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アスピリン喘息に使えるNSAIDsはある?
公開. 更新. 投稿者:痛み/鎮痛薬.この記事は約6分43秒で読めます.
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アスピリン喘息に使える解熱鎮痛剤は?
アスピリン喘息には、アスピリンだけでなく他の酸性非ステロイド性消炎鎮痛剤にも60~100%の交差過敏性を有するので、どのNSAIDsにも注意が必要です。
100%安全なNSAIDsはなく、原疾患の治療に最善を尽くすしかありません。
比較的安全に使えると思われるアセトアミノフェンや塩基性解熱鎮痛剤であるソランタールなどでも、禁忌項目にアスピリン喘息と書かれており完全に否定することはできません。
アスピリン喘息に対しては、アスピリンだけでなく、ほぼ全てのNSAIDsが禁忌である。
そのため、解熱が必要な場合には、原則として氷冷で対応するか、禁忌ではあるもののアセトアミノフェン(300㎎/回以下)の使用が考慮される。
漢方薬の葛根湯や生薬の地竜などは安全に使用できる。
鎮痛目的では、アセトアミノフェンのほかセレコキシブ、COX2選択性の高いエトドラクやメロキシカム、塩基性NSAIDsのチアラミド塩酸塩、エピリゾール、エモルファゾンは安全性が高いとされる。
ただし、エモルファゾンを除き、添付文書上は禁忌である。
重篤副作用疾患別対応マニュアル(非ステロイド性抗炎症薬[NSAIDs、解熱鎮痛薬]によるじんま疹/血管性浮腫)には以下のように記載されている。
トラマドール塩酸塩も安全に位置付けられる。
アセトアミノフェンなら使える?
アセトアミノフェン(カロナール他)も添付文書上では禁忌だが、cox阻害作用が弱いため、アスピリン喘息患者にも使用されることがある。
ただし、l000mgを超える高用量では喘息を誘発した報告もあるので、注意は必要である。
成人喘息の10%はアスピリン喘息
アスピリン喘息は、成人喘息の10%に合併し、投与することで喘息死を招くこともあるため、過敏の既往がなくても、喘息の患者へのNSAIDs投与には十分な注意が必要です。
アセトアミノフェンで喘息になる?
1歳までに発熱時にアセトアミノフェンを使ったことのある子どもは、使わなかった子どもに比べ、喘息で1.46倍、湿疹で1.35倍、鼻炎・結膜炎で1.48倍多かったそうです。
これはアセトアミノフェンを使ったからアレルギー体質になったのか?もともとアレルギー体質だから風邪にかかりやすく、アセトアミノフェンが処方されたのかがわかりません。
アセトアミノフェンを使った子どもがイブプロフェンを使った子どもに比べて喘息リスクが高かったのであれば、イブプロフェンを第一選択薬にすべきかも知れません。
塩基性NSAIDsなら使える?
COXを阻害しない塩基性NSAIDsはアスピリン喘息に使っても問題ないと言われていました。
しかし、塩基性NSAIDsであるソランタールに、アスピリン喘息で負荷陽性の報告があったため、平成6年の再評価時に投与禁忌の追加記載がなされました。
ただし、塩基性NSAIDsのなかでもエモルファゾン(商品名:ペントイル)はアスピリン喘息に禁忌となっていません。
アスピリン喘息にはペントイルを使うといいんですね。
弱いので使わないと思いますが。
ペントイル(エモルファゾン)は解離しないため酸性、塩基性の判定ができないらしい。
そのため、エモルファゾンは酸性抗炎症薬、塩基性抗炎症薬のいずれにも属さず、学会では「非酸性鎮痛消炎薬」と名付けています。
「今日の治療薬」などの本では塩基性に分類されています。
アスピリン喘息と風邪薬
アスピリン喘息は、解熱鎮痛薬喘息ともいいます。
アスピリンで喘息の発作があった人は、高い確率で他の非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)で重篤な喘息発作が出現することがあり、死亡例も報告されています。
したがって、かぜ薬には解熱鎮痛薬が必ず配合されているので、かぜ薬の販売時に「お薬で喘息やアレルギーがありましたか」とひとこと尋ねることが、薬害の防止になります。
葛根湯がお勧めです(アセトアミノフェンも比較的安全ですが、万全ではありません)。
アスピリン喘息の機序
アスピリン喘息は、主にシクロオキシゲナーゼ1(COX1)阻害作用を持つ非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)により、強い気道症状を呈する非アレルギー性の過敏症である。
同症は、成人で気管支喘息を発症後、NSAIDsへの過敏性を獲得することが多い。
成人喘息の5~10%を占めるとされるが、小児ではまれである。大半は20~40代で発症し、重症喘息である場合が多い。
アスピリン喘息には、NSAIDsのシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害作用が関与していると考えられている。
COXは、アラキドン酸からプロスタグランジン(PG)が合成される過程に作用する酵素であり、NSAIDsはこのcoxを阻害することで炎症性のPG産生を抑制し、抗炎症作用や鎮痛作用を発揮する。
しかし一方で、気道に恒常的に存在し気管支平滑筋を弛緩させる作用のあるプロスタグランジンE2(PGE2)もNSAIDsによって産生が抑制されるため、喘息症状の悪化が起きやすくなると推測されている。
またPGE2には、気管支収縮作用を持つロイコトリエンの産生を抑制する作用があるため、NSAIDsによってPGE2の産生が抑制され、ロイコトリエンの作用が相対的に増強されることも分かっている。
アスピリン喘息の患者がNSAIDsを使用すると、通常1時間以内に、鼻閉・鼻汁などの上気道症状や強い喘息発作が出現する。
顔面紅潮や結膜充血、腹痛や嘔気、下痢などの消化器症状を伴うこともある。
剤形別にみると、注射薬≒坐薬>内服薬>貼付薬≒塗布薬の順に症状が早く出現し、重篤な傾向にある。点眼薬も原因となり得る。
アスピリン喘息患者における発熱疼痛時の対応
NSAIDs誘発閾値は、常用量の1/5~1/10程度のため、少量のNSAIDsでも十分な注意を要する。(NSAIDsの注射薬、坐薬、内服薬のみならず、NSAIDsを含んだ貼付薬、塗布薬、点眼薬も禁忌と考える)
【アスピリン喘息に対し使用可能な薬剤】
⑴多くの症例で投与可能である(ただし喘息症状が不安定なケースで発作が生じることがある)
①PL顆粒
②アセトアミノフェン1回300㎎以下
③NSAIDsを含まずサリチル酸を主成分とした湿布
④選択性の高いCOX2阻害薬 エトドラク、メロキシカム(高用量でCOX1阻害あり)
⑤選択的COX2阻害薬(セレコキシブ、ただし重症不安定例で悪化の報告あり)
⑥塩基性消炎薬(チアラミド塩酸塩など、ただし重症不安定例で悪化の報告あり)
添付文書ではアスピリン喘息において禁忌とされている薬剤は多いが、禁忌とされた薬剤でも医学的根拠に乏しい場合もある。
⑵喘息の悪化は認めないとされている(COX1阻害作用なし)
モルフィン、ペンタゾシン、非エステル型ステロイド薬(内服ステロイド薬)、漢方薬(地竜、葛根湯など)、その他、鎮痙薬、抗菌薬、局所麻酔薬など、添加物のない一般薬はすべて使用可能。
喘息発症後のアスピリン喘息
例えば、何年か前にロキソニンなどのNSAIDsを飲んで大丈夫だったら、「アスピリン喘息ではない」と言い切れる、かと言ったら、そうでもないらしい。
1年くらい前ならまだしも、数年前となると、体質が変わってアスピリン喘息になっている可能性もあるのだという。
もし、喘息患者にNSAIDsが出ていたら、注意する必要がある。
成人喘息患者にNSAIDsが処方された場合、アスピリン喘息の可能性を念頭に置き、NSAIDs使用の可否を慎重に見極める必要がある。
具体的には、喘息発症後のNSAIDsの使用歴と副反応の有無を参考にする。
喘息発症後もNSAIDsを問題なく使用できていれば、アスピリン喘息の可能性はほぼ否定できる。
なお、NSAIDsへの過敏性は後天的なものであるため、喘息発症前のNSAIDs使用歴は参考にならない。
また、アセトアミノフェンや、選択的COX2阻害薬のセレコックスなどは発作誘発作用が弱く、喘息発症後に問題なく使用できていても、アスピリン喘息は否定できない。
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