2024年3月18日更新.2,750記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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サムチレールとバクタの違いは?

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ニューモシスチス肺炎の予防

ニューモシスチス肺炎という肺炎がある。不勉強な私はあまり聞き慣れない。
と思ったら、以前はカリニ肺炎という名称だったらしい。こっちのほうが聞いたことのある名前。

正常な免疫能力を持つ場合発症することは希で、化学療法やステロイド剤長期内服、後天性免疫不全症候群(AIDS)などによる免疫低下時に発症する。

関節リウマチの患者で免疫抑制剤やステロイドを服用している患者が、バクタを併用しているケースもみられる。
ニューモシスチス肺炎は、発症すれば、時に死亡する危険性もある。
免疫を抑制する薬剤を多く処方されている関節リウマチ患者において、医師が恐れる感染症の1つである。

ニューモシスチス肺炎の予防としては、ST合剤のバクタか、サムチレールが用いられる。

サムチレールよりもバクタのほうが有効率が高い。
なので、サムチレールには、「本剤は、副作用によりスルファメトキサゾール・トリメトプリム配合剤(ST合剤)の使用が困難な場合に使用すること。」という使用に関する条件がある。

バクタをアレルギーや血液障害などの副作用で使用できない場合に、サムチレールが用いられる。

バクタは最近よく処方を見るし、副作用で中止になるケースをあまり体験していないので、比較的安全に使えるものだと思っていた。

PCPの治療は、欧米においてはスルファメトキサゾール/トリメトプリム(ST合剤)が第一選択薬であり、第二選択薬としては、ペンタミジン(商品名ベナンバックス)が標準治療法として位置づけられている。しかし、HIV感染者にこれらを使用すると、半数以上に副作用が発症し投与継続困難になることが問題となっていた。

アトバコン:忍容性が高いニューモシスチス肺炎治療薬:日経メディカル

サムチレールを実際に開けてみたことは無いが、写真で見ると、黄色い絵の具である。
真っ黄色。
味は甘みと苦みが少しあるそうだ。
ねりからしだと思えば…余計に飲めないか。

サムチレールってどんな薬?

サムチレールという薬について、ニューモシスチス肺炎に使われるということ以外よく知らない。
薬効分類名も「ニューモシスチス肺炎治療薬」となっている。
使用上の注意にも「本剤は他の真菌又は細菌、マイコバクテリア又はウイルス疾患の治療に有効ではない。」とあるので、ニューモシスチス肺炎のみに使われる。

サムチレールの作用機序は、「アトバコンは、ミトコンドリア内膜蛋白質ユビキノンのチトクロームb(complex IIIの構成成分)への結合を阻害し、その結果としてATPレベルを顕著に低下させることにより抗P. jirovecii(ニューモシスチス・イロヴェチ)活性を示すと考えられている。」となっている。
人間の細胞にもミトコンドリアはあるので、副作用が出そうな気がしますが、サムチレールは忍容性が高く、バクタよりも副作用が少ないらしい。

バクタでニューモシスチス肺炎予防?

免疫抑制剤を使っている患者に、バクタの処方はよく見られる。

Q.リウマチ患者さんへバクタ投与。なぜ?
A.免疫抑制によるニューモシスチス肺炎予防の為に投与されます。関節リウマチの治療は、ステロイド剤の長期投与や免疫抑制剤の投与が中心となります。
治療による免疫力の低下に伴いニューモシスチス肺炎が発症する可能性があり、その予防のための投与と考えられます。
プレドニゾロン15mg/日以上と免疫抑制剤を併用している場合は予防投与を必要とし、その場合バクタ(ダイフェン)配合錠 1錠分1を連日もしくは4錠分2を週2回で用います。

リウマチ患者さんへバクタ投与。なぜ? 日経DI掲載クイズ QUIZ 薬剤師さんなら簡単? ちょいむず?

肺炎予防にバクタの処方というのをよくみかける。
その肺炎ってのが、普通の肺炎では無く、免疫機能の落ちた患者にみられるニューモシスチス肺炎とのこと。

ニューモシスチス肺炎(ニューモシスチスはいえん、Pneumocystis pneumonia、PCP)は、酵母様真菌であるニューモシスチス・イロヴェチ(Pneumocystis jiroveci)によって引き起こされる肺炎。正常な免疫能力を持つ場合発症することは希であり、化学療法やステロイド剤長期内服、後天性免疫不全症候群(AIDS)などによる免疫低下時に発症する、日和見感染症の一つである。

ニューモシスチス肺炎 – Wikipedia

ニューモシスチスってのは、真菌?
じゃあ、抗真菌薬のほうが効くんじゃないの?と思いますが。

ニューモシスチス属は真菌ですが、一般的な真菌細胞壁の構成成分であるエルゴステロールを有しておらず、エルゴステロールの合成阻害を作用機序とする抗真菌薬に対する感受性がありません。
真菌だけど抗真菌薬は効かない。
いまいちどんな微生物なのかわからない。

ニューモシスチス肺炎の治療に、肺での炎症を鎮めるためにステロイドが処方されたりもするようだ。
そのステロイドでまた免疫機能が落ちて、肺炎が悪化したりしないのかと心配にもなりますが。

ニューモシスチス肺炎の治療薬として、サムチレールという薬もあります。
こちらの薬価は1包1727.6円。高いです。バクタの比ではない。
バクタが副作用で使えないときに使われる。

AIDS患者では副作用の発現率が高く、副作用の中で発現頻度が高いのは、発疹(30~55%)(スティーブンス・ジョンソン症候群を含む)、発熱(30-40%)、白血球減少症(30-40%)、血小板減少(15%)、高窒素血症(1~5%)、肝炎(20%)、高カリウム血症です。
発現頻度の高い副作用については、ST合剤を中止する前に対症療法を試みるべきであり、多くの場合、発疹は抗ヒスタミン薬によって最後まで治療を行うことが可能であり、悪心は制吐薬によってコントロールし、発熱は解熱薬によって対処することが可能です。

バクタは副作用が多いというイメージが以前は強かったのですが、最近では膀胱炎などでの処方もよくみかけ、気軽に処方されている感じ。特に注意する副作用として高カリウム血症がある。ST合剤(バクタ)は、尿細管上皮細胞のトランスポーターを阻害し、血清クレアチニン値および血清カリウム値を上昇させることが知られている。

副作用軽減目的なのか、バクタの隔日投与というのも見かける。

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3 件のコメント

  • みかん のコメント
         

    大変参考になりました。ニューモシスチス肺炎の予防薬として、バクタとサムチレールがありますが、二つとも副作用でダメな場合は、どんな薬がありますか?
    ご存知でしたら、教えてください。

  • yakuzaic のコメント
         

    コメントありがとうございます。

    適応があるのはベナンバックス注、あと適応は無いけどリファンピシンなんかが使われるようです。

  • スズ のコメント
         

    バクタの副作用頻度が低いのは予防投薬で1T/dayや尿路感染で4T/dayで使用しているときでPCP治療として12T/dayなど高用量使用した場合は骨髄抑制と高カリウム血症は経験上頻発します。一度文献など調べてみられても良いかもしれません

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2023年09月14日発売

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