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生ワクチンと併用しちゃいけない薬は?
公開. 更新. 投稿者:抗菌薬/感染症.この記事は約4分36秒で読めます.
2,094 ビュー. カテゴリ:生ワクチン接種時の免疫抑制剤の使用
ワクチン接種時に免疫抑制剤を使うと「感染しちゃうんじゃないの?」と思う。
感染力のある生ワクチンの場合、免疫抑制剤の使用により感染症発現のリスクはある。
しかし、インフルエンザワクチンなどの感染力の無いワクチン接種時に免疫抑制剤を使っていると、逆に免疫力が上がらずに、ワクチンの効果が期待できないというデメリットがある。
ステロイドを使っている患者でインフルエンザの予防接種を受けるという患者はよくいるが、十分な効果が得られない可能性は否めない。
しかしまあ、それは不利益を被る可能性があるというレベルなので、注意すべきは免疫抑制剤使用時の生ワクチンの接種である。
免疫抑制剤で、禁忌に「生ワクチン」あるいは、重要な基本的注意に「生ワクチン接種は行わないこと」とある薬は以下のものがある。
医薬品名 | 添付文書の記載 |
---|---|
アクテムラ皮下注シリンジ/オートインジェクター | 本剤投与中は、生ワクチン接種により感染するおそれがあるので、生ワクチン接種は行わないこと。 |
アザニン錠/イムラン錠 | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと |
アドトラーザ皮下注シリンジ/ペン | 本剤投与中の生ワクチンの接種は、安全性が確認されていないので避けること。 |
アフィニトール分散錠/錠 | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと |
アラバ錠 | 本剤投与中の生ワクチンの接種は、安全性が確認されていないので避けること。また、本剤の投与中止後に生ワクチンを接種する場合も、本剤の体内からの消失が遅いことを考慮すること。 |
イブグリース皮下注オートインジェクター /シリンジ | 本剤投与中の生ワクチンの接種は、安全性が確認されていないので避けること。 |
イムセラカプセル | 生ワクチンを接種しないこと。 |
イラリス皮下注射液 | 本剤投与中は、生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、生ワクチン接種は行わないこと。本剤投与前に、必要なワクチンを接種しておくことが望ましい。 |
イルミア皮下注シリンジ | 本剤投与中は、生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、生ワクチン接種は行わないこと。 |
エンブレル皮下注ペン/シリンジ/クリックワイズ用 | 本剤投与中は、生ワクチン接種により感染するおそれがあるので、生ワクチン接種は行わないこと。 |
オルミエント錠 | 感染症発現のリスクを否定できないので、本剤投与中の生ワクチン接種は行わないこと。 |
オレンシア皮下注シリンジ/オートインジェクター | 本剤投与中及び投与中止後3ヵ月間は,生ワクチン接種により感染する潜在的リスクがあるので,生ワクチン接種を行わないこと。また,一般に本剤を含む免疫系に影響を及ぼす薬剤は,予防接種の効果を低下させる可能性がある。 |
オンボー皮下注オートインジェクター/シリンジ | 生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、本剤投与中は生ワクチン接種を行わないこと。 |
グラセプターカプセル | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと |
ケブザラ皮下注シリンジ/オートインジェクター | 本剤投与中は、生ワクチン接種により感染するおそれがあるので、生ワクチン接種は行わないこと。 |
コートリル錠 | 禁忌:免疫抑制が生じる量の本剤を投与中の患者には生ワクチン又は弱毒生ワクチンを接種しないこと |
コートン錠 | 本剤の長期あるいは大量投与中の患者、又は投与中止後6ヵ月以内の患者では、免疫機能が低下していることがあり、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、これらの患者には生ワクチンを接種しないこと。 |
コセンティクス皮下注ペン/シリンジ | 本剤投与中は、生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、生ワクチン接種は行わないこと。 |
コレチメント錠 | 免疫抑制状態の患者では、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、本剤投与中の患者に生ワクチンを接種する場合、免疫機能を検査の上、十分な注意を払うこと。 |
サーティカン錠 | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと |
サイバインコ錠 | 感染症発現のリスクを否定できないので、本剤開始直前及び投与中の生ワクチンの接種は行わないこと。 |
サンディミュン内用液 | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと |
ジセレカ錠 | 感染症発現のリスクを否定できないので、本剤開始直前及び投与中の生ワクチン接種は行わないこと。 |
シムジア皮下注シリンジ/シオートクリックス | 本剤投与において、生ワクチンの接種に起因する感染症を発現したとの報告はないが、感染症発現のリスクを否定できないので、生ワクチン接種は行わないこと。 |
ジレニアカプセル | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと。 |
シンポニー皮下注シリンジ/オートインジェクター | 本剤投与中は、感染症発現のリスクを否定できないので、生ワクチン接種は行わないこと。 |
スキリージ皮下注シリンジ/オートドーザー | 本剤投与中は、生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、生ワクチン接種は行わないこと。 |
ステラーラ皮下注シリンジ | 生ワクチン接種に起因する感染症発現の可能性を否定できないので、本剤による治療中は、生ワクチンを接種しないこと。 |
ステロネマ注腸 | 本剤の長期あるいは大量投与中の患者、又は投与中止後6ヵ月以内の患者では、免疫機能が低下していることがあり、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、これらの患者には生ワクチンを接種しないこと。 |
スマイラフ錠 | 感染症発現のリスクを否定できないので、本剤投与中の生ワクチン接種は行わないこと。 |
ゼポジアカプセル | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと |
セルセプトカプセル/懸濁用散 | 禁忌:本剤投与中は生ワクチンを接種しないこと |
ゼルヤンツ錠 | 感染症発現のリスクを否定できないので、本剤投与中の生ワクチン接種は行わないこと。 |
ソーティクツ錠 | 本剤投与中は生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、生ワクチン接種を行わないこと。 |
デカドロンエリキシル | 本剤の長期あるいは大量投与中の患者、又は投与中止後6ヵ月以内の患者では、免疫機能が低下していることがあり、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、これらの患者には生ワクチンを接種しないこと。 |
デカドロン錠 | 本剤の長期あるいは大量投与中の患者、又は投与中止後6ヵ月以内の患者では、免疫機能が低下していることがあり、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、これらの患者には生ワクチンを接種しないこと。 |
テゼスパイア皮下注シリンジ/ペン | 本剤投与中の生ワクチンの接種は、安全性が確認されていないので避けること。 |
デュピクセント皮下注ペン/シリンジ | 本剤投与中の生ワクチンの接種は、安全性が確認されていないので避けること。 |
トルツ皮下注オートインジェクター/シリンジ | 本剤投与中は、生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、生ワクチン接種は行わないこと。 |
トレムフィア皮下注シリンジ | 本剤投与中は、生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、生ワクチン接種は行わないこと。 |
ナノゾラ皮下注シリンジ/オートインジェクター | 本剤投与において、生ワクチンの接種に起因する感染症を発現したとの報告はないが、感染症発現のリスクを否定できないので、生ワクチン接種は行わないこと。 |
ネオーラル内用液/カプセル | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと |
ヒュミラ皮下注シリンジ/ペン | 本剤投与において、生ワクチンの接種に起因する感染症を発現したとの報告はないが、感染症発現のリスクを否定できないので、生ワクチン接種は行わないこと。 |
ビンゼレックス皮下注シリンジ/オートインジェクター | 本剤投与中は、生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、生ワクチン接種は行わないこと。 |
ブレディニン錠 | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと |
プレドニン錠 | 本剤の長期あるいは大量投与中の患者、又は投与中止後6ヵ月以内の患者では、免疫機能が低下していることがあり、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、これらの患者には生ワクチンを接種しないこと。 |
プレドネマ注腸 | 本剤の長期あるいは大量投与中の患者、又は投与中止後6ヵ月以内の患者では、免疫機能が低下していることがあり、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、これらの患者には生ワクチンを接種しないこと。 |
プログラフカプセル/顆粒 | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと |
ベンリスタ皮下注オートインジェクター/シリンジ | 本剤投与中は、生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、生ワクチン接種は行わないこと。 |
メーゼント錠 | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと。 |
メドロール錠 | 禁忌:免疫抑制が生じる量の本剤を投与中の患者には生ワクチン又は弱毒生ワクチンを接種しないこと |
ラパリムス錠/顆粒 | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと |
リウマトレックスカプセル | 免疫機能が抑制された患者への生ワクチン接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、本剤投与中に生ワクチンを接種しないこと。 |
リットフーロカプセル | 感染症発現のリスクを否定できないので、本剤開始直前及び投与中の生ワクチンの接種は行わないこと。 |
リンヴォック錠 | 感染症発現のリスクを否定できないので、本剤開始直前及び投与中の生ワクチン接種は行わないこと。 |
リンデロン坐剤 | 本剤の長期あるいは大量投与中の患者、又は投与中止後6ヵ月以内の患者では、免疫機能が低下していることがあり、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、これらの患者には生ワクチンを接種しないこと。 |
リンデロン錠/散/シロップ | 本剤の長期あるいは大量投与中の患者、又は投与中止後6ヵ月以内の患者では、免疫機能が低下していることがあり、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、これらの患者には生ワクチンを接種しないこと。 |
ルプキネスカプセル | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと。 |
ルミセフ皮下注シリンジ | 本剤投与中は生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、生ワクチン接種を行わないこと。 |
レダコート錠 | 本剤の長期あるいは大量投与中の患者、又は投与中止後6ヵ月以内の患者では、免疫機能が低下していることがあり、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、これらの患者には生ワクチンを接種しないこと。 |
レナデックス錠 | 本剤投与中の患者、又は投与中止後6ヵ月以内の患者では、免疫機能が低下していることがあり、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、これらの患者には生ワクチンを接種しないこと。 |
ロイケリン散 | 禁忌:生ワクチンを接種しないこと |
ワクチンは生ワクチン、不活性化ワクチン、トキソイドに分類されます。
①生ワクチン
免疫のない人に病原性を弱めたウイルスや細菌を接種して、人工的に感染を起こします。
接種後に得られる免疫は強固で、自然感染後に得られる免疫と同等の強さです。
麻疹、風疹、麻疹・風疹混合、おたふくかぜ、水痘、黄熱、BCG
②不活性化ワクチン
ウイルスや最近を精製・処理し、病原性・毒性を消失させ、無毒化させたものです。
日本脳炎、インフルエンザ、狂犬病、B型肝炎、A型肝炎、三種混合DPT(ジフテリア、百日咳、破傷風)、コレラ、肺炎球菌、ワイル病、秋やみ、新型コロナ、ポリオ(2012年9月から)
③トキソイド
ジフテリア菌や破傷風菌などの毒素産生能力が高い菌の毒素を精製し、無毒化したものです。
ジフテリア、破傷風、DT(ジフテリア・破傷風)混合
妊婦とワクチン
一般に生ワクチンは胎児への影響を考慮して、全妊娠期間を通じて接種は行いません。
特にMRワクチンと風疹ワクチンは絶対に妊娠していない時を選んで接種し、接種後2ヶ月の避妊が必要とされています。
一般に生ワクチンは、弱毒ウイルスによって人工的に感染が引き起こされ、ウイルスが胎盤を通過し、胎児にウィルスが移行する危険があるため、原則としては禁忌と考えられています。
胎児への影響としてよく知られているものに、妊娠初期における風疹ウイルス感染による先天性風疹症候群が挙げられますが、風疹ワクチンを接種することにより、これらが起こることは立証されていませんし、現段階では報告されていません。
しかし、それらのウイルスに罹患する危険性の高い場合ではウィルスに罹患することで胎児あるいは妊婦が被ると考えられるリスクと、ワクチンを接種することにより生じるリスク及び利益を考慮して、妊婦へのワクチン接種が決定される必要があります。
インフルエンザワクチンなどの不活性化ワクチンは妊娠中でも接種して安全と考えられています。
なお、不活化ワクチンやトキソイドの接種が胎児に影響を与えることは考えられていません。
授乳に関しては、ワクチン接種による授乳中止の必要はないと考えられています。
妊婦と水痘ワクチン
妊婦への接種は禁忌。
妊娠可能な女性は避妊後に接種し、その後も2ヶ月間、妊娠しないように注意する必要があります。
妊婦とインフルエンザワクチン
インフルエンザワクチンは不活性化ワクチンであるため、強い全身反応が生じない限り、母体と胎児に異常が出る確率が高くなったというデータは報告されていません。
逆に妊娠期間中にインフルエンザ感染症による自然流産の発生率が高まることがあります。
また妊婦がインフルエンザウイルスに感染した場合、非妊婦に比べて重篤な症状になるという報告もあることから、米国では、妊娠期間がインフルエンザシーズンと重なる女性は、インフルエンザシーズン前にワクチン接種を行うのが望ましいとされています。
インフルエンザワクチンはウイルスの病原性をなくした不活化ワクチンであり、胎児に影響を与えるとは考えられていないので、妊婦は接種不適当者には含まれていません。
添付文書には、「妊娠中の接種に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種すること。なお、小規模ながら、接種により先天異常の発生率は自然発生率より高くならないとする報告がある。」と記載されています。
「産婦人科診療ガイドライン」では、妊婦はインフルエンザに罹患すると重篤な合併症を起こしやすいことから、妊婦がインフルエンザワクチンの接種を希望する場合は接種してよいとなっています。
現在までのところ、妊娠中にインフルエンザワクチンの接種を受けたことで、流産や先天異常の発生頻度が高くなったという報告はありません。
よって、妊婦自身が希望し、主治医が接種の必要性を判断した場合は、接種することが可能です。
また、授乳婦に対しては、インフルエンザワクチンに限らず、全てのワクチンの接種が可能です。

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