2025年6月7日更新.2,491記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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体に良い脂肪と悪い脂肪

体に良い油と悪い油

「油は太るから避けるべき」というイメージが根強くありますが、実際には油の種類によって体への影響は大きく異なります。むしろ、正しい油を選び、適切に摂取することは、生活習慣病の予防やダイエットにも役立ちます。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸

脂肪酸は大きく以下の2種類に分けられます。

飽和脂肪酸:常温で固体。摂りすぎると心疾患リスク増。 バター、ラード、ココナッツオイル
不飽和脂肪酸:常温で液体。適度な摂取で健康効果あり。 オリーブオイル、魚油、ナッツ類

不飽和脂肪酸はさらに構造の違いで、オメガ3系・6系・9系に分類されます。

オメガ3系(n-3):亜麻仁油、青魚(DHA・EPA)
オメガ6系(n-6):大豆油、コーン油
オメガ9系(n-9):オリーブオイル、菜種油

中でもオリーブオイル(n-9系)は酸化しにくく、動脈硬化や糖尿病の予防にも有用とされています。

分類主な脂肪酸代表的な食品特徴
飽和脂肪酸(固形)短鎖酢酸、酪酸酢、バター、チーズエネルギー源となる
中鎖ラウリン酸ココナッツ油、ヒト母乳コレステロールを上げない
長鎖ミリスチン酸ヤシ油、パーム油エネルギー源となる。コレステロール、中性脂肪を増やす
パルミチン酸バター、牛や豚の脂エネルギー源となる。コレステロール、中性脂肪を増やす
ステアリン酸牛や豚の脂、ココアバターエネルギー源となる。コレステロール、中性脂肪を増やす
不飽和脂肪酸(液状)一価不飽和脂肪酸オレイン酸オリーブ油、菜種油、ナッツLDL-C低下作用、循環器疾患リスク低減作用。酸化されにくい
多価不飽和脂肪酸(n-3系)α-リノレン酸しそ油、えごま油、亜麻仁油アレルギー・心血管疾患予防作用
ドコサヘキサエン酸(DHA)まぐろの脂、さんま、いわし、さば、うなぎ、ぶり、あん肝抗血栓作用、脳機能改善作用。酸化されやすい
エイコサペンタエン酸(EPA)まぐろの脂、さば、うなぎ、さけ、ぶり、あん肝抗血栓作用、中性脂肪・LDL-C低下作用。酸化されやすい
多価不飽和脂肪酸(n-6系)リノール酸べにばな油、ひまわり油、綿実油、大豆油、コーン油LDL-C低下作用。過剰摂取でHDL-C低下、アレルギーの恐れ
γ-リノレン酸ヒト母乳、月見草油、にしん血糖・血圧・コレステロール低下
アラキドン酸レバー、卵白、さざえ胎児・乳児の正常な発育に必要

飽和脂肪酸は悪者か?

飽和脂肪酸は「体に悪い油」と思われがちですが、完全に排除すべきではありません。細胞膜やホルモンの材料として重要な役割を持っており、摂りすぎに注意することが重要です。

理想的な摂取バランスとしては、
飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸 = 3:4:3
が推奨されています。

中鎖脂肪酸(MCT)|体脂肪を減らす「やせる油」?

ココナッツオイルやMCTオイルに含まれる「中鎖脂肪酸」は、長鎖脂肪酸と比べて分子量が小さく、素早く消化・吸収されエネルギーとして使われやすい特徴があります。

・MCTは膵酵素や胆汁酸を必要とせず、門脈を通じて直接肝臓へ運ばれる
・脂肪として蓄積されにくく、体脂肪を減らす効果も期待される
・母乳にも含まれ、体温保持や免疫などにも関与

近年では、認知症やてんかんへの効果も注目されており、ケトン体産生を促すエネルギー源として医療・栄養分野で研究が進んでいます。

オリーブオイルは「最も優秀な油」

特にエクストラバージンオリーブオイルは、ポリフェノールやオレウロペインなどの抗酸化成分が豊富で、以下のような健康効果が期待されています。

・食後血糖値の上昇抑制(炭水化物の消化吸収を遅らせる)
・LDL(悪玉)コレステロールを減らし、HDL(善玉)を増やす
・血管の傷みを防ぎ、動脈硬化の予防に寄与

ただし、1gあたり9kcalと高カロリーなので、使用量は控えめにして他の炭水化物の摂取を調整することが必要です。

トランス脂肪酸|体に悪い油の代表

トランス脂肪酸は、植物油を加工(硬化)する際に人工的に生成される脂肪酸です。以下の特徴があります。

・常温で固体化するため加工食品に使用されやすい(マーガリン、ショートニング、菓子、パン)
・LDLコレステロール↑・HDLコレステロール↓ → 動脈硬化・心疾患リスク増加

WHOは2003年、「トランス脂肪酸は総エネルギー摂取の1%未満に抑えるべき」と勧告。米国などでは表示義務や規制も行われています。

日本では平均摂取量が少ないとされるものの、加工食品を多く摂る人は注意が必要です。

「油を避ける」から「油を選ぶ」時代へ

健康的な油の摂取は、以下のように「選び方」と「バランス」がカギとなります。

● 避けたい油
トランス脂肪酸(マーガリン、加工菓子)
過剰な飽和脂肪酸(バター、ラード)

● 取り入れたい油
オリーブオイル(エクストラバージン)
魚油(DHA、EPAなどのn-3系脂肪酸)
MCT(中鎖脂肪酸)オイル

● 気をつけたいポイント
「良い油」でも摂りすぎれば体脂肪の原因に
脂肪酸のバランスに配慮(飽和:一価:多価 = 3:4:3)
食品全体のカロリーバランスを意識する

脂質=悪ではなく、脂質=選び方で健康に貢献するものです。食事の中で油の質に注目することで、肥満や生活習慣病のリスクを下げ、健やかな体づくりに役立てましょう。

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