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「間違った健康常識」は本当に間違っているのか?
公開. 更新. 投稿者:服薬指導/薬歴/検査.この記事は約5分17秒で読めます.
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「間違った健康常識」は間違っている?

「間違った健康常識」という特集はテレビや雑誌でよく見かけます。
「実は逆効果!」「最新研究で明らかに!」といったフレーズとともに、誰もが一度は聞いたことのある“常識”が次々と覆されていきます。
例えば以下のようなものが挙げられます。
・ゼロカロリーは太らない
・風邪をひいたらお風呂に入ってはいけない
・食後すぐに歯磨きをしないといけない
・耳垢はこまめに取るほうが良い
・鼻血が出たらティッシュを鼻に詰める
・老眼鏡をかけると老眼が進む
・焦げを食べるとがんになる
・卵を1日1個以上食べてはいけない
・暗いところで本を読むと目が悪くなる
・水以外で薬を飲んではいけない
これらは一見もっともらしく感じられますし、親や学校の先生から教わったこともあるかもしれません。
実際、私自身も無意識にやっていたことがいくつかあります。
ですが、「すべてが完全に間違っている」と一刀両断するのも、少し乱暴に思えます。
中には、時代背景や生活環境が関係していたり、一部だけを切り取って誤解されたものもあるからです。
そこで、いくつかの“常識”について、少し丁寧に見直してみたいと思います。
ゼロカロリーは太らない
「ゼロカロリーなら太らない」と思って、日常的に飲んでいる人は多いのではないでしょうか。
たしかにゼロカロリー飲料にはエネルギーがほとんど含まれていません。しかし、ゼロカロリー飲料ばかり摂取している人に限って、糖尿病やメタボのリスクが高まるという研究もあります。
これには、「太りやすい生活習慣の人が、ダイエット目的でゼロカロリー飲料を選んでいる」という背景も関係していると考えられます。
つまり、「ゼロカロリー=安心」ではなく、「ゼロカロリーにすれば何でもOK」と思っていると、かえって生活全体が乱れる可能性があるということです。
ゼロカロリーは「太りにくい選択肢」ではあっても、「太らない魔法の飲み物」ではありません。
風邪をひいたらお風呂に入ってはいけない
これもよく聞く常識です。
「お風呂に入ると風邪が悪化する」といわれてきましたが、これは昔の日本の住環境が関係しているといわれています。
寒い脱衣所や風通しの悪い浴室で湯冷めをすると、体が冷えて症状が悪化するおそれがあったためです。
今の住宅は気密性も高く、適切な温度管理ができていれば、お風呂で汗を流すこと自体が風邪の治癒を妨げることはありません。
ただし、高熱や脱水症状があるときは、無理して入浴するよりも安静が優先です。
つまり「体の状態によって判断する」が正解ですね。
水以外で薬を飲んではいけない
これは医療従事者としてとても気になる部分です。
「水以外で飲んだらダメ」というのは、厳密には少し極端ですが、間違いとは言い切れません。
お茶やジュース、牛乳などには薬の吸収や分解に影響する成分が含まれていることがあります。
特に鉄剤とお茶、抗菌薬と乳製品などは有名な組み合わせですね。
ただ、緊急時などで「水がなくてお茶しかない」場合には、それで服用しても問題ない薬も多いのも事実です。
しかし、一般的なルールとして「基本は水で飲む」と伝えるのは、やはり安全策として重要です。
老眼鏡をかけると老眼が進む
「老眼鏡に頼ると、どんどん目が悪くなる」と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
しかしこれは、誤解に近い考え方です。
老眼は加齢によって目のピント調整力が衰える現象であり、老眼鏡をかけることによって進行するわけではありません。
むしろ、無理に裸眼で見ようとすると、目の疲れや頭痛の原因になり、生活の質を下げてしまいます。
適切な度数の老眼鏡を使うことで、目に無理な負担をかけずにすみ、結果的に「快適な老眼ライフ」につながります。
鼻血が出たらティッシュを鼻に詰める
これは多くの人が経験している対処法かもしれません。
しかし実は、鼻の中にティッシュを詰めるのはあまり良い方法ではありません。
まず、ティッシュが乾いて鼻の中で張りつくことで、取り除くときに再出血を起こしやすくなります。
また、押し込むことで傷ついた血管に余計な刺激を与えてしまうことも。
正しい対処法は、鼻の付け根より少し下(小鼻)を5~10分間しっかり押さえて安静にすること。
上を向く必要もありません。むしろ血がのどに流れ込んでしまう可能性があります。
焦げを食べるとがんになる
「焦げ=発がん物質」というイメージは根強いですが、これもやや誤解があります。
たしかに、食品が高温で焼けると「アクリルアミド」や「ヘテロサイクリックアミン」といった発がん性が疑われる物質が微量に生成されることが知られています。
しかし、日常的に摂る程度の量であれば、現実的な健康リスクは極めて小さいと考えられています。
むしろ偏った食生活や運動不足、喫煙などの生活習慣のほうがはるかに大きな影響を与えるとされます。
「焦げそのもの=がん」という単純な話ではない、というのが今の見解です。
体を温めて汗をかけば風邪が早く治る
風邪をひいたときに、「厚着をして汗をかけば治る!」というアドバイスを受けた経験、ありませんか?
実際には、汗をかいたからといって風邪が早く治るという科学的根拠はありません。
発汗により一時的に熱が下がることはありますが、それはあくまで「熱が下がった結果、汗が出た」のであって、逆ではありません。
無理に汗をかこうとして体温を上げすぎると、脱水や体力の消耗につながり、むしろ逆効果になることも。
「しっかり水分をとって、体を冷やさない程度に休む」が基本です。
かかとのカサカサは乾燥
かかとのガサガサやひび割れを「乾燥肌」と思って、保湿クリームだけを塗っている人も多いのではないでしょうか。
たしかに冬場は乾燥も原因のひとつですが、かかとの角質は「圧力」や「摩擦」によって厚く硬くなっていることも多いのです。
このような状態では、ただ保湿するだけでは十分な改善が見込めません。
軽石や専用のやすりで不要な角質を落とし、角質ケア+保湿の両方を行うことが大切です。
笑うとしわが増える
これは一見もっともらしい説ですが、医学的な根拠ははっきりしていません。
確かに、表情をよく動かす部位は「表情じわ」ができやすくなりますが、表情を抑えて無理にしわを減らすことが健康的かというと疑問が残ります。
最近では「よく笑う人のほうが免疫力が高い」「ポジティブな感情が老化を遅らせる」といった研究もあり、笑うことの健康効果が見直されています。
しわを気にして笑わないより、たくさん笑って前向きに生きることのほうがよほど健康的です。
私たちは、「常識」と聞くと無条件に信じてしまいがちです。
しかし、医学や科学は日々進歩し、過去の“正解”が見直されることも多くあります。
大事なのは、「それって本当?」「どうしてそう言われてきたの?」と自分の頭で考えてみること。
知識は、疑うことで深まり、より良い選択ができるようになります。
健康常識の中には、科学的に否定されているものも確かにあります。
しかし、それらの多くは「当時の環境」「生活習慣」「医療情報の乏しさ」などを背景にして根づいたものであり、単に「昔の人は間違っていた」と断じるのは違う気がします。
大切なのは、「なぜそう思われていたのか?」という背景を理解し、今の知識と照らし合わせて、自分なりに納得のいく選択をすることです。


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