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メリロートエキスとは?足のむくみサプリの成分
公開. 更新. 投稿者:健康食品/OTC.この記事は約5分56秒で読めます.
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メリロートエキスとは?足のむくみサプリの成分

夕方になると足がパンパンにむくんでしまう、という悩みを抱える女性は少なくありません。そんな中、ドラッグストアや通販サイトで「足のむくみに」として人気なのが「メリロートエキス」を含むサプリメントです。このメリロートエキスについて、その成分、効果、安全性、医薬品との違いなどを勉強します。
メリロートとはどんな植物?
メリロート(Melilotus officinalis)はマメ科の多年草で、日本ではスイートクローバー、またはセイヨウエビラハギとも呼ばれます。原産はヨーロッパやアジアの温帯地域で、家畜用の牧草としても利用されてきました。黄色の小さな花を咲かせるこの植物には独特の香り成分が含まれており、乾燥させると甘い香りを放ちます。
このメリロートの葉や茎から抽出・濃縮した成分が「メリロートエキス」です。
なぜ足のむくみに使われるのか?
メリロートエキスには、主に以下のような成分が含まれています。
・クマリン類
・フラボノイド類
・サポニン類
これらの成分には、血管透過性を抑制したり、血流を促進したり、リンパの流れを改善したりする作用があるとされています。特にクマリンは、血流促進・血栓防止作用があると考えられており、これが「むくみ軽減」のイメージにつながっています。
実際、欧州では慢性静脈不全(下肢の静脈のうっ滞や血流障害)に対する医薬品成分として使用されており、科学的な研究も一部存在します。
かつて医薬品だった「タカベンス錠」とは?
日本でもかつては医薬品成分として承認され、「タカベンス錠」という製品名で販売されていました。タカベンス錠は、痔核(いぼ痔)や手術後の軟部組織の腫脹(腫れ)を改善する目的で使用されており、「むくみ」目的の薬ではありませんでした。しかし、医療現場での使用頻度は低下し、現在では販売中止となっています。
現在のメリロートエキスは「サプリメント」扱い
現在市販されているメリロート配合製品の多くは、健康食品・サプリメントとして販売されています。パッケージデザインや宣伝文句を見ると、「長時間のデスクワークで足がだるくなる方に」「夕方の脚のパンパン対策に」と、むくみに悩む働く女性層をターゲットにしていることが多いのが特徴です。
医薬品とサプリの大きな違い
同じメリロート成分であっても、医薬品とサプリメントでは大きな違いがあります。
【医薬品】
・含有成分量が厳密に規格化されている
・クマリン量に上限設定がある(日本薬局方外規格:クマリン 0.4〜4.0mg/日)
・臨床試験に基づく安全性・有効性データがある
【サプリメント(健康食品)】
・成分量や品質は製品ごとにばらつきが大きい
・品質規制が緩く、表示された含有量と実際が異なる可能性も
・クマリン量が極端に少ない製品もあれば、医薬品の上限を超えて含まれているものもある
実際、日本での調査報告によると、健康食品のメリロート製品では、1日あたりのクマリン量が0.03〜19.7mgと非常に幅が広かったことがわかっています。
クマリンの過剰摂取による副作用リスク
クマリンは過剰摂取すると副作用リスクが指摘されています。報告されている副作用には以下があります。
・肝障害(特に長期高用量摂取)
・知覚麻痺
・発疹
・悪心・嘔吐
・腹痛
・心悸亢進(動悸)
実際に、20代女性がメリロートエキス配合サプリメントを約4か月間使用し、肝障害を発症した事例も報告されています。特に市販サプリはクマリン量が規制されていないため、知らずに過剰摂取になっているケースもあります。
薬との飲み合わせにも注意
メリロートエキスは以下の薬と併用することで相互作用のリスクが報告されています。
・ワルファリンなどの抗凝固薬 → 出血リスク増加
・アスピリンなどの抗血小板薬 → 出血リスク増加
・インターフェロン → 重篤な肝障害の事例報告あり
サプリメントだからと安易に併用せず、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
「脚やせ」「ダイエット」目的のイメージ戦略
一時期、メリロートは「脚のむくみが取れる=足が細くなる=ダイエットにもよい」という連想で販売されていたこともありました。現在は「ダイエットサプリ」という直接的表現は控えられ、「脚のスッキリ感」「パンパン対策」という間接表現が多く用いられています。消費者庁も機能性表示食品の審査で体重・脂肪減少に関する表示は厳しく規制しており、安易なダイエット目的の訴求はできなくなっています。
その他のハーブ系OTC医薬品との比較
メリロート以外にも、過去にむくみや血流改善をうたうハーブ系医薬品が市販されていました。代表的なのが「アンチスタックス」と「ベルフェミン」です。
・アンチスタックス(販売終了)
ブドウ葉乾燥エキス(赤ブドウ葉抽出物)を成分としたOTC医薬品で、ヨーロッパでは慢性静脈不全の改善に用いられていました。日本でも市販薬として販売された時期がありましたが、現在は販売終了となっています。
・ベルフェミン(現在も販売中)
セイヨウトチノキ(マロニエ)由来の成分であるエスシン(サポニン類)を含むOTC医薬品です。足のむくみ、だるさ、血行促進などを目的としてドラッグストア等で購入できます。植物由来成分ですが、一定の用量管理や副作用情報もまとめられており、比較的長く市販が継続しています。
こうしたハーブ系製剤は、西洋ハーブの薬用利用の文化を背景に生まれていますが、日本では薬機法上の位置づけや規制が異なり、医薬品から健康食品への移行が進んだ製品も多い状況です。
メリロートエキスは本当に効くのか?
慢性静脈不全に対する欧州の医薬品データは存在しますが、むくみに対する効果の確実性は必ずしも強く証明されているわけではありません。少なくとも、日常の軽い足のむくみ(長時間立ちっぱなし、デスクワークなどによるむくみ)に対しては、生活習慣の改善(適度な運動、ストレッチ、弾性ストッキングなど)のほうが確実です。
サプリメントを補助的に使うのは良いとしても、あくまで体調管理の一環と考えましょう。
■メリロートを含むサプリを使うときの注意点
・過剰摂取は絶対に避ける
・長期連用は控える(特に肝機能障害の既往がある人)
・薬との併用は医師・薬剤師に必ず相談
・妊娠中・授乳中の使用は避ける
・「効き目が強いほど良い」は危険な発想
まとめ
「メリロートエキス配合サプリ」は、足のむくみが気になる人にとって一見魅力的な製品に見えます。しかし、医薬品成分だった背景、安全性の注意点、成分量のばらつき、副作用リスクなど、正しい知識を持って活用することが大切です。あくまで「サプリメントは補助的な存在」であり、まずは日々の生活習慣の見直しが基本です。
安易に「自然素材だから安心」とは考えず、自身の健康管理の一助として適切に使っていきましょう。