2025年10月23日更新.2,661記事.

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ニキビの原因はカビ?ニキビとマラセチア毛包炎の違い

ニキビの原因としてカビはある?ニキビとそっくりな「マラセチア毛包炎」との違い

「ニキビはカビが原因」という話を耳にしたことはありませんか?
実際、患者さんから薬局やクリニックで「ニキビってカビなんですか?」と質問されることもあります。

結論から言えば、通常のニキビ(尋常性ざ瘡)の原因はカビではありません。ニキビは、毛穴の詰まりや皮脂の過剰分泌、そして「アクネ菌」と呼ばれる細菌が関与して生じるものです。

ただし、ニキビによく似た皮膚病の中に、カビ(真菌)が原因で発疹を生じる病気があります。それが「マラセチア毛包炎」です。

ニキビ(尋常性ざ瘡)の原因と仕組み

ニキビはカビではなく「細菌」と「皮脂」が原因
一般的に「ニキビ」と呼ばれるのは、医学的には「尋常性ざ瘡」といいます。その主な原因は:

毛穴のつまり
 思春期やホルモンバランスの変化で皮脂の分泌が増えると、毛穴の出口が角栓で塞がれやすくなります。
皮脂の過剰分泌
 皮脂が多いと毛穴に皮脂が溜まり、アクネ菌のエサになります。
・アクネ菌の増殖
 毛穴に詰まった皮脂を栄養にして、Cutibacterium acnes(旧Propionibacterium acnes)という細菌が繁殖し、炎症を引き起こします。
・炎症の悪化
 赤ニキビや膿をもった黄ニキビへと進行します。

つまり、ニキビは「細菌」が関与する皮膚病であり、「カビが原因」ではありません。

カビが原因の「ニキビそっくりな病気」=マラセチア毛包炎

一方で、ニキビと見た目がとてもよく似ている病気があります。それが マラセチア毛包炎 です。

マラセチア毛包炎とは?
・原因:皮膚の常在真菌である マラセチア属(Malassezia) の異常増殖
・好発部位:胸、背中、肩、時に顔面
・好発年齢:思春期から青年期(汗・皮脂分泌が多い年代)
・季節性:夏場や湿度の高い環境で悪化しやすい

マラセチアは皮膚の常在菌(誰の皮膚にも存在するカビ)ですが、皮脂を栄養源にして増殖する性質があります。
汗や皮脂が増える時期に異常増殖すると、毛包内で炎症を起こし、「ニキビそっくりの赤いブツブツ」が出現するのです。

ニキビとマラセチア毛包炎の違い

見た目が非常に似ているため、自己判断では区別がつきにくいのが特徴です。以下のような違いがあります。

特徴尋常性ざ瘡(ニキビ)マラセチア毛包炎
原因アクネ菌(細菌)マラセチア(真菌=カビ)
発疹の形大小さまざまな赤ニキビ、白ニキビ、黒ニキビ、膿を持つ黄ニキビ均一な大きさの赤いブツブツが多数
好発部位顔(額、鼻、顎)、胸、背中胸、背中、肩、時に顔
季節性特にない(思春期やホルモン変化に左右される)夏や湿度の高い時期に悪化
治療抗菌薬、過酸化ベンゾイル、アダパレンなど抗真菌薬(外用・内服)
抗菌薬の効果効く効かない(悪化することも)


誤解が生じやすい理由

・見た目が似ているため、患者さんも医療従事者も最初は「ニキビ」と思ってしまう。
・背中や胸のブツブツは「大人ニキビ」と誤診されやすい。
・通常のニキビ治療薬(抗菌薬)では改善せず、むしろ皮膚のバランスを崩して悪化する場合がある。

このため「カビが原因のニキビ」という誤った表現が広まりやすいのです。

マラセチア毛包炎の診断と治療

診断
・見た目だけでは判断が難しいため、皮膚科での診察が必要です。
・必要に応じて顕微鏡検査や培養で真菌の存在を確認することもあります。

治療
・抗真菌薬外用薬:ケトコナゾールクリーム、ミコナゾールなど
・抗真菌薬シャンプー:頭皮・体に用いて皮脂量をコントロールする場合もある
・内服薬:重症例や広範囲の場合にはイトラコナゾールなどを使用

通常のニキビ治療薬(抗菌薬やレチノイド外用薬)は効果がないため、「治らないニキビ」だと思ったら真菌性毛包炎を疑うことが大切です。

セルフケアと生活上の注意点

マラセチア毛包炎の発症・悪化を防ぐためには、以下のようなセルフケアが有効です。

汗をかいたら早めに洗い流す
 マラセチアは湿気と皮脂を好むため、汗をかいたまま放置すると増殖しやすくなります。

皮脂の多い部位を清潔に保つ
 背中・胸は特に皮脂腺が多いため、低刺激性のボディソープで洗浄する。

通気性の良い服装を選ぶ
 合成繊維やぴったりした衣服は汗がこもりやすく、悪化因子になります。

ストレスや睡眠不足を避ける
 ホルモンバランスや皮脂分泌に影響し、マラセチアの増殖を助長する可能性があります。

「ニキビが治らない」と思ったら

・一般的なニキビ治療薬(抗菌薬や市販のアクネケア)が効かない
・背中や胸のブツブツが夏に悪化する
・赤い発疹が均一に多数出ている

こうした場合は、マラセチア毛包炎の可能性を考え、皮膚科を受診しましょう。

まとめ

・通常のニキビ(尋常性ざ瘡)の原因はカビではなく、細菌(アクネ菌)と皮脂・毛穴の詰まり。
・ただし「ニキビそっくり」な真菌性皮膚疾患に マラセチア毛包炎 があり、これが「カビが原因のニキビ」と誤解される。
・見た目で区別するのは難しく、診断には皮膚科受診が必要。
・治療は抗真菌薬で行い、通常のニキビ治療薬は効かない。
・汗や湿度の多い環境で悪化するため、セルフケアも大切。

つまり、「ニキビ=カビが原因」というのは誤解ですが、「カビが原因のニキビそっくりな皮膚病(マラセチア毛包炎)」は存在する、というのが正しい理解です。

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