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何年も飲んでる薬でアナフィラキシー?
公開. 更新. 投稿者:副作用/薬害.この記事は約4分19秒で読めます.
2,420 ビュー. カテゴリ:何年も飲んでいる薬で薬疹は出ない?
薬疹や、スティーブンス・ジョンソン症候群みたいな重症薬疹、アナフィラキシーショック、アレルギー系の副作用ってのは、服薬初期にインタビューすれば十分で、長期間服用しているような薬では起こりえない、と思っていました。
薬歴に、何年も飲んでいる薬について「アナフィラキシーの疑いなし」みたいな薬歴を書いている薬剤師をバカにしていました。
しかし、私が経験した患者で、スタチン系薬を5年くらい服用して、薬疹が起こったというケースがありました。
これは感作されるまでの期間に個人差があるからです。
アレルギー反応は、2段階の反応です。
第1段階で、物質(薬剤)が生体内に記憶され、第2段階でその物質に免疫系が反応して目に見えるアレルギー反応(薬疹など)が生じます。
薬を飲んでいる間に第1段階が成立するので、飲み始めて10年後に第1段階が成立し、引き続き第2段階(薬疹の発症)が成立することもあり得ます。
この第1段階がどのようなタイミングで成立するかはあまりよくわかっていません。
初回投与と2回目以降の投与では薬疹が出現するまでの期間が異なることが多く、感作期間(アレルギーの準備期間)として初回投与では一般的に1~2週間前後かかるものが多く、2回目以降の投与の際には投与後数日以内に症状が現れることが多くなります。
ただし、これはあくまで目安で例外も多く、例えば湿しんタイプの薬疹では数か月、時によっては数年後に初めて薬疹が見られる場合もあります。
実際には薬を飲みはじめてから2週間以内に第1段階が成立することが多いため「薬疹は薬を飲んでからすぐに生じる」ような感じがするということにすぎません。すでに第1段階が成立している薬を飲んだ場合は、すぐに(2日以内に)に発疹が生じます。このことも「薬疹は薬を飲んでからすぐに生じる」というイメージを強くしていると思われます。
可能性としては服薬初期が多くて、その後は出ない可能性が高い。
しかし、感作されるまでの期間には、個人差があり、みんながみんな2回目で感作されるわけではなく、長期間服用している薬でも起こりうるので、薬疹が出た場合はすべての処方を一度リセットする必要も考慮する。
薬疹と蕁麻疹の違いは?
薬を飲んだあとポツポツが出た、という訴えを聞くとドキッとする。
薬疹はよくある副作用ですが、重症の薬疹である可能性もあるので注意が必要です。
でもほとんどは薬が原因だったのかもわからない蕁麻疹のようなものが多いと思います。
初めて飲む薬で薬疹は出ません。
ハチに2度刺されると死ぬのと同じ原理です。
初めて飲んだ時、薬に対する抗体が作られて(感作の成立)2回目に飲んだときに1回目より強い反応をします。
この感作の成立までの期間は、人間でおよそ10日間らしいです。
ただの皮膚のポツポツ程度なら救急に駆け込む必要もないので、患者さんを不安にさせるような「すぐ医者に行って」という指示はしなくてもいいのかも。
症状がだんだん悪化してくるようなら、スティーブンス・ジョンソン症候群等の可能性もあるので救急に行くことを勧めましょう。
蜂に2回刺されると死ぬ?
日本ではハチ毒アレルギーによるアナフィラキシーショックによって毎年30人前後の人が死亡しています。
ハチ毒アレルギーの症状は、局所のはれからアナフィラキシーショックまできわめて多彩です。
ハチ毒にアレルギーの人でなければ、ハチに刺されても強い痛み、かゆみ、発赤、はれといった局所症状があらわれるのみで、通常3日間ほどで消失します。しかし、ハチ毒アレルギーの人ではきわめて強い反応が起こり、嘔吐、寒気、全身のじんましんといった全身症状から、呼吸困難や意識障害などのショック症状があらわれ、時には死に至ることもあります。
「蜂に2回刺されると死ぬ」と言いますが、これは初めに刺された段階で抗体を作り、次に刺されたときにアレルギー反応が起こるためです。
初めて蜂に刺された人でもアナフィラキシーが起こることがあるようです。
初回からアナフィラキシー?
ある種の医薬品では初回投薬時からアナフィラキシーが生じることには、特に注意が必要である。
特にタキサン系(パクリタキセルなど)ではこのパターンの頻度が高いとされる。
医薬品投与後、通常5~30分以内で、蕁麻疹などの皮膚症状や、消化器症状、呼吸困難などの呼吸器症状、そして意識障害等を呈する。
さらに、血圧低下が急激にあらわれるとアナフィラキシー・ショックと呼び、生命の維持上危険な状態である。
後日皮膚テスト(プリックあるいはスクラッチ)や皮内テストが陽性であるか否かなどで医薬品との関連性を確定できることがある。
アナフィラキシーは一般的に薬物の曝露後5~30分以内に発現する。
投与開始初期段階は医療従事者もしくは家族の観察のもと、アナフィラキシーの特徴的な症状がないか確認を行い、アナフィラキシー等が疑われる症状が出現した時には速やかに主治医に連絡するよう指導することが望ましい。
アナフィラキシーの機序
アナフィラキシーの主たる発生機序は、即時型(Ⅰ型)アレルギー反応と理解される。
アレルギーの原因となるいわゆるアレルゲン(抗原)が体内に侵入すると、特定の個体ではアレルゲンに対するIgE抗体が作られ、これが主として、臓器のマスト細胞や、あるいは流血中にも存在する好塩基球の表面上の高親和性IgE受容体に固着する。
その後、同一アレルゲンに再度暴露すると、そのアレルゲンがマスト細胞あるいは好塩基球上のIgE抗体と抗原抗体反応を起こすことにより、これらの細胞からヒスタミン、トリプターゼ(プロテアーゼの一種)、ブラジキニン、あるいはシステイニルロイコトリエンに代表されるケミカルメディエーターが放出される。
これらのエフェクター分子が、体内の様々な臓器に作用することで、種々の症状が惹起されると理解される。
ある種のアナフィラキシーを誘導する一部の薬物ではIgEを介さない機序も存在する(マスト細胞の直接活性化、造影剤等)。
参考書籍:日本薬剤師会雑誌2015.11
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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