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夏バテと肝臓の関係は?
公開. 更新. 投稿者:肝炎/膵炎/胆道疾患.この記事は約4分8秒で読めます.
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夏バテと肝臓の関係─疲労感の裏にある“沈黙の臓器”の悲鳴

毎年、夏になると「なんだかだるい」「食欲が出ない」「疲れが取れない」といった不調に悩まされる方が増えます。いわゆる“夏バテ”と呼ばれるこの症状。単なる暑さのせいだけではなく、その背景には“肝臓の疲れ”が関係しているかもしれません。
肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、多少の不調では症状を表に出さず、黙々と働き続けます。しかし、その働きが低下すると、全身のエネルギー生産が滞り、慢性的な疲労感や体調不良へとつながるのです。
肝臓の役割とは?─人体の“化学工場”の正体
肝臓は体の右上腹部にある大きな臓器で、500種類以上の機能を担っています。代表的な働きは以下のとおりです。
・栄養の代謝:糖質・脂質・たんぱく質をエネルギー源や体の構成成分として使える形に変換
・解毒作用:アルコールや薬、老廃物など有害物質を無毒化
・胆汁の生成:脂肪を消化するための胆汁を作り出す
・エネルギーの貯蔵と供給:グリコーゲンとして糖を蓄え、必要に応じてエネルギーとして放出
つまり、私たちが生きて活動していく上で欠かせないエネルギーと、体の恒常性を支えるために、肝臓は休む間もなく働いています。
夏は肝臓にとって“過酷な季節”
夏は高温・多湿という環境により、私たちの体は体温調整のために多くのエネルギーを消費します。さらに、暑さで食欲が低下し、冷たい飲食物に偏りがち。ここに次のような要因が重なることで、肝臓への負担は極端に増加します。
● 肝臓を疲れさせる3大要因
①ストレスによる自律神経の乱れと血圧上昇:
精神的ストレスは交感神経を過剰に刺激し、肝血流の低下を引き起こします。
②運動不足による脂肪蓄積:
消費されないエネルギーは中性脂肪として肝臓に蓄積され、脂肪肝の原因に。
③アルコールの過剰摂取:
冷えたビールが美味しい季節ですが、アルコールの分解には大量の酵素とエネルギーを必要とします。
● 肝臓の“オーバーワーク”が引き起こす症状
・全身のだるさ・疲労感
・朝起きられない
・食欲不振
・胃腸機能の低下
・睡眠の質の低下
夏は、ただでさえ体に負担がかかる季節。そのうえ、肝臓の働きまで落ちてしまえば、「夏バテ」は避けられません。
肝臓とエネルギー生産─疲れの本当の原因
肝臓は、私たちの体の“エネルギー製造所”としても機能しています。
摂取した糖質や脂質を分解してATP(細胞のエネルギー通貨)を作り出したり、グリコーゲンとして蓄えたりして、常に全身に必要なエネルギーを送り出しています。
ところが、肝臓が疲弊するとこの機能がうまく働かず、エネルギー不足に陥って“慢性的なだるさ”を感じるようになるのです。
胃腸の不調と肝臓の悪循環
夏は冷たい飲み物やあっさりした食事に偏りがちで、タンパク質やビタミン、ミネラルの摂取が不足します。
こうした栄養素は、肝臓がエネルギーを生み出すために不可欠です。十分な栄養が摂れないと、
・肝臓の代謝機能が低下
・胃腸の働きがますます低下
・さらに食欲がなくなる
という悪循環に陥ってしまいます。
夏バテを防ぐ肝臓ケアのポイント
では、夏バテを防ぎ、肝臓を守るにはどうすればいいのでしょうか。以下に、肝臓をいたわるための生活習慣をご紹介します。
● 1日6時間以上の睡眠
肝臓の修復は主に睡眠中に行われるため、良質な睡眠は必須。就寝前のスマホやカフェインを避け、眠る1時間前にはリラックスできる環境を整えましょう。
● 有酸素運動(20~30分程度/日)
脂肪肝の予防には、ウォーキングや軽いジョギング、サイクリングなどの有酸素運動が効果的です。週に3〜5回が目安。
● 食事内容の見直し
・高タンパク(鶏ささみ、豆腐、卵など)
・高ビタミン(緑黄色野菜、果物)
・低脂肪(揚げ物や脂身を控える)
冷たい麺類ばかりではなく、温かいスープや味噌汁で胃腸を温めることも肝臓の助けになります。
● アルコールの量と頻度を見直す
・連日の飲酒を避ける
・飲んだ翌日は肝臓を休ませる
・おつまみは低脂肪・高たんぱくを意識
シジミとオルニチンの話─食品で肝臓をサポート
「肝臓にはシジミがいい」と耳にしたことはありませんか?
実は、シジミにはオルニチンというアミノ酸の一種が豊富に含まれています。
オルニチンは、体内で発生するアンモニアを解毒し、尿素に変えて排出するという重要な働きを担っています。この機能により、肝臓が担う解毒作用を助け、結果として疲労感の軽減に役立つとされています。
ただし、食品で得られるオルニチンの量は限られており、効果を期待するには大量摂取が必要だそうです。サプリメントで補うという選択肢も一つですが、基本はやはり栄養バランスの整った食生活が大切です。
肝臓が発する“サイン”を見逃さないで
肝臓は痛みを感じにくいため、気づいたときにはかなり機能が低下していることもあります。以下のような症状は、“肝臓の疲れ”のサインかもしれません。
・朝起きた時に倦怠感が残る
・肌荒れやくすみ
・食後のもたれ
・集中力の低下
・寝ても疲れが取れない
こうしたサインを無視せず、肝臓にやさしい生活を意識することが、夏バテの予防にも直結します。
まとめ:沈黙の臓器・肝臓を守れば、夏バテ知らずの毎日へ
夏の不調は、単なる気温や湿度の問題だけではなく、肝臓の働きと密接に関係しています。
肝臓は毎日黙って働き続ける“縁の下の力持ち”。だからこそ、調子を崩したときには全身にその影響が現れます。
夏バテを防ぐには、肝臓のケアが欠かせません。
・栄養バランスの取れた食事
・良質な睡眠
・適度な運動
・アルコールの節度ある摂取
これらを意識して、“肝臓にやさしい夏”を過ごしましょう。