2024年4月25日更新.2,754記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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インフルエンザの予防接種は効かない?

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インフルエンザの予防接種の効果は?

インフルエンザの予防接種を受けても、インフルエンザにかかることはあります。
今年打つ予防接種のワクチンは、去年流行したインフルエンザウイルスの中から今年流行しそうなウイルス株を選んで作られます。

インフルエンザウイルスの進化のスピードは桁外れです。
インフルエンザウイルスの突然変異のスピードは人間の1000倍。1個のウイルスは1日で100万個にまで増殖します。常に進化し続けているのです。
そのため、1年前のウイルスでワクチンを作っても、効果があるかどうか疑問視する声もあります。

ワクチン株と流行株が一致している場合には、65歳以下の健常成人での発症予防効果は70~90%、施設入所の高齢者の入院や肺炎を防止する効果は50~60%、死亡の予防効果は80%となっています。
しかし、ワクチン株と流行株が一致することはありません。

1歳以上~6歳未満の幼児の場合、ワクチンを接種すると約20~30%の発病を阻止する効果があるという研究結果があります。低い有効率ですね。
過度な期待は禁物です。

乳幼児(6歳未満)に対するインフルエンザワクチン接種について-日本小児科学会見解-

わが国では、1歳以上6歳未満の乳児については、インフルエンザによる合併症のリスクを鑑み、有効率20-30%であることを説明したうえで任意接種としてワクチン接種を推奨することが現段階で適切な方向であると考える。

小児科学会も一応勧めるけど、任意で、受けたければどうぞ、という感じ。

インフルエンザワクチンの予想が外れる?

「今年インフルエンザが流行したのは、ワクチン株の予想が外れたから」みたいなことを言う人もいますが、どういうことなのでしょうか?

まず、インフルエンザウイルスには、A型B型C型とあります。C型は軽症で済むので予防接種する必要はない。
2019年現在のワクチンには、A型2種とB型2種がワクチンには入っています。4価ワクチンといいます。2014年まではA型2種、B型1種の3価ワクチンでした。
近年、シーズン初期(12 月頃)や後期(2~4 月)に2つのB型インフルエンザが同時に発生しているため、B型株2種類入れることになったそうだ。
昔と比べてインフルエンザの予防接種の料金が高くなったのは4価になったからです。

インフルエンザウイルスの構造について、細かく説明する。
インフルエンザウイルスは、自分自身の設計図をタンパク質の膜でくるみ、その外側表面にトゲトゲした糖タンパクを生やした姿をしています。このトゲトゲを感染相手の細胞にひっかけて取り付く、ミクロの「ひっつき虫」なのですが、このウイルスの持つ表面の糖タンパクは、私たちの免疫システムが自分の細胞かそうでないかを見分ける重要な目印になります。
A型は、表面にある2種類の糖タンパク、HA(ヘマグルチニン)とNA(ノイラミニダーゼ)の種類によってさらに細かく分類されます。これを亜種といいます。H1N1やH3N2とはHA(ヘマグルチニン)とNA(ノイラミニダーゼ)の頭文字と種類番号なのです。
ちなみに、HAは16種類、NAは9種類見つかっているので、理論上は144パターン亜種が存在することになります。B型やC型はこの亜型が1つしかありません。

完璧なインフルエンザワクチンを作ろうと思ったら、このA型144種類を全て入れたワクチンを作るべきですが、そんなことをしたらコストが莫大。3価から4価にしただけでも結構金額上がったのに、146価ワクチンなんて作ったら1回10万円とかになっちゃう。

A型の亜種について、昔はH1N1はAソ連型、H3N2はA香港型とよく言っていましたが、2009年にH1N1の新型インフルエンザが世界的に流行ってからは言わなくなった。2009年の新型インフルエンザのことは豚由来だったので、豚インフルエンザとも言っていました。
ワクチンにはA型としてH1N1とH3N2が入っています。144種類の亜種があるといっても、ワクチンにH16N9型とかは入れない。昔からH1N1とH3N2を入れている。
じゃあ、当たり外れってなんだ?となる。
同じ亜種でもAソ連型と豚インフルは違うので、結局1年で変異して効果が無いということもあり得る。

インフルエンザワクチン株は世界保健機関(WHO)が推奨する株の中から国立感染症研究所の人が選定して決定しているという。
H1N1(カリフォルニア)とか、H3N2(シンガポール)とか、前年にウイルスが採取された場所で記載されていますが、大体海外です。たまに広島とか日本の地名のものもありますが。
WHOが推奨する株の中から国立感染症研究所の人が選定して決定しているというプロセスについて詳しくわかりませんが、WHOが推奨している株をそのまま使っているだけっぽい。
ということは、当たり外れがあるとすれば、WHOが勧めた株が外れたということになる。
でも、WHO的には世界的なパンデミックが抑えられればいいわけで、日本での流行を抑える目的で株を選定してはいない。だから、日本で前年に流行ったウイルスからワクチン作ったほうが当たるんじゃね?と素人的に思いますが、コストの面とかいろいろ大人の事情があるのだろうと察する。

インフルエンザワクチンはどのくらい効果続く?

ワクチンによる有効な免疫の持続は、3~4か月程度。
接種1~2週後から抗体が上昇しはじめて、2回接種1ヶ月後にピークになり、3~4ヶ月後に低下しはじめます。
接種5ヶ月くらいまで効果があります。

有効抗体水準に達するのは接種後3カ月で78.8%ですが、5か月では50.8%に減少するといわれている。

翌年までの持続は望めない。
毎年の継続接種が必要。

流行期である初冬から春先に備えて、毎年12月上旬までには接種することが勧められます。
10~11月に接種してしまうと、3~4月に流行があるときには効果が無くなっているかも。

インフルエンザワクチンの集団接種が中止されたのはなぜ?

1962年から1994年まで、日本の小学校ではインフルエンザワクチン接種が義務づけられていました。今は任意で医療機関で接種します。
インフルエンザの予防接種は効果が無いから集団接種が中止になった、と言う人がいます。

ある意味正しく、ある意味正しくありません。
インフルエンザの予防接種に、社会的流行を防ぐ効果は無いと指摘した前橋レポートが一つの原因にあります。しかし集団に対する効果は無いけど、個人に対する効果を否定したものではありません。

卵アレルギーの患者さんには接種できないという点も一つの理由です。

全ての小学生に接種すれば、アレルギーや副反応の問題は必ず出てきます。

一番大きいのは費用対効果の問題です。
全ての小学生に国が費用を負担して受けさせるほどの効果はありません。個人個人が自己責任で費用を負担して接種すべきという考えです。

ワクチンを接種すれば感染しない?

ワクチンを接種しても免疫が獲得できないことはあります。

これをPVF(1次性ワクチン効果不全)といいます。
さらにSVF(2次性ワクチン効果不全)という、ワクチン接種で免疫を獲得したにもかかわらず、その後免疫が減衰することもあります。

ワクチンも万能ではありません。

インフルエンザの死亡率はわからない?

インフルエンザに罹って入院して亡くなった人がいたとします。
この人の死因は何でしょう?
「肺炎」とか「呼吸不全」という病名になるでしょう。
死因で「インフルエンザ」というのは稀です。
そのためインフルエンザによる死亡率を正確に知るのは難しいです。

インフルエンザの予防接種は2回する?

インフルエンザワクチンの添付文書をみると、

「0.5mLを皮下に、1回又はおよそ1~4週間の間隔をおいて2回注射する。ただし、6歳から13歳未満のものには0.3mL、1歳から6歳未満のものには0.2mL、1歳未満のものには0.1mLずつ2回注射する。」

13歳以上なら1~2回、13歳未満は2回接種ですね。
近くの医療機関で、13歳未満でも1回の接種でいい、と言っているという話を聞きました。
1回よりも2回がいいというのは、ブースター効果のため。

ブースター効果で抗体価がどのくらい上昇するのかは、よくわかりません。
個人的には、インフルエンザのワクチンの効果なんて怪しげだと思っています。
インフルエンザに罹って会社を休むことになったときに、「ワクチンも打って無かったのか」と言われないように打つだけです。
打ったという事実が欲しいだけで、効果は期待してません。

なので、1回接種で十分です。

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薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、【PR】薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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1 件のコメント

  • 医療機器従事者 のコメント
         

    前橋レポートはインフルエンザとその他疾患での発熱を分けていない他、科学的に根拠の弱いものです。
    また高リクス群の方々にはワクチン接種の必要性があります。そのような方々と接する可能性が一般の方々より高い薬剤師等は、ワクチン接種が必須であり、決して会社への言い訳のためではありません。

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yakuzaic
yakuzaic/著
2023年09月14日発売

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職業:薬剤師
出身大学:ケツメイシと同じ
生息地:雪国
座右の銘:習うより慣れろ。学ぶより真似ろ。
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