2026年1月30日更新.2,735記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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尋常性、本態性、びまん性とは?

医療用語の「~性」がわかりにくい理由―一般向けに伝えるための整理と翻訳

医療の現場や医療系の記事を読んでいると、「~性」という言葉が頻繁に登場します。

・本態性高血圧
・尋常性乾癬
・二次性骨粗鬆症
・限局性前立腺がん
・真性多血症

医療者にとってはごく自然で、分類や病態を簡潔に示す便利な表現ですが、一般の人にとっては意味が分かりにくく、誤解を招きやすい言葉でもあります。

「良性なのに不安」「尋常性なのに重そう」「仮性だから軽い?」といった受け取り方は、決して珍しいものではありません。

本記事では、医療用語に多用される「~性」という表現について、

・そもそも「~性」とは何を意味するのか
・なぜ分かりにくいのか
・代表的な「~性」用語とその正確な意味
・一般向けにどう言い換えると伝わりやすいか

という点を整理し、医療者と一般の人の認識のギャップを埋めることを目的として解説します。

「~性」という言葉の正体

「~性」は評価ではなく分類
医療用語における「~性」は、多くの場合
・病気の原因
・病態の成り立ち
・分布の仕方
・分類上の位置づけ

を示すための中立的なラベルです。

つまり、
・重い・軽い
・良い・悪い
・危険・安全

といった評価を直接示す言葉ではありません。

しかし日本語では、「性」という漢字が
・性格
・本性
・真性

といった日常語と重なりやすく、感情的な意味合いを帯びて受け取られやすいという問題があります。

なぜ「~性」は誤解されやすいのか

① 漢語が多く、日常語と乖離している
「尋常」「本態」「特発」「器質」といった言葉は、日常会話ではほとんど使われません。そのため、言葉を聞いた瞬間に意味が浮かばず、音の印象だけで判断されてしまうことがあります。

② プラス・マイナスの印象を勝手に補完してしまう
・良性 → 良い病気
・仮性 → ニセだから大丈夫
・悪性 → 絶望的

といったように、患者側が言葉のニュアンスを補完してしまい、医療者の意図とずれることがあります。

③ 説明されないまま使われることが多い
「専門用語だから説明しなくてもいいだろう」という無意識の前提が、理解のズレを広げてしまいます。

特に誤解されやすい「~性」用語一覧

以下では、臨床や一般向け記事でよく登場し、かつ誤解されやすい「~性」用語を取り上げます。

1.尋常性(じんじょうせい)

専門的な意味
特別な型ではない、もっとも一般的・典型的なタイプ。

誤解されやすい点
「尋常じゃないほど重い」「普通なら問題ない?」と真逆に受け取られることがある。

言い換え例
・もっとも一般的なタイプの
・典型的な

2.本態性(ほんたいせい)

専門的な意味
明確な原因疾患が特定できないタイプ。

誤解されやすい点
「本当の病気」「根が深い」といった印象を与えやすい。

言い換え例
・原因がはっきり分からないタイプ
・生活習慣などが関与すると考えられている

3.一次性・原発性

専門的な意味
他の病気が原因ではなく、それ自体が主な病気である。

誤解されやすい点
「初期」「第一段階」と誤解される。

言い換え例
・それ自体が原因となっているタイプ
・他の病気が原因ではない

4.二次性・続発性

専門的な意味
別の病気や治療、薬剤などが原因で起こる。

誤解されやすい点
「進行した」「悪化した段階」と受け取られる。

言い換え例
・ほかの病気が原因で起きた
・影響を受けて起こった

5.びまん性

専門的な意味
一部ではなく、全体に広がっている状態。

誤解されやすい点
言葉そのものが理解されない。

言い換え例
・全体に広がった
・一か所に限らない

6.限局性

専門的な意味
一定の範囲に限られている。

誤解されやすい点
「限定的=軽い?」と短絡的に解釈される。

言い換え例
・一か所に限られている
・広がっていない

7.良性

専門的な意味
がんではなく、転移しない。

誤解されやすい点
「放っておいていい」「問題ない」と誤解される。

言い換え例
・がんではないタイプ
・命に直接かかわるものではない

8.悪性

専門的な意味
がん性で、進行や転移の可能性がある。

誤解されやすい点
過度な絶望感を与えやすい。

言い換え例
・がんの一種
・治療が必要なタイプ

9.真性

専門的な意味
見かけではなく、病態の本質そのもの。

誤解されやすい点
「本物=重い」と感じさせやすい。

言い換え例
・体の仕組みそのものに原因がある

10.仮性

専門的な意味
見た目は似ているが、原因が異なる。

誤解されやすい点
「ニセ=軽い」と誤解される。

言い換え例
・詰まっているように見えるが原因は別
・機能の問題による

「~性」用語を使うときの実践的ルール

① 最初に日本語で説明し、後から専門用語
「原因がはっきり分からないタイプ(本態性)」のように、説明→用語の順にするだけで理解度は大きく上がります。

② 単独で使わない
「本態性です」「二次性です」と言い切るのではなく、必ず補足説明を添えます。

③ 評価語と誤解されやすい言葉は特に注意
良性・真性・尋常性は、誤解されやすさトップクラスです。

おわりに

「~性」という言葉は、医療者にとっては効率的で正確な表現ですが、一般の人にとっては必ずしも親切な言葉ではありません。

重要なのは、
・専門用語を使わないことではなく
・専門用語を翻訳して伝えること
です。

医療情報を発信する立場にある人こそ、「伝わっているか?」を一歩立ち止まって考える必要があります。「~性」という言葉をどう扱うかは、その姿勢が最もよく表れるポイントの一つと言えるでしょう。

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