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歯科から処方できるNSAIDs ― 抜歯後や歯痛に使える薬と使えない薬
公開. 更新. 投稿者: 5,908 ビュー. カテゴリ:痛み/鎮痛薬.この記事は約4分18秒で読めます.
目次
歯科から処方できるNSAIDs ―「歯痛・抜歯後の鎮痛」に使える薬と使えない薬

歯科から処方できるNSAIDs ― 抜歯後や歯痛に使える薬と使えない薬
歯科医院で処方される薬といえば、「抗菌薬」と「痛み止め(鎮痛薬)」が中心です。
中でもNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、抜歯や歯の神経処置後の炎症性疼痛を和らげる目的で最もよく使用されます。
ただし、NSAIDsには数多くの種類があり、そのすべてが歯科領域で使用できる(=添付文書上で適応がある)わけではありません。
歯科で処方できるNSAIDsと、適応外のNSAIDsを整理し、臨床上の注意点を解説します。
歯科領域でNSAIDsが必要とされる理由
歯の痛みは多くが「炎症性疼痛」です。
抜歯後や歯髄炎、歯周炎などでは、炎症性サイトカインの一種であるプロスタグランジン(PG)が生成され、
痛みや腫れ、発赤を引き起こします。
NSAIDsは、このプロスタグランジンの生成を抑えるシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害作用を持ち、
炎症と痛みを同時に抑える効果を発揮します。
このため、歯科治療後の鎮痛・消炎薬として定番の位置を占めています。
主なNSAIDsの歯科適応一覧(2025年時点)
このように、歯科適応が明記されている薬は限られています。
ロキソニン(ロキソプロフェン)、ボルタレン(ジクロフェナク)、セレコックス(セレコキシブ)の3剤が特に代表的で、歯科処方の中心となっています。
歯科で使えるNSAIDsと使えないNSAIDsの違い
🔹 「歯科適応あり」の薬
歯科・口腔外科領域の臨床試験を経て、添付文書に「歯痛」「抜歯後の鎮痛・消炎」などが明記されている薬です。
歯科医師はこれらの薬を保険診療で正当に処方できます。
代表的なもの:
ロキソニン®(ロキソプロフェン)
ボルタレン®(ジクロフェナク)
セレコックス®(セレコキシブ)
ソレトン®、ペオン®(ザルトプロフェン)
ナイキサン®(ナプロキセン)
これらはいずれもCOX阻害作用を持つ酸性NSAIDsで、歯の炎症による痛みに高い効果を示します。
🔹 「歯科適応なし」の薬
効能・効果に「歯痛」「抜歯後の鎮痛・消炎」が記載されていないNSAIDsです。
薬理的には鎮痛作用を持っていても、歯科での適応外使用となります。
代表的なもの:
ブルフェン®(イブプロフェン)
市販薬「イブ®」には“歯痛”の記載があるが、医療用ブルフェンはなし。
モービック®(メロキシカム)
慢性関節炎向けで、COX-2選択性が高く、歯科の急性痛には通常用いない。
オステラック®・ハイペン®(エトドラク)
関節・腰痛向けで歯科適応なし。
🦵 顎関節症などに使われるNSAIDs
歯科領域では、歯痛以外にも顎関節症(TMD)にNSAIDsが使用されることがあります。
この場合は「関節性疼痛」に対する投与であり、
添付文書上の「変形性関節症」「肩関節周囲炎」「頸肩腕症候群」などの項に該当します。
たとえば:
ロキソニン®やセレコックス®が第一選択
症状が慢性的な場合、COX-2選択的薬(セレコックス)が胃腸障害を起こしにくい利点あり
顎関節症へのNSAIDs使用は、歯痛とは別の枠組みでの使用となります。
🧬 オキシカム系NSAIDsの位置づけ(フルカム・バキソなど)
かつて歯科領域で多く使用されていたオキシカム系NSAIDs(ピロキシカム、アンピロキシカムなど)は、
長時間作用(1日1回投与)で炎症を強力に抑える利点がありました。
しかし、長時間作用であるがゆえに、
消化管障害・皮膚障害などの重篤な副作用リスクが問題となり、
現在では歯科適応から削除されています。
アンピロキシカム(フルカム®)は2000年代後半まで歯科領域でも使用されていましたが、
現在は販売終了となっています。
ただし、同系統薬のロルカム®(ロルノキシカム)は短時間型であり、
「抜歯後の鎮痛・消炎」に適応を持つ唯一のオキシカム系薬として現在も使用可能です。
💊 NSAIDs以外の鎮痛薬
NSAIDsで胃腸障害が懸念される場合や、
高齢者・腎機能低下例などでは、アセトアミノフェン(カロナール®)が選択されます。
さらに、痛みが強い場合には
トラマドール塩酸塩+アセトアミノフェン配合剤(トラムセット®)が使われます。
トラムセットは「抜歯後の疼痛」に保険適応があり、
NSAIDsが使えない患者への代替薬として歯科でも重要な位置を占めています。
⚠️ 歯科処方時の注意点
NSAIDsは腎血流を低下させるため、腎障害・高齢者には注意。
抗血小板薬・ワルファリンとの併用で出血リスク上昇。
潰瘍歴のある患者ではPPI併用(ランソプラゾール等)を考慮。
連用は避け、最短日数で使用する。
🧭 まとめ:歯科で処方できるNSAIDsは限られている
分類 代表薬 歯科適応 備考
酸性NSAIDs ロキソニン、ボルタレン、ソレトン、ナイキサン あり 歯痛・抜歯後に第一選択
COX-2選択的NSAIDs セレコックス あり 胃腸障害リスクが低い
オキシカム系 ロルカム あり(短期間) 長時間型(フルカム等)は廃止済み
非NSAIDs カロナール、トラムセット あり 胃腸障害例やNSAIDs禁忌例に有効
適応外NSAIDs ブルフェン、モービックなど なし 鎮痛効果はあるが保険適応外
💬 まとめのことば
歯科で使われるNSAIDsは、薬理作用よりも「適応の有無」がポイントです。
かつて広く用いられたフルカムなどは姿を消し、
現在はロキソプロフェン・ジクロフェナク・セレコキシブが三本柱。
顎関節症や慢性炎症にはCOX-2選択的薬が選ばれ、
胃腸障害のある患者にはアセトアミノフェンやトラムセットが用いられます。





4 件のコメント
セレコックスは抜歯後疼痛で適応ありませんでしたか?
コメントありがとうございます。
見逃してました。修正します。
歯医者から、フルカムカプセル27mgを朝晩飲むように処方されました。歯から神経を削り取り、薬剤を詰めた後の痛み止めとしてロキソプロフェンの効きがイマイチだった事によります。
最大投与量の2倍でも問題ないでしょうか?
コメントありがとうございます。
薬剤師としては「1日最大27mg(ピロキシカムとして20mg)までの投与とすること。」となっているので、そのような指示の処方が来たら疑義照会します。
苦肉の策だとは思いますが、長期間に及ぶと心配ですね。