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薬が原因の嚥下困難
公開. 更新. 投稿者:消化性潰瘍/逆流性食道炎.この記事は約3分32秒で読めます.
6,009 ビュー. カテゴリ:薬剤性嚥下困難
薬が原因で嚥下に支障をきたしている患者がいる。
抗コリン薬など口腔内乾燥を引き起こす薬剤、ドパミン抑制作用や筋弛緩作用を有する薬剤などが、嚥下に影響しやすい。
誤嚥性肺炎の原因にもなるたえ、これらの薬が処方されている高齢患者については、注意を払う必要がある。
嚥下に影響を与える主な薬剤とその作用
薬の種類 | 嚥下機能に対する作用 |
---|---|
抗精神病薬、抗不安薬 | 咳ー嚥下反射の低下、食欲低下、嘔吐、便秘、口腔内乾燥、錐体外路徴候、精神活動低下(眠気など) |
制吐薬、消化性潰瘍薬 | 錐体外路系の副作用、口腔内乾燥 |
抗パーキンソン病薬 | 口唇ジスキネジア、口腔内乾燥、味覚障害、食欲低下 |
抗コリン薬 | 唾液分泌障害、下部食道内圧の低下 |
ステロイド | ステロイドミオパチー、易感染性 |
筋弛緩薬 | 過度の筋弛緩、精神活動の低下 |
抗がん剤 | 口腔内乾燥、味覚障害、食欲低下、嘔気・嘔吐、易感染性 |
抗てんかん薬 | 精神活動の低下、口腔内乾燥、食欲低下、嘔吐、便秘 |
抗ヒスタミン薬 | 口腔内乾燥、精神活動の低下、便秘 |
利尿薬 | 口腔内乾燥、脱水 |
薬剤性摂食・嚥下障害の原因となる薬剤としては、抗精神病薬や睡眠薬(抗不安薬)、中枢性の鎮咳薬、制吐薬、筋弛緩薬、抗てんかん薬などがある。
嚥下・咳嗽反射には、咽頭におけるサブスタンスPの濃度が関係している。
サブスタンスPは、大脳基底核で産生されるドパミンによって誘導され、舌咽・迷走神経を介して咽頭に放出される神経伝達物質で、咽頭での濃度が低下すると、嚥下反射機能が低下する。
抗精神病薬の多くはドパミン拮抗薬であり、ドパミンD2受容体を遮断して脳内のドパミンの伝達を抑制することで、摂食・嚥下障害を来し得る。
抗精神病薬には定型と非定型があるが、一般に定型は嚥下障害を来しやすいとされている。一方、非定型は、ドパミンD2受容体遮断作用に加えて、5-HT2A受容体遮断作用なども併せ持つため、嚥下障害が出にくいとされている。
ベンゾジアゼピン系薬には、抗不安・催眠作用にほかに、筋弛緩作用もあることから、誤嚥の原因となることがある。
誤嚥性肺炎の予防
誤嚥性肺炎の予防には、日常生活の指導も重要である。
口腔内の雑菌を減らすために、食後は必ず歯を磨いて口腔内を清潔にする。
食後に歯を磨くと、磨かない場合よりも肺炎の頻度が低くなる。
また、胃液を誤嚥すると肺炎が重症化しやすいので、胃液を誤嚥しないように食後30分以上は座位または半座位を取った方がよい。
誤嚥性肺炎
肺炎で死亡する高齢者は多い。
特に脳卒中の既往がある患者は肺炎を発症しやすいことが古くから知られ、問題とされてきた。
そのほとんどは「誤嚥性肺炎」であり、大脳の深部に位置する大脳基底核の脳血管障害が発症に大きく関与することが分かっている。
通常、食物を飲み込むと「嚥下反射」が働き、気道が閉じて一時的に呼吸が遮られるため、食物が気道に入り込むことは無い。
万が一、食物が気道に入り込んでも、せき込むことで排出する「咳反射」が機能する。
しかし、大脳基底核が脳梗塞などによって傷害を受けると、ドパミンの産生が低下し、ドパミンによって合成が促される神経伝達物質サブスタンスPが減少する。
サブスタンスPには、咽頭や気道に働きかけて嚥下反射と咳反射を起こす役割があるため、サブスタンスPの減少は、嚥下機能の低下につながる。
特に、夜間の睡眠中は、日中よりもサブスタンスPの合成量が減るため、本人も気づかないうちに、唾液と一緒に口腔内の雑菌を誤嚥する「不顕性誤嚥」を繰り返す。
そして、体調の悪い日などに誤嚥性肺炎を発症すると考えられている。
誤嚥性肺炎の予防薬
嚥下を改善させる薬剤としては、ACE阻害薬や、アマンタジン塩酸塩(シンメトレル)、シロスタゾール(プレタール)、半夏厚朴湯などがある。アマンタジンは、大脳基底核におけるドパミン合成を促進して嚥下反射を改善させる。また、ACE阻害薬のイミダプリル塩酸塩(タナトリル)は、サブスタンスPの分解酵素を阻害して咽頭におけるサブスタンスPの濃度を高めて嚥下反射を改善させるといわれており、古くから、高齢者の誤嚥性肺炎の予防も期待して、降圧薬として選択されることがある。
参考書籍:日経DI2019.6
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