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イーフェンバッカル錠とアブストラル舌下錠の違いは?
公開. 更新. 投稿者:痛み/鎮痛薬.この記事は約4分35秒で読めます.
6,670 ビュー. カテゴリ:ROO製剤
突出痛に対して用いられるオピオイド鎮痛薬はレスキュー・ドーズと呼ばれているが、従来の経口速放性オピオイドの効果発現時間は約30分で最大効果は約1時間後とされており、突出痛に対して十分な治療ができていない可能性があった。
モルヒネやオキシコドンの経口速放性製剤は、short acting opioid (SAO)と呼ばれるが、フェンタニル速放性製剤は口腔粘膜や鼻粘膜を介して迅速に吸収されることからrapid onset opioid (ROO)と称され、両者は明確に区別されている。
SAOとROO
SAOの多くは、投与後30分で効果が発現し、投与後1時間で効果が最大となり、数時間効果が持続する。そのため、突出痛が発現してから投与した場合、最も痛みが強いときは効果が薄く、痛みが消失した後になって効果が出始め、眠気などの副作用が発生する可能性がある。
この欠点を補うために開発されたのがフェンタニルの口腔粘膜吸収製剤であり、即効性オピオイド(ROO)と呼ばれている。
ROOは、投与後10~15分で効果が発現し、1~2時間効果が持続するため、突出痛が強いときに十分な効果を発揮し、痛みが消失した後の残存効果が少ない。
バッカル錠と舌下錠
フェンタニルの速放性製剤として、イーフェンバッカル錠とアブストラル舌下錠がありますが、その違い。
バッカル錠と舌下錠、という剤形の違いが一番大きいかな。
バッカル部位という頬と歯茎の間に挟んで使う薬と、舌下で使う薬。
先日イーフェンバッカル錠の勉強会を聞いたのですが、舌下で投与しても効くらしい。
舌下錠のほうをバッカル部位に入れて同じように効くのかは不明。
イーフェンバッカル錠はOraVescentテクノロジーという特殊な製剤技術を使っているらしいし。
OraVescentテクノロジーは、炭酸ガスの発生と段階的なpH調整により、速やかな吸収と高いバイオアベイラビリティを実現した製剤技術です。
口の中に入れてるとシュワシュワと刺激を感じる。舌先でさわると刺激が。
クエン酸も入ってるので、酸味も感じる。
投与間隔
イーフェンバッカル錠とアブストラル舌下錠の添付文書で違う部分を探す。
アブストラルの用法、
通常、成人には1回の突出痛に対して、フェンタニルとして100μgを開始用量として舌下投与する。
用量調節期に、症状に応じて、フェンタニルとして1回100、200、300、400、600、800μgの順に一段階ずつ適宜調節し、至適用量を決定する。なお、用量調節期に1回の突出痛に対してフェンタニルとして1回100~600μgのいずれかの用量で十分な鎮痛効果が得られない場合には、投与から30分後以降に同一用量までの本剤を1回のみ追加投与できる。
至適用量決定後の維持期には、1回の突出痛に対して至適用量を1回投与することとし、1回用量の上限はフェンタニルとして800μgとする。
ただし、用量調節期の追加投与を除き、前回の投与から2時間以上の投与間隔をあけ、1日あたり4回以下の突出痛に対する投与にとどめること。
イーフェンの用法、
通常、成人には1回の突出痛に対して、フェンタニルとして50又は100μgを開始用量とし、上顎臼歯の歯茎と頬の間で溶解させる。
用量調節期に、症状に応じて、フェンタニルとして1回50、100、200、400、600、800μgの順に一段階ずつ適宜調節し、至適用量を決定する。なお、用量調節期に1回の突出痛に対してフェンタニルとして1回50~600μgのいずれかの用量で十分な鎮痛効果が得られない場合には、投与から30分後以降に同一用量までの本剤を1回のみ追加投与できる。
至適用量決定後の維持期には、1回の突出痛に対して至適用量を1回投与することとし、1回用量の上限はフェンタニルとして800μgとする。
ただし、用量調節期の追加投与を除き、前回の投与から4時間以上の投与間隔をあけ、1日当たり4回以下の突出痛に対する投与にとどめること。
アブストラルの投与間隔は2時間で、イーフェンの投与間隔は4時間。
なぜだろう、なぜかしら。
イーフェンのQ&Aには、
Q.投与間隔を4時間あけるのはなぜですか?
海外の添付文書において「4時間以上あけること」と記載されており、国内臨床試験においても本剤の投与間隔を4時間以上あけることを規定し、安全性が確認されています。本剤を4時間未満で投与した場合の安全性に関しては十分なデータが得られていませんので、投与に際しては、投与間隔を4時間以上あけて、次の投与を行って下さい。
とあり、「海外の添付文書に書いてあったから」「その通りに臨床試験したから」という全く納得のいかない答えで。
モルヒネと比べてフェンタニルは呼吸抑制を起こしやすいので、過量投与には注意を要するらしいですが。
あと、イーフェンバッカル錠は15分で効き、アブストラル舌下錠は30分で効くらしい。
製剤上の工夫もあるからか、イーフェンバッカル錠のほうがちょい高めの薬価。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。