2024年11月4日更新.2,470記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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前立腺肥大症に禁忌の薬一覧

前立腺肥大症の併用禁忌

分類商品名一般名併用禁忌
α1遮断薬第1世代ミニプレスプラゾシン
エブランチルウラピジル
バソメットテラゾシン
第2世代ハルナールタムスロシン
フリバスナフトピジル
ユリーフシロドシン
ホルモン系薬抗アンドロゲン薬プロスタールクロルマジノン酢酸エステル
5α還元酵素阻害薬アボルブデュタステリド
PDE5阻害薬ザルティアタダラフィル硝酸剤又は一酸化窒素(NO)供与剤(ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビド、ニコランジル等)を投与中の患者
可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激剤(リオシグアト)を投与中の患者
その他セルニルトンセルニチンポーレンエキス
エビプロスタットオオウメガサソウエキス+ハコヤナギエキス+セイヨウオキナグサエキス+スギナエキス+精製小麦胚芽油

前立腺肥大症とPDE5阻害薬

前立腺肥大症治療薬の中で、PDE5阻害薬であるザルティア(タダラフィル)は、硝酸薬やsGC刺激薬と併用禁忌となっている。

PDE5阻害薬はその血管拡張作用により、勃起不全、前立腺肥大症、肺高血圧症などに使われる。
PDE5阻害薬は血管拡張作用を有しているため、降圧作用を有する薬剤や降圧薬と併用すると、降圧作用を有する薬剤や降圧薬と併用すると、降圧作用が増強する恐れがあり、注意が必要である。

勃起不全治療薬であるPDE5阻害薬と硝酸薬との併用禁忌については、薬を服用して性行為を行った男性の心臓のトラブルなどもあり、イメージしやすいが、ザルティアなどは前立腺肥大症治療薬として見ていると硝酸薬との併用禁忌をイメージしにくく見逃しやすい。

PDE5阻害薬は下部尿路組織に発現するPDE5を阻害することで、cGMP(環状グアノシン一リン酸)の分解を阻害し、cGMP濃度を上昇させる。その結果、Caイオン濃度が低下し、平滑筋が弛緩することで、下部尿路組織での血流や酸素供給量が増える。

前立腺肥大症に禁忌の薬

前立腺肥大症の薬が処方されている患者で注意するのは、併用禁忌の薬よりも「前立腺肥大症に禁忌」の薬のほうが多い。

抗コリン薬は通常、前立腺肥大症の患者への投与は禁忌とされている。
膀胱の収縮力低下により前立腺肥大に伴う尿排出障害が悪化する恐れがあるためである。
しかし「下部尿路に閉塞を有する前立腺肥大症」以外なら禁忌とはならないという解釈が一般的になっている。

しかし、尿路閉塞のリスクのある患者に対する抗コリン作用をもつ薬の投与に対して、薬剤師としては敏感に反応する必要がある。医師のように麻痺させてはならない。
又、添付文書に禁忌と記載されている以上、疑義照会は必要になる。

でも、怖い医者にはなるべく疑義照会したくない。。。

では、各薬剤の添付文書の記載はどのようになっているでしょうか。

医薬品名禁忌
PL配合顆粒前立腺肥大等下部尿路に閉塞性疾患のある患者[本剤中のプロメタジンメチレンジサリチル酸塩は抗コリン作用を有し,排尿困難を悪化させるおそれがある。]
アトロベントエロゾル20μg前立腺肥大症の患者[排尿障害を起こすおそれがある。]
アナフラニール錠尿閉 (前立腺疾患等) のある患者[抗コリン作用により症状が悪化することがある。]
アノーロエリプタ前立腺肥大等による排尿障害がある患者[抗コリン作用により、尿閉を誘発するおそれがある。]
アリメジンシロップ前立腺肥大等下部尿路に閉塞性疾患のある患者
〔本剤は抗コリン作用を有するため,排尿障害等があらわれるおそれがある。〕
アレルギン散前立腺肥大等下部尿路に閉塞性疾患のある患者[抗コリン作用により尿の貯留をきたすおそれがある。]
イミドール糖衣錠尿閉(前立腺疾患等)のある患者〔抗コリン作用により症状が悪化することがある.〕
ウルティブロ吸入用カプセル前立腺肥大等による排尿障害がある患者
〔抗コリン作用により、尿閉を誘発するおそれがある。〕
エクリラ400μgジェヌエア前立腺肥大等による排尿障害がある患者
[抗コリン作用により、尿閉を誘発するおそれがある。]
エンクラッセ62.5μgエリプタ前立腺肥大等による排尿障害がある患者[抗コリン作用により、尿閉を誘発するおそれがある。]
カフコデN配合錠前立腺肥大等下部尿路に閉塞性疾患のある患者[抗コリン作用により膀胱平滑筋の弛緩、膀胱括約筋の緊張により、症状を悪化させるおそれがある。]
クレ・ママレットドライシロップ前立腺肥大等下部尿路に閉塞性疾患のある患者[抗コリン作用により排尿障害が悪化するおそれがある。]
コランチル配合顆粒前立腺肥大による排尿障害のある患者[本剤中のジサイクロミン塩酸塩の抗コリン作用により排尿障害を悪化させるおそれがある。]
コリオパン前立腺肥大による排尿障害のある患者
〔排尿障害を悪化させるおそれがある。〕
シーブリ吸入用カプセル前立腺肥大等による排尿障害がある患者
〔抗コリン作用により、尿閉を誘発するおそれがある。〕
シベノール緑内障、尿貯留傾向のある患者
[抗コリン作用を有するため症状を悪化させるおそれがある。]
スピオルトレスピマット前立腺肥大等による排尿障害のある患者
[更に尿を出にくくすることがある。]
スピリーバ前立腺肥大等による排尿障害のある患者
[更に尿を出にくくすることがある。]
スピロペント下部尿路が閉塞している患者[下部尿路の閉塞を増悪させるおそれがある。]
セスデン前立腺肥大による排尿障害のある患者〔抗コリン作用による膀胱平滑筋の弛緩、膀胱括約筋の緊張により排尿困難を悪化させるおそれがある。〕
ゼスラン前立腺肥大等下部尿路に閉塞性疾患のある患者[抗コリン作用により排尿困難等を起こすことがある。]
セレスタミン前立腺肥大等下部尿路に閉塞性疾患のある患者[抗コリン作用により排尿困難、尿閉等があらわれ、症状が増悪することがある。]
ダイピン錠前立腺肥大による排尿障害のある患者[排尿筋を弛緩、膀胱括約筋を収縮させるため、更に排尿が困難となり、症状が悪化するおそれがある。]
ダクチル前立腺肥大による排尿障害のある患者[症状が増悪するおそれがある。]
タベジール前立腺肥大等下部尿路に閉塞性疾患のある患者〔抗コリン作用により排尿障害が悪化するおそれがある。〕
チアトン前立腺肥大による排尿障害のある患者〔膀胱平滑筋の弛緩,膀胱括約筋の緊張により排尿困難を悪化させるおそれがある.〕
トフラニール錠尿閉(前立腺疾患等)のある患者[抗コリン作用により症状が悪化することがある。]
トランコロン前立腺肥大による排尿障害のある患者[排尿筋の弛緩と膀胱括約筋の収縮を起こし、排尿障害を悪化させるおそれがある。]
トリプタノール尿閉(前立腺疾患等)のある患者〔抗コリン作用を有するため、症状が悪化するおそれがある。〕
トレドミン尿閉(前立腺疾患等)のある患者[本剤はノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有するため、症状を悪化させるおそれがある。]
ネオマレルミン前立腺肥大等下部尿路に閉塞性疾患のある患者[抗コリン作用により排尿困難、尿閉等があらわれ、症状が増悪することがある]
ノリトレン尿閉(前立腺疾患等)のある患者〔本剤の抗コリン作用により、尿閉が助長されるおそれがある。〕
パーキン前立腺肥大等尿路に閉塞性疾患のある患者〔抗コリン作用のため,排尿筋の弛緩と括約筋の収縮が起こり,尿の貯留を来すおそれがある.〕
バップフォー尿閉を有する患者[抗コリン作用により排尿時の膀胱収縮が抑制され、症状が悪化するおそれがある。]
ヒベルナ前立腺肥大等下部尿路に閉塞性疾患のある患者〔抗コリン作用により排尿困難を悪化させることがある.〕
ピメノール緑内障、尿貯留傾向のある患者[抗コリン作用により、症状を悪化させることがある。]
ピレチア前立腺肥大等下部尿路に閉塞性疾患のある患者[排尿困難を悪化させることがある。]
フスコデ前立腺肥大等下部尿路に閉塞性疾患のある患者〔症状を悪化させるおそれがある.〕
ブスコパン前立腺肥大による排尿障害のある患者
[更に尿を出にくくすることがある。
ブラダロン下部尿路に高度の通過障害のある患者
[弱い副交感神経抑制作用があるので、排尿筋を弛緩、膀胱括約筋を収縮させるおそれがある。]
プロ・バンサイン前立腺肥大による排尿障害のある患者[症状を悪化させるおそれがある。]
ペリアクチン前立腺肥大等下部尿路に閉塞性疾患のある患者[抗コリン作用により尿閉を悪化させるおそれがある。]
ホモクロミン前立腺肥大等下部尿路に閉塞性疾患のある患者
〔抗コリン作用により排尿困難、尿閉等があらわれるおそれがある。〕
ポラキス明らかな下部尿路閉塞症状である排尿困難・尿閉等を有する患者[排尿困難・尿閉等が更に悪化するおそれがある。]
ポララミン前立腺肥大等下部尿路に閉塞性疾患のある患者[抗コリン作用により排尿困難、尿閉等があらわれ、症状が増悪することがある。]
マプロミール尿閉(前立腺疾患等)のある患者[抗コリン作用により症状が悪化することがある。]
リズミック残尿を伴う前立腺肥大のある患者〔尿閉をきたすおそれがある。〕
リスモダン緑内障、尿貯留傾向のある患者[抗コリン作用により緑内障、尿閉を悪化させるおそれがある。]
ルジオミール尿閉(前立腺疾患等)のある患者〔抗コリン作用により症状が悪化することがある。〕
レスタミンコーワ前立腺肥大等下部尿路に閉塞性疾患のある患者〔抗コリン作用による膀胱平滑筋の弛緩、膀胱括約筋の緊張により、症状を悪化させるおそれがある。〕
ロートエキス散前立腺肥大による排尿障害のある患者 〔排尿障害を増悪させるおそれがある。〕

上記の薬品については、尿の出が悪くなる可能性があるので、疑義照会、患者への情報提供は必要になる。

禁忌が「前立腺肥大症の患者」となっているアトロベントなどは、明らかに前立腺肥大症に禁忌であるので、ハルナールなど前立腺肥大症にしか適応のない薬が処方されていれば保険請求上もアウトになるので疑義照会は必須だろう。

「前立腺肥大による排尿障害のある患者」という記載が多いが、前立腺肥大症であっても治療により排尿障害がなければ投与可能と解釈できる。
アナフラニールの「尿閉 (前立腺疾患等) のある患者」や、スピロペントの「下部尿路が閉塞している患者」、リズミックの「残尿を伴う前立腺肥大のある患者」についても、前立腺肥大症だから投与不可というわけではない。それぞれの病状によって投与可能だろう。
リスモダンやシベノールの「尿貯留傾向のある患者」という記載も微妙だが、イコール前立腺肥大症ということにはならないだろう。

「前立腺肥大等下部尿路に閉塞性疾患のある患者」という記載も多いが、これは疾患を持っている時点でアウトっぽいので、「先生の判断になりますが…」と前置きした上で、「保険請求上は切られる可能性があります」と伝えるのがよいだろう。
PL顆粒やフスコデなど、風邪で一時的に処方される薬は見逃してしまいがちだが、必ず疑義照会するよう意識する必要がある。

これらの記載は、抗コリン作用の強弱とは関係なく、添付文書上のニュアンスが異なるだけなので、「処方しちゃダメなの?」と医師から突っ込まれた場合の回答材料として挙げさせていただく。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

1 件のコメント

  • かすみ のコメント
         

    はじめまして。勉強させていただいてます。
    過去記事のセファランチンについて、教えてください。
    セファランチン末1%を1回0.6g1日1.2gで処方されました。これは、普通の量ですか?
    乳がん温存手術後の放射線治療での処方です。

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著書:薬局ですぐに役立つ薬剤一覧ポケットブック
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