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ブラダロンは緑内障患者に使える?
公開. 更新. 投稿者:前立腺肥大症/過活動膀胱.この記事は約2分11秒で読めます.
113 ビュー. カテゴリ:ブラダロンと緑内障患者

「過活動膀胱の患者に薬を処方したいけれど、この方、緑内障があるんだよね…」
そんなとき、処方候補から外されがちなのが抗コリン薬。実際、多くの抗コリン薬は閉塞隅角緑内障に禁忌となっています。
では、「ブラダロン(一般名:フラボキサート塩酸塩)」はどうでしょうか?
添付文書には、緑内障への禁忌記載はありません。この点は、他の過活動膀胱治療薬と大きく異なります。
膀胱平滑筋直接作用薬
ブラダロンは、過活動膀胱や排尿障害に用いられる内服薬です。抗コリン薬のようなイメージがありますが、分類としては抗コリン薬ではない。
フラボキサートは、以下のような多面的な作用を持っています。
・膀胱平滑筋に対する直接的な弛緩作用(Ca拮抗作用、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害作用)
・膀胱への異常刺激を緩和する中枢性作用の可能性
・抗炎症作用や疼痛緩和作用にも寄与しているとの報告あり
これにより、「膀胱を広げて尿をためやすくする」という点では、抗コリン薬やβ₃刺激薬と類似の臨床効果を発揮しますが、神経伝達物質の受容体に拮抗するわけではない点が大きく異なります。
緑内障患者に使えるの?
抗コリン薬は、眼房水の排出を妨げる恐れがあるため、特に閉塞隅角緑内障では禁忌とされます。
一方で、ブラダロンは抗コリン作用を持たず、緑内障患者への使用に関して添付文書上の禁忌・警告記載がありません。
ちなみに市販のOTC薬であるレディガードコーワ(成分:フラボキサート塩酸塩)の、「してはいけないこと」にも緑内障はなく、「相談すること」に緑内障の記載があるだけなので、緑内障患者がレディガードコーワを使うことも可能である。
医薬品名 | 緑内障禁忌 |
---|---|
ブラダロン | なし |
ポラキス | 閉塞隅角緑内障の患者[抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがある。] |
ネオキシ | 閉塞隅角緑内障の患者[抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状が悪化するおそれがある。] |
バップフォー | 閉塞隅角緑内障の患者[抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状が悪化するおそれがある。] |
ベシケア | 閉塞隅角緑内障の患者[抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状が悪化するおそれがある。] |
ウリトス/ステーブラ | 閉塞隅角緑内障の患者[抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状が悪化するおそれがある。] |
トビエース | 眼圧が調節できない閉塞隅角緑内障の患者[眼圧の上昇を招き、症状が悪化するおそれがある。] |
そのため、緑内障を有する患者における過活動膀胱治療薬の選択肢の一つとして考えられます。ただし、副作用に「眼圧亢進(0.1%未満)」というのがあるので、全く安全であるとはいえない。
また、実臨床では「緑内障といっても病型はさまざま」であるため、眼科医の診断・連携は不可欠です。疑わしい場合は必ず事前に確認を。
ブラダロンの位置づけと注意点
ブラダロンは、過活動膀胱に対する薬剤の中でも比較的副作用が穏やかで、使用対象を選ばない柔軟さがあります。
しかしながら、
・高いエビデンスを持つ第一選択薬(抗コリン薬やβ₃刺激薬)とは異なる
・比較的作用がマイルドで効果実感に個人差がある
・他の薬剤で副作用が出た患者や、高齢者・併存症を持つ患者向けの“第2選択”として使われることが多い
緑内障があるために過活動膀胱治療薬の選択に困る場面は少なくありません。
抗コリン薬は禁忌、β₃刺激薬にも副作用懸念がある――そんなとき、ブラダロンは“使えるかもしれない薬”としての選択肢になります。
もちろん、薬剤師としては「緑内障=即NG」ではなく、その病型(開放隅角 vs 閉塞隅角)や点眼薬の併用状況を確認し、医師と連携しながら安全な薬物治療を提案していくことが大切です。