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粉ミルクは70℃以上のお湯で溶かさないとダメ?エンテロバクター・サカザキ菌のリスク
公開. 更新. 投稿者:妊娠/授乳.この記事は約5分40秒で読めます.
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粉ミルクを溶かす温度はなぜ重要?─エンテロバクター・サカザキ菌のリスク

赤ちゃんの栄養を支える粉ミルクは、母乳に代わる大切な栄養源です。しかし、正しい温度で調乳しなければ、目に見えないリスクが潜んでいます。その一つが「エンテロバクター・サカザキ菌(Enterobacter sakazakii)」という細菌です。
なぜ粉ミルクを70℃以上のお湯で溶かす必要があるのか、エンテロバクター・サカザキ菌とは何か、そして安全な調乳方法について勉強します。
粉ミルクは無菌ではない
意外に思われるかもしれませんが、市販されている粉ミルクは完全な無菌状態ではありません。製造段階での衛生管理は徹底されていますが、「加熱滅菌」ではなく、「乾燥殺菌(乾燥工程による微生物抑制)」にとどまっているため、微量の細菌が混入している可能性があります。
特に注意すべき細菌が「エンテロバクター・サカザキ菌」
この菌は、粉ミルクからの感染が国際的にも問題視されており、新生児や早産児、免疫力の弱い乳児では重篤な感染症を引き起こすことがあるのです。
エンテロバクター・サカザキ菌とは
● 基本情報
・学名:Enterobacter sakazakii(現在はCronobacter sakazakiiに分類)
・グラム陰性桿菌で、乾燥に強く、粉ミルク中でも長期間生存可能
・土壌、水、野菜、乳製品など自然界にも広く存在
● 感染リスクが高いのはどんな子?
・低出生体重児(LBW)
・早産児(特にNICUに入院中の乳児)
・免疫力の低い乳児(疾患を持つ新生児など)
● 感染症状
・敗血症
・髄膜炎(脳への感染)
・壊死性腸炎
● 死亡率が高い理由
文献によると、感染した新生児における致死率は40〜80%に達することもあり、非常に注意が必要です。初期には軽い発熱や嘔吐に見えることもあり、見逃されやすい点も問題となっています。
粉ミルクの調乳は70℃以上が必須
この菌は「60℃以下」では生存しやすく、繁殖のリスクがあります。
そのため、WHO(世界保健機関)とFAO(国際連合食糧農業機関)は、以下のように勧告しています:粉ミルクの調乳には、必ず70℃以上のお湯を使用すること。
これはエンテロバクター・サカザキ菌などの殺菌を目的としている。
● 70℃ってどうやって測るの?
沸騰直後の湯(100℃)は高すぎると思われがちですが、実際にはケトルで沸かしてから5〜10分放置すると自然に70℃前後になります。
あるいは、「70℃でキープできるポット」や「温度表示機能付きのケトル」などを使うと便利です。
安全なミルク作りのステップ
以下に、正しい粉ミルクの作り方を段階的に解説します。
① 手を洗う(最も基本だが最も重要)
石けんで手をよく洗ってから調乳作業を開始しましょう。清潔な作業環境が、菌の混入を防ぐ第一歩です。
② 器具の消毒
哺乳びんや乳首、計量スプーン、哺乳びんキャップは必ず煮沸消毒または薬液消毒を行います。菌がついた状態で調乳しては意味がありません。
③ お湯の準備(沸騰→冷ます)
一度沸騰させてから70℃まで冷ましたお湯を用意します。電子レンジ加熱では温度が不均一になりやすいので注意。
④ 粉ミルクの計量
計量スプーンは清潔に保ち、粉をすり切りにして規定量を入れます。
⑤ お湯を注ぎ、すばやく溶かす
全体量の2/3程度のお湯を注ぎ、哺乳瓶を振って粉をしっかり溶かします。その後、残りのお湯を注いで規定量に調整します。
⑥ 冷却して37〜40℃まで下げる
人肌(お風呂くらいの温度)に冷めるまで、流水や氷水で素早く冷却し、手首の内側で温度を確認してから赤ちゃんに与えます。
ミルクの保存と再加温はNG?
原則として、粉ミルクは「作り置き」や「飲み残しの再加温」はしないでください。
・一度溶かした粉ミルクは、2時間以内に使い切ること。
・飲み残したミルクは再加熱せず、必ず廃棄します。
なぜなら、時間が経つとエンテロバクター・サカザキ菌のような菌が急速に増殖する可能性があるからです。
湯冷ましやミネラルウォーターの使用について
70℃以上の湯が原則ですが、やむを得ず湯冷ましや市販水を使う場合には、以下に注意してください:
軟水を選ぶ
硬水(硬度が高い水)は赤ちゃんの腎臓に負担をかけるため、避けましょう。日本の水道水は基本的に軟水です。
水も加熱してから使用
たとえペットボトルの水であっても、必ず一度沸騰させ、70℃以上で粉ミルクを溶かす必要があります。
医療現場での対応:NICUでは液体ミルクが主流
NICU(新生児集中治療室)などでは、粉ミルクは感染リスクが高いため、多くの場合液体ミルク(無菌パック)が使用されます。
液体ミルクは製造過程で滅菌処理がなされており、開封しなければ長期保存も可能で、安全性が高いとされています。
日本国内でも注意喚起がなされている
2000年代には海外での粉ミルク由来のサカザキ菌感染による死亡事故が複数報告されたことを受け、厚生労働省も粉ミルクの調乳温度について下記のようなガイドラインを出しています:
「乳児用調製粉乳における微生物汚染対策として、70℃以上の湯での調乳を推奨」
(厚生労働省 医薬食品局 食品安全部)
よくある誤解とQ&A
Q1. ミルクの温度が熱すぎると栄養が壊れない?
→ 70℃程度であれば問題ありません。ビタミンなどの一部は加熱で多少失われますが、ミルク全体の栄養バランスには大きな影響はありません。
Q2. 液体ミルクなら安全なの?
→ はい。液体ミルクは無菌処理されており、感染リスクは極めて低いです。ただし、開封後は速やかに使い切ることが原則です。
Q3. 哺乳瓶の消毒ってどこまで必要?
→ 新生児期(生後3か月くらいまで)は毎回の消毒を推奨。それ以降は清潔な洗浄だけでも十分なことが多いですが、体調不良時などは再度消毒を徹底しましょう。
まとめ:赤ちゃんを守る調乳温度の「70℃ルール」
粉ミルクの調乳は、単なる作業ではなく、赤ちゃんの命を守る大切なプロセスです。特にエンテロバクター・サカザキ菌のような「乾燥に強く」「高リスクな菌」の存在を知った上で、70℃以上の適切な温度でミルクを作ることが重要です。
安全の3原則
・70℃以上のお湯で粉ミルクを溶かす
・使用器具は清潔・消毒済みにする
・調乳後は2時間以内に使い切る
これらを守ることで、赤ちゃんの健康を守ることができます。