制し、尿中シュウ酸排泄量を減らします。現在では、適量のカルシウム摂取を行うことが、再発予防になると考えられています。
つまり、結石の犯人は「シュウ酸」や「リン酸」であって、カルシウムではないということ。
医療用医薬品では気を付ける必要はありますが、食品から摂取するカルシウムに関しては制限する必要は無さそうです。
シュウ酸を多く含む食品には、ホウレンソウ、キャベツ、ブロッコリー、タケノコ、バナナ、玉露・抹茶・煎茶などのお茶、ココア、チョコレート、コーヒー、紅茶などがあります。
シュウ酸は水溶性なので、ゆでて調理をしたり、カルシウムと一緒に摂取することで吸収を抑えることができます。ホウレンソウのおひたしにちりめんじゃこを加えたり、コーヒー・紅茶・ココアには牛乳を加える、と良いです。
尿酸結石は、高尿酸血症の患者さんの食生活に準じますが、プリン体を多く含む食事、肉類(レバーなど動物の内臓)、魚介類、干物などに気を付けます。
また、食塩も尿細管におけるカルシウムの再吸収を抑制し、過剰摂取すると尿中クエン酸排泄量の減少を来すため、塩分制限は必要です。
主な結石の成分 | シュウ酸カルシウム | リン酸マグネシウムアンモニウム | 尿酸 |
---|---|---|---|
頻度 | 約80% | 約10% | 約10%弱 |
原因となる尿の変化 | 酸性 高カルシウム尿 高シュウ酸尿 | アルカリ性 | 酸性 高尿酸尿 |
原因となる薬剤 | 副腎皮質ステロイド 活性型ビタミンD₃製剤 カルシウム製剤 | ー | 尿酸排泄促進薬 ループ利尿薬 サイアザイド系利尿薬 |
薬物による溶解療法 | サイアザイド系利尿薬 クエン酸製剤 炭酸水素ナトリウム | 結石除去が治療の基本 | クエン酸製剤 炭酸水素ナトリウム 尿酸生成抑制薬 |
尿路結石はビールで治す?
尿路結石にはビールを飲むと良いという話がある。
約90%が水分のビールは特に抗利尿ホルモンの作用を低下させるので、トイレが近くなります。結石が小さいうちなら、ビールを飲んで大量の尿とともに体外に流し出してしまうことも可能です。
しかし、飲みすぎは、利尿作用後に尿の濃縮・尿中への尿酸排泄の増加・尿の酸性化を招き、尿酸結石やシュウ酸結石を作りやすくする危険性もあります。 ビールにはかなりのシュウ酸が含まれています。
ビールは控えたほうがいいでしょう。
シュウ酸カルシウムは毒?
わずかな量のシュウ酸カルシウムを摂取しただけでも、口と喉にひどい灼熱感を持って腫れ、窒息をもたらすという。
量が多い場合は深刻な消化器障害と呼吸困難を引き起こし、量によっては、昏睡や死亡に至る。
パイナップルを食べた時に口内が荒れる原因として知られる。
生体内で結石として産生されるシュウ酸カルシウムも、体外から摂取すると毒になる。
胆石や尿路結石など、石が出来る場所によっても成分は違う。
隠れ胆石(サイレントストーン)
胆石が胆嚢管や胆管に詰まると、食後30分から数時間以内に胆汁のうっ滞による強い右季肋部痛(右の脇腹の痛み)や心窩部痛(みぞおちの痛み)、放散痛(肩や背中の痛みや凝り、腰痛)を来す。
さらに、感染が加わると発熱、黄疸を伴うことになる。
とはいえ、胆石をもつ人すべてがこうした症状を来すわけではない。
胆石そのものは人間ドックなどでおよそ10人に1人の割合で認められるが、このうち症状を来す胆石症は2割程度であり、多くは無症状胆石(サイレントストーン)である。
胆石は無症状である限り外科的治療の適応とならず、定期的に超音波検査などを受け、脂肪やコレステロールの過剰摂取を控えた食事に努めることが一義的に重要です。
併せて、胆汁の流れを良くし、胆石を溶かす効果を期待してウルソデオキシコール酸が処方されることもあります。
食後の腹痛は胆石?
胆石症は、食後30分から数時間以内にみぞおちや右の脇腹が痛んだり、肩の凝りや痛みなどを感じるものの、しばらくするとこうした症状が消失するのが特徴です。
このため、実際には胆石症でありながら、市販の胃腸薬などを服用している方も少なくありません。
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