2024年11月20日更新.2,474記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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ビスホスホネートで発熱?

ビスホスホネート製剤の急性期反応

ビスホスホネート製剤の服用初期に、筋肉痛や関節痛、発熱や全身倦怠感といったインフルエンザ様症状を訴えるケースが報告されるようになってきた。
主に初回投与時に服用から3日以内に発現し、数日から長くても1週間程度で治まることが知られ、ビスホスホネート製剤の急性期反応(APR:acute phase reaction)と呼ばれる。

APRは、アレンドロン酸ナトリウム水和物(フォサマック/ボナロン)、リセドロン酸ナトリウム水和物(アクトネル/ベネット)など第二世代以降の窒素含有ビスホスホネート製剤でみられる。

急性期反応の発現機序は、ビスホスホネート製剤による骨級数抑制作用のメバロン酸代謝過程において、ファルネシルピロリン酸合成酵素を阻害するため、イソペンテニルピロリン酸を抗原としたγσT細胞が活性化、増殖する。
その結果、腫瘍壊死因子(TNF)ーα、インターロイキン(IL)ー6が合成され、筋骨格系などへの副作用(急性期反応)が起こる。

急性期反応の予防法としては、①スタチン投与、②ビタミンD製剤投与、③消炎鎮痛薬投与などが示されている。
①については、ビスホスホネート製剤投与前にスタチンを服用すると、TNF-αやIL-6の合成が抑制されることが報告されている。
そのため、急性期反応を予防できると考えられている。

②に関しては、ビタミンDレベルと急性期反応の関連を検討した報告において、ビタミンDが充足していた(30ng/mL以上)患者の割合が、急性期反応を発現した群では30%であったのに対して、発現しなかった群では76%と高く、ビタミンD不足が急性期反応に関係していることが示唆された。そのため、ビタミンD製剤の投与がその予防に有用とみられている。

③については、日本骨粗鬆症学会と日本骨代謝学会から以下のようなコメントが発表されている。

ビスホスホネート製剤の急性期反応に対する対策について

ビスホスホネート製剤の急性期反応は、経口投与に比べ注射投与の方が発現頻度は高く、症状が重いとされている。

投与後、数時間から数日の間に起こり、関節痛、筋肉痛、骨痛、嘔気、全身倦怠感、頭痛、悪寒、発熱などのインフルエンザ様症状を呈する。多くは、数日から1週間以内に消失する。

APRの症状に関しては、重篤なものは少ないといわれている。症状が出現した際には、アセトアミノフェンなどの服用により、症状は速やかに消失することが多い。また、APRの発現率は初回投与時が最も高く、投与回数が多くなるにつれて低下していく。

この急性期症状を知らないと、「風邪をひいた」あるいは、「薬が合わない」という誤解を生じさせ、自己判断による服薬中止などコンプライアンスに影響を及ぼす可能性も考えられる。
服薬指導時に一過性である旨を話しておくとよい。

参考書籍:日経DI2018.2

ビスホスホネート系薬の特徴

ビスホスフォネート系薬剤は、骨に付着して、骨のカルシウム分が血液に溶け出すのをおさえます(骨吸収抑制作用)。
その結果、骨の密度が増加し、骨が丈夫になるのです。骨折の予防効果が高いので、高齢の人などで骨折の危険性が高い重度の骨粗鬆症に向きます。
フォサマックやベネットなどによる いくつかの大規模骨折介入試験がおこなわれており、骨粗鬆症における骨折がおおよそ半減することが示されています。

ビスホスフォネートは化学構造として2つのC-P結合を特徴とし、さらに側鎖の違いから第一世代~第三世代に分類されることがあります。
ダイドロネルは国内初の第一世代ビスホスホネートになりますが、骨吸収抑制作用が弱く安全域が狭いうえ、変則的な飲み方になることもあり、最近はあまり使われなくなりました。
一方、側鎖に窒素(N)を含むフォサマック以降の新世代ビスホスホネート製剤は、骨吸収抑制作用が非常に強く、骨折抑制効果にも優れることから処方機会が増えています。

閉経後あるいは老人性の骨粗鬆症に広く用いられるほか、ステロイドなどによる薬物性の骨粗鬆症に対しても第一選択されます。
さらに、ダイドロネルは異所性骨化と骨ページェット病に、ベネットとアクトネルは骨ページェット病にも適応します。
なお、同系の注射薬は、飲み薬が使いにくい食道障害のある人や寝たきりの人、正確な服薬が困難な患者さんに使用されるほか、がんの骨転移にともなう骨病変や高カルシウム血症の治療薬としても重要です。

この系統の飲み薬は吸収率が悪く食べ物の影響を受けやすいです。
くわえて、局所刺激作用が強く、食道炎や胃潰瘍を起こす危険性があります。このようなリスクを回避するため、起床時に十分量の水で服用するなど厳格な飲みかたが求められます。
とはいえ、毎日となると大変です。
そこで、服薬負担の軽減をめざし、服用間隔が長い高用量製剤が新たに開発されました。
フォサマックとボナロンの高用量製剤は週1回、ベネットとアクトネルは週1回または月1回、ボノテオとリカルボンは4週に1回、ボンビバは月1回の服用で済みます。

副作用で比較的多いのは、吐き気、食欲不振、下痢または便秘などです。
多くはありませんが、食道炎や食道潰瘍、胃潰瘍などもみられます。
このような消化管障害を防ぎ、安全かつ効果的に用いるには、やはり、たくさんの水で服用するなど決められた飲み方を守ることが大事です。
ほかにも、特異な副作用として顎骨壊死や大腿骨の非定型骨折が報告されています。
歯や口まわりの違和感、太ももや足の付け根が痛むなど普段と違う症状があらわれたら医師と相談してください。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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