2024年12月18日更新.2,481記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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てんかんの食事療法

てんかんとケトン食療法

てんかんの食事療法で、ケトン食療法というのがあります。
日本ではあまり普及していませんが、欧米や韓国では難治性てんかんの治療法の一つとして確立しています。

ケトン食療法は糖・炭水化物を減らして、脂肪を増やした食事で、脂肪が分解されてケトン体が体内で作られ効果を発揮します。

お米、パン、パスタなどはできるだけ食べないようにして、砂糖の代わりに人工甘味料を使用し、卵、豆腐、肉、魚主体の食事に食用油を添加し、食事中の脂肪:(糖+炭水化物+タンパク質)の比率(ケトン指数)を 3~4:1にします。

医師を通じて入手できる特殊ミルク(ケトンフォーミュラ)はいろいろな料理にも利用できます。

効果を高めるためにカロリーや水分を7~8割に制限する場合があります。
タンパク質を制限しないで糖・炭水化物を10~15g/日までにして脂肪を多めに摂取する修正アトキンス食も有効性が報告されています。
いずれもバランスの偏った食事なので医師と栄養士の指導が必要です。

ケトン体と聞くと、糖尿病のケトアシドーシス的な、悪いイメージしか無い。
ケトン体が何故てんかん発作に有効なのかはよく分かっていません。
飢餓状態でてんかん発作が良くなる経験が元になり、人為的に飢餓状態に似た状態を作り出すケトン食糧法が考案されました。

てんかんと絶食療法

飢餓がてんかんに効くということは昔から知られていました。

飢餓状態になると、糖質の代わりに体内の脂肪を分解してエネルギーを作るために、ケトン体が発生します。
そのケトン体がグルタミン酸を輸送する働き阻害して、てんかん発作を防ぐ。
そのため、絶食療法が難治性てんかんに有効。

しかし、小児を絶食、飢餓状態に置くのは危険を伴うので、実際に行うには入院も必要です。
家庭で絶食療法を試みるのは止めましょう。

デパケン服用中のケトン食療法は禁忌?

デパケンなどのバルプロ酸ナトリウムの副作用に、「カルニチン減少」という副作用がある。
カルニチンと聞くと、脂肪を燃焼させるダイエットサプリメントとして有名です。
脂肪はグリセロールと脂肪酸に分解されますが、脂肪酸をエネルギーとして利用するためには細胞内のミトコンドリアに運ばれなければなりません。
脂肪酸がミトコンドリア内に運ばれるためには、カルニチンという物質が必要です。

バルプロ酸ナトリウムの薬効分類は、分岐鎖脂肪酸系の抗てんかん薬といわれ、脂肪酸と似た構造です。
そのため、脂質の摂取割合を増やしたケトン食やMCTオイルの併用は、バルプロ酸によるカルニチン減少のリスクを増やすことになる。
エルカルチンの併用を勧める。

ケトン食で認知症改善?

中鎖脂肪酸が認知症に効くという話があります。

脳の神経細胞はグルコース(ブドウ糖)をエネルギー源としているが、アルツハイマー病になるとグルコースを使うことができない「ガス欠状態」となり、認知症状を引き起こす。グルコースの代替としてケトン体が使われる。

ただ、ケトン体が効かない人もおり、ケトン体の血中濃度がうまく上がらないか、神経細胞が死んでしまっている状態と考えられるという。

糖尿病とケトーシス

尿中のケトン体を測るケトスティックという試験紙がある。

ケトン体を測ると何がわかるのか。
ケトン体とは何か?

一般にケトーシスはグルコース代謝に異状をきたし、代償的にケトン体でエネルギー代謝を賄おうとして引き起こされる。

例えば、重度の糖尿病患者では、β酸化の過度の亢進などにより肝臓からこれらのケトン体が大量に産生される。

インスリンはグルコースの利用を促進するホルモンであるが、1型糖尿病患者ではインスリンが欠乏している。

細胞内にグルコースを取り込む役割をするグルコーストランスポーターのGLUT4は、主に脂肪細胞、骨格筋、心筋に認められ、インスリンがないときには細胞内に沈んでいるが、インスリンを感知すると細胞膜上へと浮上してグルコースを細胞内に取り込む。

このためインスリンが枯渇していると肝臓、筋肉といった組織がグルコーストランスポーターを介して血糖を細胞内に取り込むことが出来ず、体内に蓄積した脂肪酸をβ酸化することによりアセチルCoAを取り出し、TCAサイクルを回すことでエネルギーを調達する。このケトンによってアシドーシス(血液が酸性に傾く状態)となる。

このようなケトンによるアシドーシスは特にケトアシドーシスと呼ばれ、特に糖尿病によって引き起こされた場合を糖尿病性ケトアシドーシスという。グルコースが枯渇しているような絶食時、激しい運動時、高脂肪食においてもケトン体が生成される。

糖尿病でインスリンの作用が鈍くなると、血中のグルコースではなく、脂肪をエネルギーとして利用する。
そのとき生まれるゴミがケトン体。

血中にグルコースが不足した飢餓状態、ダイエット中、運動後、下痢・嘔吐などでもケトン体が上昇する。

でも、糖尿病性ケトアシドーシスでは、ケトスティックを使っても偽陰性になることがあるらしい。

尿定性試験紙は、測定原理上、アセト酢酸は鋭敏に検出しますが3-ヒドロキシ酪酸は検出できません。そのため、糖尿病性ケトアシドーシスのような、3-ヒドロキシ酪酸が尿中に多く出され、アセト酢酸の出される量はほとんど変わらない場合、尿中ケトン体を検出できず、本当は陽性なのに陰性の結果となる場合(偽陰性)があります。

一般の人が尿中ケトン体を測定したい、と思うケースはあまり無いかと思うのですが、脂肪をエネルギーに変えられているかどうかを判定するダイエット効果の確認目的で使われることがある。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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