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妊娠中に避けるべきワクチンと、接種が推奨されるワクチン
公開. 更新. 投稿者:妊娠/授乳.この記事は約3分4秒で読めます.
1,219 ビュー. カテゴリ:妊婦とワクチン

妊娠中の女性は、自分だけでなくお腹の赤ちゃんの健康を守るため、感染症予防に特に注意を払う必要があります。その中でもワクチン接種は重要な予防手段ですが、妊娠中にすべてのワクチンが安全に接種できるわけではありません。
妊娠中に避けるべきワクチンと接種が推奨されるワクチンを整理し、さらに風疹やインフルエンザなど代表的な感染症とそのワクチンの関係について勉強していきます。
妊娠中のワクチン接種の基本方針
ワクチンは大きく分けて生ワクチンと不活化ワクチン(およびトキソイド)の2種類があります。
妊婦に接種できるかどうかは、この分類によって大きく異なります。
生ワクチン
・例:MRワクチン(麻しん・風しん混合)、風しん単独、水痘、おたふくかぜ、BCG など
・特徴:弱毒化した生きた病原体を体内に入れ、免疫をつける
・リスク:ウイルスが胎盤を通過し、胎児に移行する可能性がある
・基本方針:妊娠中は接種禁止。接種する場合は妊娠していない時期を選び、接種後2ヶ月(米国では3ヶ月)の避妊が必要
不活化ワクチン・トキソイド
・例:インフルエンザワクチン、日本脳炎、B型肝炎、百日せき・ジフテリア・破傷風(DTaP)など
・特徴:病原体を殺し、感染性をなくして免疫原性だけ残す
・安全性:胎児への影響は報告されておらず、必要に応じて妊娠中でも接種可能
妊婦と特定ワクチンの関係
水痘ワクチン
・分類:生ワクチン
・妊婦への接種:禁忌
・理由:胎児へのウイルス感染リスクを避けるため
・注意点:妊娠可能な女性は、避妊を確認してから接種し、その後2ヶ月間妊娠を避ける
インフルエンザワクチン
・分類:不活化ワクチン
・妊婦への接種:可能(主治医の判断と本人の希望による)
・背景
▸妊婦がインフルエンザに感染すると重症化しやすい
▸妊娠中の感染は自然流産のリスク上昇と関連
・添付文書の記載:
▸安全性は「確立していない」としつつも、有益性が危険性を上回る場合は接種可能
▸小規模研究で先天異常発生率の増加は認められない
・ガイドライン:
▸日本産婦人科診療ガイドラインは、妊婦が希望すれば接種してよいと明記
▸授乳婦は制限なしで接種可能
風疹ワクチン
・分類:生ワクチン(MRワクチン含む)
・妊婦への接種:禁忌
・理由:妊娠中の感染は先天性風疹症候群(CRS)の原因となる可能性
・ワクチン接種後は2ヶ月間(米国では3ヶ月)避妊
・背景:
▸1994年まで日本では中学生女子のみ定期接種だったため、免疫のない成人男性が多い
▸妊婦の感染源が夫や職場の男性であるケースが目立つ
・対策:妊娠を計画している女性、およびそのパートナーは抗体検査・接種を事前に行う
妊婦が風疹に感染するとどうなるのか
●先天性風疹症候群(CRS)の特徴
・発生時期:妊娠12週までに感染すると特にリスクが高い(発症率約50%)
・主な症状:
▸白内障、網膜症などの視覚障害
▸難聴
▸心疾患(動脈管開存、心室中隔欠損など)
▸精神発達遅滞、小脳症
▸低出生体重
▸肝炎、脾腫、肺炎、脳炎、骨髄炎
▸血小板減少による出血斑
●流行と予防の現状
・2004年の地域流行時には全国で10人のCRS児が出生
・風疹抗体を持たない若年〜中年層の増加が背景にある
授乳中のワクチン接種
・生ワクチン・不活化ワクチンともに授乳中止の必要はない
・ワクチン由来のウイルスや抗原が母乳を介して有害影響を及ぼすという科学的根拠はない
接種の判断と医師への相談
妊娠中のワクチン接種は、母体と胎児双方のリスクと利益を天秤にかけて判断します。
例えば、
・インフルエンザ流行期に妊娠している → 接種のメリットが大きい
・海外渡航予定があり、流行地域での感染リスクが高い → 医師と相談の上検討
まとめ
・生ワクチン(風疹、水痘など)は妊娠中禁忌。接種後2ヶ月(米国では3ヶ月)の避妊が必要
・不活化ワクチン(インフルエンザ、日本脳炎など)は状況に応じて妊娠中でも接種可能
・妊娠を計画している女性とそのパートナーは事前の抗体検査とワクチン接種が重要
・授乳中はほとんどのワクチンが接種可能
感染症の予防は、妊婦自身と赤ちゃんの健康を守るための大切な一歩です。
不安がある場合は、必ず主治医や産婦人科医に相談し、最適なタイミングと方法で予防接種を受けましょう。