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ステロイドは胃潰瘍の原因にならない?
公開. 更新. 投稿者:消化性潰瘍/逆流性食道炎.この記事は約3分17秒で読めます.
6,903 ビュー. カテゴリ:ステロイド潰瘍
薬物性の胃潰瘍というと、NSAIDsや低用量アスピリンが挙げられますが、ステロイド潰瘍とも呼ばれるように、ステロイドも胃潰瘍の原因となりうる。と思っていました。
PPIによる消化性潰瘍の再発抑制の適応には、NSAIDsと低用量アスピリンの場合のみにしか適応がなく、ステロイドとの併用療法は適応外となる。
まず、消化性潰瘍診療ガイドラインでは、
「糖質ステロイド投与は、消化性潰瘍発生(再発)のリスクファクターか?」という疑問に対して、「糖質ステロイドは、消化性潰瘍発生のリスクファクターとはならない」と回答されています。
消化性潰瘍は糖質ステロイドのまれな合併症であって、ステロイド治療が適用のときには禁忌と考えるべきではないということです。
確かに、ロキソニンなどのNSAIDsでは消化性潰瘍は禁忌、
消化性潰瘍のある患者[プロスタグランジン生合成抑制により、胃の血流量が減少し消化性潰瘍が悪化することがある。
プレドニンなどのステロイドでは消化性潰瘍は原則禁忌となっているので使用可能です。
消化性潰瘍の患者[肉芽組織増殖抑制作用により,潰瘍治癒(組織修復)が障害されることがある。]
ステロイドの場合は、NSAIDsほど消化性潰瘍に過敏に反応しなくてもよいということだ。
そもそも、NSAIDsは胃壁の防御作用に関与するシクロオキシゲナーゼ1(COX-1)を阻害することで消化性潰瘍の原因となることがわかっているが、ステロイドが消化性潰瘍の原因になる機序は詳しくはわかっていない。
仮説としては、リン脂質にエステル結合したアラキドン酸が遊離する段階で作用するホスホリパーゼA2をステロイドが阻害して胃粘膜のプロスタグランジンが減少する。
そのために胃粘液の分泌が減少して、胃液あるいはペプシンに対する粘膜の抵抗性が弱まって防御作用が弱くなり、そこにステロイドの胃酸分泌促進作用が加わってステロイド性胃潰瘍が発症するという仮説があります。
また、コレステロールであるステロイドホルモンの一部が、通常は尿から排泄されますが、外から投与されたものは、多くは体の中に停滞して酸化コレステロールになって、その酸化コレステロールが微小血流障害と顆粒球の増多を起こして組織を傷害して、ステロイド性胃潰瘍を発症させるという考え方もあるという。
しかし、結局、エビデンスが無いとわかっていても、プレドニン長期に使ってて胃の調子が悪いという人にはPPIとかH2ブロッカー漫然と処方されます。
ステロイドで胃潰瘍?
NSAIDs潰瘍と同様にステロイドでも胃潰瘍が引き起こされる。
ステロイド薬はホスホリパーゼA2活性を阻害し細胞膜から細胞質へのアラキドン酸の遊離を抑制し、その後のPGの産生低下により胃粘膜防御因子の抑制をする。
ほかに、胃酸およびペプシン分泌亢進と胃液分泌の亢進、胃粘液分泌の減少、粘液抵抗性の減弱、抗肉芽形成による潰瘍修復の遅延、消化管粘膜の再生機転の抑制などが組み合わさって発症していると考えられている。
ステロイド薬による潰瘍予防に関しては十分な検討はされていないが、NSAIDs潰瘍予防と同様にミソプロストロールを中心としたPG製剤とPPI、高用量H2ブロッカーの投与が望ましいと考えられる。
消化性潰瘍の原因
胃潰瘍・十二指腸潰瘍とはヘリコバクター・ピロリの感染や非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)の投与により、胃粘膜・十二指腸の粘膜防御機構が破綻し、胃内腔に存在する塩酸(HCl)が粘膜組織内に拡散して、ペプシンとともに組織を自己消化により発症するので、病因論の立場から消化性潰瘍とも呼ばれてきた。
しかしながら、近年の研究の進歩により、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の発症には、塩酸、ペプシンよりもH.pylori感染やNSAIDsの方が重要であることが明らかになり、消化性潰瘍という疾患名は次第に使われなくなりつつある。
その代わりにH.pylori潰瘍、NSAIDs潰瘍という新しい病因論に基づいた呼称が普及しつつある。
わが国におけるH.pylori潰瘍とNSAIDs潰瘍の比率は、現在3:1であり、欧米諸国と比較してH.pylori潰瘍の比率が高いのが特徴である。
しかしながら、最近ではH.pylori潰瘍は減少傾向にあるのに対し、NSAIDs潰瘍はは、増加傾向にある。
もう1つの特徴は、わが国では海外と比較して、胃潰瘍の比率が十二指腸潰瘍よりも高いことがあげられる。
日本人に胃潰瘍が多い真の理由は不明であるが、最近ではわが国でも十二指腸潰瘍の比率が増加しつつある。
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