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アニキサス食中毒の原因はアレルギー?
公開. 更新. 投稿者:下痢/潰瘍性大腸炎.この記事は約3分28秒で読めます.
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アニサキスの正体

アニサキスという言葉を聞いたことはあるでしょうか?寿司や刺身など、生の魚介類を食べる文化を持つ日本では、誰にでも関係のある寄生虫です。芸能人の渡辺直美さんや庄司智春さんがアニサキス症を発症したニュースをきっかけに、世間でも注目されるようになりました。
アニサキスとは?
アニサキス(Anisakis)は線虫類の寄生虫で、主にクジラやイルカなどの海生哺乳類を終宿主としています。海中では、サバ、イカ、サンマ、アジ、タラなどの魚介類に幼虫として寄生し、これらをヒトが生で食べることで体内に侵入します。
アニサキスはヒトの体内では成虫になることはありません。しかし、胃や腸の粘膜に入り込み、強い炎症やアレルギー反応を引き起こすことで「アニサキス症」を発症します。
アニサキス症の症状
アニサキス症は、主に以下の3つのパターンに分類されます。
胃アニサキス症
・発症時間:摂取後数時間以内
・主な症状:突然の激しい腹痛、吐き気、嘔吐
・原因:胃粘膜にアニサキス幼虫が侵入
腸アニサキス症
・発症時間:摂取後数時間~数日後
・主な症状:腹部膨満、激しい下腹部痛、腸閉塞様症状
・診断が困難で、CTや内視鏡などを要することが多い
アニサキスアレルギー
・皮膚症状:じんま疹、かゆみ、紅斑など
・全身症状:息苦しさ、血圧低下、アナフィラキシーショック(重症)
・原因:アニサキスの分泌物や死骸がアレルゲンとして作用
なぜ痛くなるのか?—機械的刺激+アレルギー
アニサキス症による腹痛は、「胃に穴を開けるようにして刺さる」機械的刺激が原因と思われがちですが、実際はそれに加えてアレルギー反応の関与が大きいとされています。
胃酸が正常に分泌されている健康な人では、摂取されたアニサキスの96〜97%は胃酸で死滅し、症状が出ない、または軽症で済むことが多いです。
しかし、まれに生き延びたアニサキスが胃や腸の粘膜に刺入し、分泌液を放出。この分泌液が免疫系を刺激し、即時型アレルギー反応を起こすことで強い痛みやアレルギー症状が出現します。
アニサキスアレルギーとは?
「サバアレルギー」だと思っていたら、実はアニサキスアレルギーだった、というケースが多数報告されています。
アニサキスアレルギーの特徴:
・生きたアニサキスだけでなく死骸でも発症
・加熱済み、冷凍済みの魚介類でも反応
・一度感作されるとごく微量でもアナフィラキシーを起こすことがある
・日本や北欧など生魚文化のある国で多い
このため、アニサキスアレルギーと診断された人は、すべての生魚、さらには加熱魚でも注意が必要です。
治療法:内視鏡と薬物療法
内視鏡で虫体を摘出
胃アニサキス症の多くは、内視鏡検査でアニサキスを確認し、鉗子で直接除去することが治療の第一選択です。摘出後は痛みが急速に改善します。
腸アニサキス症には対症療法
腸に侵入してしまった場合、内視鏡での除去が難しく、
・絶食・点滴管理
・鎮痛薬
・抗アレルギー薬 などでの保存的治療が基本になります。
話題の「正露丸」は効くのか?
近年、「正露丸がアニサキスに効く」という話題が注目を集めています。大幸薬品は、正露丸に含まれる木クレオソートに関し、「アニサキス症の症状緩和」に関する特許(特許第5614801号)を取得しました。
木クレオソートの作用とは?
・アニサキスの活動を抑制し、動きを鈍らせる
・痛みを和らげる
・内視鏡での摘出が容易になる
・症状の発症予防にも期待される
ただし注意点として、
・正露丸で一時的に症状が軽快することで、診断が遅れるリスクもある
・アニサキスが除去されたわけではないため、医療機関での診察は必須
予防法:冷凍と加熱が基本
アニサキス症は完全に予防可能な疾患です。以下の対策を取ることで、感染のリスクを大幅に減らすことができます。
加熱処理
・60℃で1分以上の加熱で死滅
・焼き魚、煮魚は安全
冷凍処理
・マイナス20℃以下で24時間以上の冷凍が有効
・一般の家庭用冷凍庫でも可能だが、急速冷凍が望ましい
目視での確認
・調理前に白い糸状のアニサキスを目で確認し、除去
・刺身を提供する店舗ではプロによる確認作業が行われている
まとめ:アニサキスを恐れず、正しく理解を
アニサキス症は「怖い」「痛い」イメージがありますが、正しい知識と予防策があれば、必要以上に恐れることはありません。
ポイントまとめ:
・発症にはアレルギー反応が関与
・胃アニサキスは内視鏡で治療可能
・木クレオソートによる症状緩和にも一定の期待
・冷凍・加熱・目視確認で予防は可能
今後もアニサキスに関する研究は進んでいくと考えられ、食品衛生管理や薬剤の開発にも注目が集まります。魚を美味しく、安全に食べるために、アニサキスのリスクを正しく理解し、適切に対処していきましょう。