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血圧の下げ過ぎで腎機能悪化?
公開. 更新. 投稿者:高血圧.この記事は約9分24秒で読めます.
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血圧と死亡率
血圧を下げすぎると死亡率が上がるという話がある。
降圧によるめまい、ふらつきが転倒などの事故を引き起こし、死亡率を上昇させているという話・・・だけではないようだ。
慢性腎臓病患者では、降圧による腎血流量の低下が死亡率を高めることも考えられるため、血圧コントロールが重要視される。
例えば、ブロプレスの添付文書には、
腎障害のある患者[過度の降圧により腎機能が悪化するおそれがあり、また、慢性心不全の臨床試験において、腎障害の合併が腎機能低下発現の要因であったことから、1日1回2mgから投与を開始するなど慎重に投与すること。]
「過度の降圧により腎機能が悪化する恐れがある」と書かれている。
研究グループは、腎臓の悪い人、およそ7万8000人を対象として、上の血圧を120未満まで下げる治療をするときと、140未満までの120〜139の間に比較的緩やかに下げる場合とを比較した。最も長く治療効果を見た人と短く治療効果を見た人を並べたときに、真ん中の人の調査期間、つまり中央値で 6.0年の治療効果を見たとき、上の血圧を120未満にしたグループでは、1年当たり1000人中80.9人が亡くなる計算となり、140未満の緩やかな治療のグループは1年当たり1000人中41.8人が亡くなった計算となった。結果として、強い血圧を下げた方が、死亡の危険度が1.7倍高まったと考えられた。
腎臓悪い人は血圧を下げ過ぎるな、120未満でかえって死亡率が1.7倍に|welq [ウェルク]
血圧の下げ過ぎによる弊害といえば、めまい・ふらつきによる転倒リスクがあるが、腎機能悪化の要因にもなり得ることを気に留めておこう。
血圧と腎臓
高血圧はCKDの原因になり、既存のCKDを悪化させます。
一方、CKDは高血圧の原因ともなり、高血圧を悪化させます。
このように、高血圧とCKDは悪術環の関係にあるため、血圧のコントロールが重要になります。
CKDにおける降圧の意義は、CKDの進行を抑制し、末期腎不全への進展を防止あるいは遅延させることと心血管疾患(CardiovascularDisease:CVD)の発
症・進展を防止・遅延させることにあります。
降圧目標は、診察室血圧130/80mmHg以下であり、夜間高血圧や早朝高血圧などの日内変動異常もCKDを悪化させる原因となります。
ARB、ACE阻害薬は他の降圧薬に比較して尿蛋白減少効果に優れており、腎保護効果は尿蛋白、アルブミン排泄量が多いほど期待できます。
腎硬化症
腎硬化症は、高血圧の持続で生じた腎小・細動脈の動脈硬化性病変に基づく腎障害をいう。
この動脈硬化性病変は、小葉間動脈や輸入細動脈の血管内腔を狭窄させ、腎血流量を低下させる。
治療せずに放置すると、糸球体虚血から糸球体硬化が引き起こされ、腎実質の硬化や萎縮に至ってしまう。
健康な人の糸球体内圧は、輸入細動脈の自動調節能によって全身血圧とは独立して一定(50mmHg)に保たれている。
腎硬化症でも病初期は、自動調節能が働いて糸球体内圧が保たれる。
ただし、顕性尿蛋白を伴うケースでは、自動調節能が破綻して糸球体内圧が上昇していると考えられ、病状が増悪しやすいので一層の注意が必要である。
糖尿病性腎症では、輸入細動脈の自動調節能が破綻して糸球体内圧が上昇するので、初期には腎肥大が起こる。
しかし糸球体高血圧が続くと、やがて糸球体硬化に至る。
透析と高血圧
CKD(慢性腎臓病)における高血圧はCVD(心血管疾患)の強力な危険因子であり、降圧の意義は、①CKD の進行を抑制し、ESKD(末期腎不全)への進展を防止・遅延させる、②心腎連関によるCVDの発症・進展を抑制し,死亡リスクを軽減することにある。
CKD患者の治療目標は、診察室血圧130/80mmHg以下、蛋白尿がlg/day以上の場合は125/75mmHg未満とする。
ただし高齢者では、蛋白尿にかかわらず140/90mmHgを目標に降圧し、腎機能悪化や臓器の虚血症状がみられないことを確認し、最終降圧目標を130/80mmHg以下として慎重に降圧する。
過度の降圧は腎血流量低下により腎機能を悪化させる可能性があるので、特に65歳以上の高齢者では、診察室血圧で収縮期血圧llOmmHg未満への降圧は避ける。
また高齢者のCKD患者では,5~22%が動脈硬化性腎動脈狭窄症を合併すると報告され,急激な降圧は腎機能を悪化させる危険があるので,2~3ヵ月かけて目標値に達成するように緩徐な降圧治療を行う。
夜間高血圧や早朝高血圧などの血圧日内変動の異常は,CKDを悪化させる危険因子であり,特にCKD患者では夜間高血圧が多くみられる。
就寝前の降圧薬服用はCVD発症を約70%抑制するという報告があり、これには夜間血圧低下による血圧日内変動の改善と,尿蛋白減少の関与が考えられるとされている。
治療としてはRAS阻害薬(ACE阻害薬、ARB) を第一選択薬とし、降圧目標が達成できない場合は,第二選択薬として長時間作用系型Ca拮抗薬、サイアザイド系利尿薬(CKDステージG1~G3), 長時間作用型ループ利尿薬(CKDステージG4~G5) を使用する。
RAS阻害薬は降圧作用に加えて腎保護作用や心保護作用を有している。
他のクラスの降圧薬と比較して,尿蛋白減少効果に優れており,その腎保護効果は糸球体高血圧の程度が強いほど,つまり尿蛋白・アルブミン排泄量が多いほど期待できる。
RAS阻害薬はアンジオテンシンⅡの作用を阻害して,腎糸球体における輸出細動脈を拡張させ,糸球体内圧を低下させることで蛋白抑制効果を現す。
すでに腎機能が中等度以上低下している場合には,高K血症などの副作用防止のため、低用量から慎重に開始する。
血圧が高いほうが調子がいい?
「血圧が高いほうが調子が良いんだ」と仰る患者さんがいます。
それに対して、「血圧が高いと脳梗塞や心筋梗塞のリスクがうんぬん…」とか説明しても響かない。
調子が良いという患者さんの実感に勝るものは無い。
「ホンマでっかTV」で、朝塩をなめるとテンションが上がる、という話をしていた。
血圧を上げて、脳に血液が巡るようにしたほうが、頭が冴えるのだろう。
覚醒剤みたいなもの、とまではいきませんが、続けていれば健康を害する恐れはある。
血圧を下げれば、めまい、ふらつき、起立性低血圧で目覚めが悪いかも知れません。
降圧剤を飲んで、体調が優れないという患者もいるかも。
医療の目指すところは「寿命を延ばす」ということで、患者さんが「充実した人生を送る」ということではない。
「少しでも長生きをしたい」のか「早死にしても良いから、調子の良い今日を過ごしたい」と思うのか、患者さんに委ねる。
高齢者の血圧は下げなくてもいい?
高齢者の降圧目標値については議論の分かれるところです。
70歳以上では、血圧が高めのほうが生命予後が良い傾向にあります。
Jカーブ現象
冠動脈疾患(虚血性心疾患)と診断された方では拡張期血圧の過度の低下により逆に心筋梗塞や脳卒中などの心血管事故や死亡率が増加することが示されており(Jカーブ現象)、高齢者の場合、臓器障害を既にもっている方が多く、過度の降圧で虚血が起きやすいので注意が必要です。
そのため、以前のガイドラインでは高齢者の降圧目標値が若年者の降圧目標値よりも高めに設定されていました。
60歳代では140/90mmHg未満、70歳代では150~160/90mmHg未満、80歳代では160~170/90mmHg未満という風に。
しかし、現在のガイドラインでは高齢者の降圧目標値は70歳以上でも140/90mmHgと厳しく設定されています。
これは、以前の年齢別の血圧設定がエビデンスに基づくものではなかったことと、1999年のWHOの勧告で高齢者の降圧目標値も140/90未満とされていることから、世界標準にあわせた設定にされています。
血圧100mmHg以下は低血圧
全身動脈圧の低下を低血圧という。
明確な定義はないが、一般に収縮期血圧100mmHg以下の場合をいうことが多く拡張期血圧は考慮しない。
低血圧の基準を満たしても愁訴や症状のない場合は体質性(本態性)低血圧と定義され、治療の必要性はない。
朝起きられないのは低血圧のせい?
低血圧とは一般的に収縮期血圧が100mgHg以下の場合を言いますが、正式な診断基準ではありません。
高血圧と違って、低血圧に診断基準はありません。
血圧は夜眠っているとき低くなり、日中は高くなりますが、低血圧の人はこの血圧の上昇がうまくいかないため、朝起きるのがつらかったり、だるかったりします。夕方から夜にかけては人より元気になったりする人もいます。
そのために怠けていると思われる人も多いようです。
原因としては、精神的ストレスが自律神経に影響して、血圧のコントロールがうまくいかなくなって起き上がっても血圧が上昇しないということが考えられる。
高血圧と違って、命に関わる病気ではないので軽視される。
降圧剤で立ちくらみ
高血圧は自覚症状がほとんどありませんので、たとえ軽い症状でも、服薬をやめてしまう人、あるいは治療を中断してしまう人がいます。
そこでまず、高血圧治療の意義、すなわち脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の予防に極めて重要であることを説明します。
また、利尿薬を含めてほとんどの降圧薬は血管拡張作用を有するので、降圧治療を始めると立ちくらみを起こす可能性が高くなります。
そのことを知らされていない患者さんは、立ちくらみが頻繁に起こると服薬を中止してしまう方がほとんどです。
そこで、「降圧薬は血管を開いて血圧を下げるので、立ち上がった時に足の方に血液がたまりやすくなり、立ちくらみが起こることがあります。或る意味で、それは薬が効いている証拠でもあります。
できるだけ、ゆっくり立ち上がることを習慣にしてください。特に、食後、入浴時、朝方、酔っている時、夜トイレに行く時は、気をつけてください。立ちくらみが起こったら、しゃがみこむか、横になれば症状は良くなるはずです。ゆっくり立ち上がっても症状が起こるようなら、医師と相談してください。」と説明します。
また、高齢者では、食後に血圧が下がり眠くなることがあります。
そのような場合は、食後に座って血圧を測ってもらい、収縮期血圧が110mmHg以下の場合は、下げすぎの可能性もありますので、主治医に相談するようにしましょう。
降圧剤でめまい?
立ち上がると血圧が急に低くなり、立ちくらみや目まいなどが表れやすい薬です。
特に、服用を始めたときに起こりやすいことが知られています。
服用中はゆっくりと立ち上がるようにし、危険を伴う作業を行う際には特に注意してください。
薬の服用で急に血圧が低下すると、ふらつき、目まいなど低血圧の症状が表れることがあります。
そのような症状が表れた場合は、無理をせずに横になって安静にし、治まってから医療機関に連絡するか受診するようにしてください。
また、薬の服用中は高い所での作業や車の運転など、危険を伴う機械の操作には十分に注意してください。
一般に、血圧が低い場合でもその症状が表れなければ中止せずに服用を続けますが、家庭で測定した最高血圧が90~100mmHg以下に低下した場合や、症状が続くような場合は医師や薬剤師に必ずご相談ください。
The lower,The better
血圧とは血管にかかる圧力のこと。高血圧はその圧力が高い状態です。
左心室より駆出された血液は血管系を介し全身を循環するが、この際に動脈壁に生じる圧力が血圧である。
血圧が高い一番の問題は、「動脈硬化を引き起こす」ことです。高い圧力が続くと、その圧力に耐えるために血管壁が堅く・厚くなり、コレステロールなどの脂質がたまりやすくなり、通り道は狭くなるため、さらに血圧が上昇します。
高血圧は、血圧が持続的に上昇した病態であり、多くの場合は末梢血管抵抗の増大によって引き起こされます。
高血圧は、脳卒中、心筋梗塞などの心血管疾患の主要な危険因子であり、健康寿命の増進を図るうえで、血圧の管理は重要な問題である。
高血圧は、動脈硬化の進行や心負荷の増大を介して、脳や腎臓、心臓、大血管などの臓器障害を引き起こします。
これらの臓器障害は、高血圧患者の生命予後に強い影響を及ぼします。
血圧は左室収縮期に最高値(収縮期血圧)、左室拡張期に最低値(拡張期血圧)となり、それぞれが一定のレベルを超えた場合(収縮期血圧≧140mmHgあるいは拡張期血圧≧90mmHg)が高血圧である。
食塩摂取制限を中心とした生活習慣改善の啓発や各種の優れた降圧薬導入などにより、1970年代以降、国民の血圧値は各年齢層で低下傾向にあるが、60歳以降では男女とも男女とも高血圧の頻度が50%を超え、わが国では約4000万人が高血圧であると推定される。
高血圧は心血管疾患(脳血管障害、虚血性心疾患)のリスクを高め、この比例関係は140/90mmHg未満の正常値領域においても延長され、疫学的には115/75mmHgくらいまでは血圧が低値であるほどリスクが小さく、The lower,The better の考え方が指示される。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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