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前立腺がん治療薬の一覧
公開. 更新. 投稿者:癌/抗癌剤. タグ:薬の一覧. この記事は約3分52秒で読めます.
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前立腺がん治療薬の一覧
分類 | 商品名 | 一般名 | |
---|---|---|---|
エストロゲン製剤 | エストラサイト | エストラムチンリン酸エステルナトリウム水和物 | |
プロセキソール | エチニルエストラジオール | ||
抗アンドロゲン薬 | 第一世代 | オダイン | フルタミド |
プロスタール | クロルマジノン酢酸エステル | ||
カソデックス | ビカルタミド | ||
第二世代(アンドロゲン受容体シグナル阻害薬) | イクスタンジ | エンザルタミド | |
アーリーダ | アパルタミド | ||
ニュベクオ | ダロルタミド | ||
CYP17阻害薬 | ザイティガ | アビラテロン酢酸エステル | |
GnRHアゴニスト | ゾラデックス | ゴセレリン酢酸塩 | |
リュープリン | リュープロレリン酢酸鉛 | ||
GnRHアンタゴニスト | ゴナックス | デガレリクス酢酸塩 |
前立腺がん治療薬の分類

前立腺がんの多くはアンドロゲン(男性ホルモン)依存性であり、テストステロンやその活性代謝物であるジヒドロテストステロン(DHT)が、前立腺がん細胞の増殖・進展に深く関与しています。
このため治療の第一選択としては、ホルモン療法(アンドロゲン除去療法, Androgen Deprivation Therapy: ADT)が行われ、主に以下の2つの経路でアンドロゲン作用の遮断を目指します。
①アンドロゲンの「産生」を抑える薬剤群
GnRHアゴニスト(LH-RHアゴニスト)
GnRHアンタゴニスト(LH-RHアンタゴニスト)
CYP17阻害薬(ステロイド合成酵素阻害薬)
②アンドロゲンの「作用」を遮断する薬剤群
抗アンドロゲン薬(第一世代)
次世代ARシグナル伝達阻害薬(第二世代抗アンドロゲン薬)
GnRHアゴニスト(LH-RHアゴニスト)
代表薬:リュープロレリン(リュープリン)、ゴセレリン(ゾラデックス)など
機序:視床下部-下垂体-精巣軸を介し、初期には一過性のテストステロン上昇(flare現象)を起こすが、持続投与でGnRH受容体が脱感作され、結果としてLH・FSH分泌が抑制され、精巣からのテストステロン産生が低下。
特徴:初期にflare現象を抑える目的で、抗アンドロゲン薬の併用が必要な場合がある。
GnRHアンタゴニスト(LH-RHアンタゴニスト)
代表薬:デガレリクス(ゴナックス)、レルゴリクス(オルゴビクス)
機序:GnRH受容体を直接遮断し、即時かつ持続的にLH・FSH分泌を抑制。テストステロン低下も迅速で、flare現象がない。
特徴:急速な効果発現を要する症例(脊髄圧迫リスクなど)に適している。
CYP17阻害薬(ステロイド合成酵素阻害薬)
代表薬:アビラテロン(ザイティガ)
機序:アンドロゲン合成に必要なCYP17A1酵素を阻害することで、副腎・腫瘍細胞由来のアンドロゲン産生を抑制。
特徴:副腎皮質機能低下を防ぐために、プレドニゾロンの併用が必須。肝機能障害やカリウム値のモニタリングが必要。
抗アンドロゲン薬(第一世代)
代表薬:ビカルタミド(カソデックス)
機序:前立腺がん細胞のアンドロゲン受容体(AR)に拮抗し、アンドロゲンの結合を阻害。
特徴:主にGnRHアゴニストと併用される(CAB療法:Combined Androgen Blockade)。
次世代ARシグナル伝達阻害薬(第二世代抗アンドロゲン薬)
代表薬:アパルタミド(アーリーダ)、エンザルタミド(イクスタンジ)、ダロルタミド(ニュベクオ)
機序:以下の多段階でARシグナルを遮断→ARへのリガンド(アンドロゲン)の結合阻害→ARの核内移行阻止→ARとDNAの結合抑制
特徴:
・アーリーダ:皮膚障害の発現率が高く、日本人では注意が必要
・イクスタンジ:けいれんや疲労など中枢系の副作用に注意
・ニュベクオ:中枢移行性が低く、転倒やけいれんのリスクが少ないため高齢者や多剤併用患者に適する
服薬指導に使える言い換え表現
薬剤師が患者さんに説明するときには、以下のような表現が使いやすいです。
GnRHアゴニスト 「男性ホルモンの元になる命令を一時的に出しすぎて、体が反応しなくなるようにする薬」「体の中の男性ホルモンを、徐々に少なくする薬です」
GnRHアンタゴニスト 「男性ホルモンの元になる命令をピタッと止める薬です」「男性ホルモンをすばやく下げて、がんの勢いを早めに抑える薬です」
CYP17阻害薬「がんが男性ホルモンを作る材料をブロックする薬です」
抗アンドロゲン薬 「がんが男性ホルモンの信号を受け取れないようにする薬です」
次世代ARシグナル伝達阻害薬 「がんがホルモンの信号を使って動けないように、複数のポイントでブロックする薬です」
前立腺がんは「男性ホルモンで動くがん」です。だから治療薬はすべて、そのホルモンの力を断つ薬です。


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