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リバビリンは溶血性貧血を起こしやすい?
公開. 更新. 投稿者: 53 ビュー. カテゴリ:肝炎/膵炎/胆道疾患.この記事は約4分40秒で読めます.
目次
リバビリンによる溶血性貧血― なぜ「血液系の副作用」が問題になるのか

C型肝炎治療薬として長年使われてきたリバビリン(商品名:レベトールカプセル)。
現在はDAA(直接作用型抗ウイルス薬)が主流となり、使用機会は減ったものの、一部の症例では今も重要な薬です。
その一方で、リバビリンと聞いて多くの医療従事者が思い浮かべる副作用があります。
それが 「溶血性貧血」 です。
・なぜリバビリンは貧血を起こしやすいのか
・なぜ「溶血性」なのか
・他の薬の貧血と何が違うのか
本記事では、薬理学的な理由から臨床での注意点までを勉強していきます。
まず結論:リバビリンは溶血性貧血を起こしやすい
結論から言うと、
・リバビリンは、薬剤の中でも特に溶血性貧血を起こしやすい薬の一つ
です。
これは偶然でも体質だけの問題でもなく、薬の性質そのものに原因があります。
しかもこの貧血は
・骨髄抑制ではなく
・鉄欠乏性貧血でもなく
・「赤血球が壊れることで起こる貧血」
つまり 溶血性貧血 という点が非常に重要です。
溶血性貧血とは何か?
● 貧血には種類がある
一口に「貧血」と言っても、原因はさまざまです。
| 種類 | 主な原因 |
|---|---|
| 鉄欠乏性貧血 | 鉄不足 |
| 再生不良性貧血 | 骨髄の造血低下 |
| 巨赤芽球性貧血 | ビタミンB12・葉酸欠乏 |
| 溶血性貧血 | 赤血球が早く壊れる |
リバビリンが問題になるのは、最後の溶血性貧血です。
なぜリバビリンは「溶血性」なのか?
ポイントは「赤血球にたまる」という特異な性質
リバビリンはヌクレオシド類似体という構造を持つ抗ウイルス薬です。
体内に入ると、多くの細胞でリン酸化され、活性を示します。
ここで重要なのが 赤血球の特殊性 です。
赤血球は「修復できない細胞」
赤血球には、他の細胞と決定的に違う特徴があります。
・核がない
・ミトコンドリアがない
・新しいタンパクを作れない
つまり赤血球は、
・ダメージを受けたら修復できない細胞
なのです。
リバビリンは赤血球内に閉じ込められる
リバビリンは赤血球内に入るとリン酸化されます。
しかし赤血球には、
・リン酸化体を脱リン酸化する能力
・薬剤を能動的に排出する機構
がほとんどありません。
その結果、
・赤血球内にリバビリンが蓄積してしまう
という現象が起こります。
蓄積 → 酸化ストレス → 赤血球膜障害
赤血球内に蓄積したリバビリンは、次第に酸化ストレスを増大させます。
・赤血球膜の脂質が酸化される
・膜の柔軟性が失われる
・変形しにくくなる
するとどうなるか。
脾臓で「壊される赤血球」
硬くなった赤血球は、脾臓の細い血管を通過できません。
結果として、
脾臓で早期に破壊される(=溶血)
ことになります。
これが
リバビリンによる溶血性貧血の正体です。
骨髄抑制ではない点が重要
抗がん剤や一部の抗ウイルス薬では、
「骨髄抑制による貧血」が問題になります。
しかしリバビリンでは、
・骨髄は正常
・赤血球は作られている
にもかかわらず、末梢で壊されるのです。
そのため、
・網赤血球増加
・LDH上昇
・間接ビリルビン上昇
といった溶血の所見がみられることもあります。
なぜ投与初期に貧血が出やすい?
臨床では、
・投与開始後2〜4週
・比較的早期にHb低下
が起こることが多いです。
これは、
・赤血球寿命(約120日)
・蓄積が一定量を超えるまでの時間
が関係しています。
なぜ回復が遅いのか?
リバビリンによる貧血は、
・減量しても
・中止しても
すぐには改善しないことがあります。
理由は単純で、
すでに赤血球内に入ったリバビリンは、赤血球が寿命を迎えるまで残る
からです。
腎機能低下患者で特に注意が必要
リバビリンは主に腎排泄されます。
そのため、
・腎機能低下
・高齢者
では血中濃度が上がりやすく、
結果として赤血球内蓄積も増えるため、
・溶血性貧血のリスクが高くなる
と考えられています。
心疾患患者では「危険な貧血」になりうる
Hb低下そのものより問題になるのが、
・心筋虚血
・心不全悪化
です。
軽度の貧血でも、心疾患のある患者では
症状悪化の引き金になることがあります。
なぜリバビリンは今も使われるのか?
副作用が強いにもかかわらず、リバビリンは、
・特定のウイルス型
・再治療症例
・難治例
で、DAAと併用されることがあります。
これは、
・ウイルス排除率を上げる力が非常に強い
という、リバビリン独自の利点があるためです。
薬剤師が押さえておきたいポイント
・貧血は想定内の副作用
・早期からHbモニタリングが重要
・骨髄抑制と混同しない
・腎機能・心疾患の確認
これらを理解しているかどうかで、
服薬指導の質は大きく変わります。
まとめ
・リバビリンは溶血性貧血を起こしやすい薬
・原因は赤血球内蓄積と酸化ストレス
・骨髄抑制ではない点が最大の特徴
・腎機能・心疾患患者では特に注意
「なぜこの薬だけ貧血が多いのか?」
その理由を理解すると、副作用説明や疑義照会が一段深くなるはずです。




