2025年6月12日更新.2,494記事.

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ダイドロネルは寝る前に飲んでもいいか?

ダイドロネルは寝る前に飲んでもいい?

ダイドロネル(エチドロン酸二ナトリウム)は、第一世代のビスホスホネート製剤として古くから使われてきた骨粗鬆症治療薬です。用法としては「1日1回食間投与」と記載されていますが、「食前・食後でなくて良いということは、寝る前でもいいのでは?」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

ダイドロネルとは:第一世代ビスホスホネートの特徴

ダイドロネルの成分であるエチドロン酸二ナトリウム(Etidronate disodium)は、骨吸収を抑制する作用を持ち、骨粗鬆症の治療や骨疾患の予防に使用されてきました。

● 適応症
〇骨粗鬆症
〇下記状態における初期及び進行期の異所性骨化の抑制
 脊髄損傷後、股関節形成術後
〇骨ページェット病

● 用量:
〈効能共通〉本剤の吸収をよくするため、服薬前後2時間は食物の摂取を避けること。
〈骨粗鬆症〉通常、成人には、エチドロン酸二ナトリウムとして200mgを1日1回、食間に経口投与する。投与期間は2週間とする。再投与までの期間は10~12週間として、これを1クールとして周期的間歇投与を行う。
なお、重症の場合(骨塩量の減少の程度が強い患者あるいは骨粗鬆症による安静時自発痛および日常生活の運動時痛が非常に強い患者)には400mgを1日1回、食間に経口投与することができる。投与期間は2週間とする。再投与までの期間は10~12週間として、これを1クールとして周期的間歇投与を行う。
なお、年齢、症状により適宜増減できるが、1日400mgを超えないこと。

これはビスホスホネートの中でも特異な用法で、「継続投与より、間欠投与の方が安全で効果的」とされています。

● 食間投与の理由とは?:
ダイドロネルの添付文書では「食前後2時間は食事を避けること」と明記されています。これは、薬の消化管からの吸収率が非常に低く、食物の存在によってさらに吸収が阻害されるためです。

● 吸収率は1%以下:
エチドロン酸はカルシウムやマグネシウムなどの金属イオンと結合しやすく、乳製品、鉄剤、カルシウム剤、サプリメント等との併用で吸収が著しく低下します。

● 空腹時の投与が前提:
そのため、「食間=胃に食物がない時間帯」を選ぶことで、わずかでも薬物吸収を確保することが重要とされています。これが「食前後2時間を避ける」理由です。

他のビスホスホネートと比較:なぜ「起床時」ではない?

第二世代以降のビスホスホネート(アレンドロン酸、リセドロン酸など)は、服用直後に体を起こし、30分以上座位・立位を保つことが求められています。これは食道潰瘍などの副作用予防のためです。

● ダイドロネルは違う?:
ダイドロネルの添付文書には、「起床時に服用」「30分間の上体保持」等の指示は記載されていません。また、重大な副作用として「食道潰瘍」や「食道刺激性」も明記されていません。

このことから、ダイドロネルは食道障害のリスクが他のビスホスホネートより低いと考えられており、「起床後服用」に限定する必要性が薄いといえます。

寝る前に服用してもいいのか?

● 寝る前服用のメリット:
・夕食から2時間空けやすい(夕食18時 → 就寝22時)
・起床直後に服用する必要がない
・就寝前のルーティンに組み込みやすい

● 寝る直前に服用してよいのか?
寝る「直前」(服用後すぐ横になる)ことにはやや注意が必要です。

「就寝前=寝る直前」というより、「夕食から2時間以上あけた時間帯で、服用後に少し時間をおいて横になる」という使用方法が望ましいということです。

食道潰瘍の副作用がない理由は?

ダイドロネルには食道粘膜障害を起こしやすい構造的特徴がないとされ、臨床でもそのような副作用の頻度は極めて低いです。

理由の一例:
・溶解性が高く、食道に長時間滞留しにくい
・投与量が比較的少なく、接触時間も短い
・他剤と比べて食道刺激性が少ない

これにより、「服用後に30分立っている必要」は基本的に求められないわけです。

ダイドロネル服薬指導のポイント

・必ず食前後2時間の空腹時に服用
・カルシウム、鉄剤、乳製品、サプリとの同時摂取を避ける
・就寝前でも問題はないが、すぐ横にならないよう指導
・起床後や昼食の2時間後など、患者の生活に合わせて指導

ダイドロネル(エチドロン酸)は、食事による吸収阻害に注意すれば、服用時間の自由度が比較的高い薬剤です。

「寝る前に飲んで大丈夫か?」という問いには、「就寝直前でなければ問題ない」というのが科学的な回答になります。

今後も、患者の生活スタイルや服薬コンプライアンスを考慮し、適切なタイミングと方法での服用を提案していくことが、薬剤師の大切な役割といえるでしょう。

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