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腎臓にやさしいCa拮抗薬
公開. 更新. 投稿者:高血圧.この記事は約5分28秒で読めます.
10,761 ビュー. カテゴリ:L型・T型・N型Caチャネル
アムロジピン(アムロジン/ノルバスク)に比べてシルニジピン(アテレック/シナロング)は腎臓にやさしいという話。
Ca拮抗薬が作用する電位依存性Caチャネルには複数のサブタイプがあるが、アムロジピンがL型Caチャネルに作用するのに対し、シルニジピンはL型とN型のCaチャネルに作用するという違いがある。
L型Caチャネルは輸入細動脈に存在するので、アムロジピンでL型Caチャネルを阻害すると、輸入細動脈が拡張して糸球体内圧が上昇し、糸球体のろ過、負荷増大につながりかねない。
一方、N型Caチャネルは輸出細動脈に存在する。
シルニジピンはL型とN型のCaチャネルを阻害するため、輸入細動脈とともに輸出細動脈も拡張させて糸球体内圧を下げ、糸球体の負荷軽減につながる。
通常のジヒドロピリジン系Ca拮抗薬は、腎輸入細動脈は拡張させるが腎輸出細動脈は拡張させないため、全身血圧が十分に低下しない場合、糸球体高血圧が是正されず糸球体硬化を防ぐことができないと言われている。
しかし、Ca拮抗薬の中には、腎輸入細動脈を拡張させ、なおかつ腎輸出細動脈も拡張させる、いわばACE阻害薬/ARBに似たような作用機序を持つものがある。L/N型Ca拮抗薬であるシルニジピンがそれにあたる。
商品名 | 一般名 | 抑制チャネル |
---|---|---|
アダラート | ニフェジピン | L型 |
アムロジン/ノルバスク | アムロジピン | L型 |
コニール | ベニジピン | L型、T型、N型 |
カルブロック | アゼルニジピン | L型、T型 |
アテレック | シルニジピン | L型、N型 |
ニバジール | ニルバジピン | L型、T型 |
ランデル | エホニジピン | L型、T型 |
ヘルベッサー | ジルチアゼム | L型 |
輸入細動脈と輸出細動脈
腎臓には、糸球体に血液が流れ込む輸入細動脈の血管抵抗を調節する機能が備わっており、全身の血圧が変動しても糸球体内の血圧やろ過量は一定に保たれている。
ところが高血圧によって糸球体の内圧が上昇すると、糸球体を守るために輸入細動脈を収縮させて糸球体への血流を減少させる。
また、血圧上昇によりレニン-アンジオテンシン系が活性化すると輸出細動脈が収縮し、糸球体の過剰ろ過によって蛋白尿が発現したり、腎硬化症を来して腎障害が進行する。
そのため、腎障害合併患者に対する降圧治療では現在、ACE阻害剤とARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤)が日常診療で広く使用されている。
RA系を遮断して輸出細動脈を拡張し、糸球体内圧を低下させる作用があるため。
Ca拮抗薬は輸入細動脈を拡張する作用を持つため、糸球体への血流量が増えて糸球体内圧を上昇させ、腎障害を悪化させることも。
Ca拮抗薬は、腎障害がある場合には第一選択薬としては適さない。
腎障害にCa拮抗薬はダメ?
Ca拮抗薬のL型チャネルに対する作用が輸入細動脈を拡張する作用をもつ。
そのため、糸球体への血流量が増えて糸球体内圧を上昇させ、腎障害を悪化させる可能性があることから、カルシウム拮抗薬は腎障害がある場合には第一選択薬として適さないとされている。
ただし、T型チャネル抑制作用を有するエホニジピンやベニジピンは、輸入細動脈と輸出細動脈を拡張し糸球体内圧を上昇させないことから、腎保護作用が期待できるとされている。
このように、カルシウム拮抗薬はチャネルのタイプへの作用の違いで使い分けられるようになってきている。
Ca拮抗薬の抗酸化作用
Ca拮抗薬には、カルシウム拮抗作用以外にも、ジヒドロピリジン環が酸化されピリジン環になるときに生じる水素がラジカル消去作用をもつことから、抗酸化作用が期待できるとされている。
ランデルは腎臓にやさしい?
Ca拮抗薬の中には、輸入細動脈、輸出細動脈の両方を拡張させて糸球体内圧を低下させる薬がある。
Ca拮抗薬が作用する電位依存性Caチャネルには、L型、T型、N型、P/Q型、R型があり、皮質表層ネフロンや傍髄質ネフロンの輸入細動脈にはL型とT型、輸出細動脈にはT型、N型が存在する。
ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬はこのうちL型チャネルのみを抑制するが、ランデル(エホニジピン)はT型を、アテレック、シナロング(シルニジピン)はN型チャネルを抑制し、輸入細動脈、輸出細動脈の両方を拡張させる。
特にランデルは、アテレック/シナロング以上に糸球体内圧を下げると考えられ、臨床試験において、腎機能の改善が確認されている。
Ca拮抗薬と浮腫
Ca拮抗薬による末梢性の浮腫は比較的よくみられる副作用で、発症には細動脈の血管内圧上昇が関係している。
Ca拮抗薬の降圧効果は、主に血管平滑筋の弛緩による血管拡張作用により得られるが、細静脈の血管拡張作用は強くないため、毛細血管圧が上昇し、血漿が組織間質側により多く移動し、間質に貯留することがある。
Ca拮抗薬による浮腫は、全身の循環血漿量の増加が原因ではないため、フロセミド(ラシックス)のようなループ利尿薬を使用しても改善しにくい。
Caチャネルには、L型、T型、N型などがある。
アムロジピンベシル酸塩(アムロジン、ノルバスク)やニフェジピン(アダラート)は、L型Caチャネルの阻害を主作用として細動脈の拡張効果を示す。
一方、シルニジピン(アテレック)は、L型に加えて、N型Caチャネルも阻害するため細動脈だけでなく細静脈も拡張させる効果があり、機序的に浮腫を起こしにくい可能性が指摘されている。
ただし、シルニジピンでも浮腫を起こす可能性は十分にあり、その場合には、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)など別の降圧薬に変更する必要がある。
また、Ca拮抗薬による末梢性浮腫は、服用開始後、半年以上経過して起こるケースも多い為、長期間服薬しているという理由だけで副作用の可能性が低いと判断しないように注意をしたい。
薬剤性浮腫
薬剤性浮腫を引き起こす可能性がある薬剤は様々ある。
例えば、副腎皮質ステロイドは、鉱質コルチコイド作用により、尿細管からのナトリウム再吸収が亢進し浮腫を来し得る。
糖尿病治療薬のチアゾリジン誘導体や非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)も、腎からのNa・水の排泄低下により浮腫を引き起こすことがある。
またACE阻害薬は、キニナーゼ阻害作用により発作性に血管性浮腫を来し得ることが知られている。
薬剤性浮腫の治療の基本は被疑薬の中止だが、治療の必要性により、薬理作用の異なる薬剤への変更や対症療法が検討されることがある。
Ca拮抗薬
Ca拮抗薬は血管や心筋を収縮させるカルシウムの血管の細胞内への流入を阻止し、カルシウムの作用を抑えて、心臓へ酸素や栄養を供給している冠血管を拡げ、痙攣(スパズム)を抑え、締め付けられるような胸の痛みを改善したり、予防したりする薬です。同時に末梢の血管(動脈)を拡げて血圧を下げ、心臓の負担を少なくするため狭心症にも用いられます。
カルシウムの流入を阻害し血管平滑筋を弛緩、末梢血管抵抗を減じる。
主な薬理作用は、①冠動脈を含む末梢血管拡張作用、②心収縮力の抑制、③刺激伝道系の抑制。
ジヒドロピリジン系は急速・強力降圧型で①が主作用、ベンゾチアゼピン系は緩徐・弱い降圧型で②、③の作用も重要。
ジヒドロピリジン系と非ジヒドロピリジン系(ジルチアゼム、ベラパミル)の薬剤がある。
ジヒドロピリジン系薬は細胞膜の膜電位依存性Caチャネルのジヒドロピリジン(DHP)受容体に結合することによって細胞内へのCa流入を抑制し、冠血管や末梢血管を拡張させる。
一般にジヒドロピリジン系はL型チャネルを遮断することで血管拡張をもたらす。
また、N型チャネル(シルニジピン)、T型チャネル(エホニジピン)を同時に抑制するジヒドロピリジン系薬剤もあり、これらでは頻脈が少なく、腎保護作用も期待されている。
L型ではあるが、徐脈傾向を有するアゼルニジピンや、確実な長時間作用を示すアムロジピンなどもある。
非ジヒドロピリジン系のCa拮抗薬は心抑制作用が強く、冠攣縮性狭心症や頻脈性不整脈を有する高血圧に良い適応がある。
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