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エクオールとイソフラボンの違いは?
公開. 更新. 投稿者:月経/子宮内膜症.この記事は約5分34秒で読めます.
5,275 ビュー. カテゴリ:エクオールと更年期障害
大豆イソフラボンがエストロゲン様の作用を持つことが知られていますが、特に大豆イソフラボンの1つであるダイゼインからは、腸内細菌によって強力なエストロゲン様作用をもつエクオールが産生されます。
大豆イソフラボンには、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテインの3種類がある。このうち、ダイゼインがある種の腸内細菌によって代謝されるとエクオールが産生される。イソフラボンは元の状態でも弱いエストロゲン様作用を持つが、エクオールは代謝される前のダイゼインよりも強いエストロゲン様作用を持つとされる。
エクオールはエストラジオールに類似した化学構造を持ちます。
エクオールの活性はエストロゲンの1/1000~1/100と報告されています。
このエクオールのエストロゲン作用が、大豆イソフラボンの更年期障害に対する作用の本体だとする仮説が2002年に提唱され、注目されるようになりました。
エクオールの産生能には個人差があり、日本人の約50%は大豆製品から体内でエクオールを産生できません。
イソフラボンを摂取しても十分な効果が得られない場合があるわけです。
ちなみにイソフラボン誘導体であるイプリフラボン(オステン)という医薬品もありますが、これの効果も個人差があります。
エクオール産生能を持っている人でも、産生能には個人差があり、しかも腸内の状態などにより、比較的大きな日内変動があることが示されている。このため、エクオールを食品として摂取できれば、非産生者であってもエクオールの恩恵が受けられると期待された。
エクオール含有食品を用いた大規模な臨床試験で、ホットフラッシュや首や肩の凝りが有意に軽減し、さらにシワやたるみも改善することが分かりました。
薬だけに頼らず、エビデンス(化学的根拠)に基づいた信頼性のある食品(サプリメント)は、安全かつ自然な形で植物性エストロゲンを補充できると考えられます。
エストロゲン様作用を期待して投与するのであれば、エストロゲンをホルモン補充療法として投与するのが一番かと思いますが、性器不正出血、乳房痛、帯下の増加、血栓症のリスク上昇といった副作用のため服用できない患者もいる。
そのような場合にサプリメントを使用するのも一つの手。
エストロゲン受容体
エストロゲン受容体(ER)にはα受容体、β受容体が存在し、全身に分布しています。
α受容体は主に生殖器に、β受容体は骨・前立腺・血管などに分布することが知られています。
エクオールには光学異性体(S,R体)が存在します。
しかし、これまでにヒト、動物の血液および尿中で検出されたエクオールは全てS体です。
S体エクオールのβ受容体への結合親和性は0.73+0.2nmol/Lで、α受容体への親和性6.41±1.0nmol/Lに比べ、β受容体への結合親和性が高いことが報告されています。
この親和性と受容体の分布の違いから、S体エクオールは、生殖器への影響が少なく、他の組織でのエストロゲン作用が期待されます。
イソフラボンと乳がん
大豆製品(納豆、豆腐など)を食べると乳がんの予防になるといいます。
2003年に公表された多目的コホート研究において、閉経後の女性では、大豆などに含まれるイソフラボンの摂取量が多い人ほど乳がんの発生リスクが低下するという結果が得られ、最大では70%低下していました。
大豆に含まれるイソフラボンは、女性ホルモンのエストロゲンに似た化学構造をしています。
このため、イソフラボンが乳腺細胞のエストロゲン受容体に競合的に作用し、エストロゲンより先回りして結合することでエストロゲンの作用を弱め、これが乳がんのリスクを低下させるのではないかとみられています。
イソフラボンは、更年期などでエストロゲンが減少した状態ではエストロゲンの働きを補います。
しかし、エストロゲンが多い状況ではエストロゲンの働きを抑えるため、乳がんの発生を予防するらしいです。
また、イソフラボンは、男性においても前立腺がんの発がんリスクを下げるとする研究報告もあります。
イソフラボン(ダイゼインやゲニスタイン)はエストロゲンと構造的に類似していますが、タモキシフェンやラロキシフェンなど合成選択的エストロゲン受容体修飾剤(SERM)との構造的な類似点がはるかに多く、いわゆるSERM様の作用を示すと考えられています。
すなわち、内因性エストロゲン濃度が低い閉経後女性では弱いエストロゲン作用を及ぼす一方、内因性エストロゲン濃度が正常な閉経前女性では、抗エストロゲン作用を示す可能性があります。
ただ、乳がんになってしまったあとは、抗エストロゲン剤が処方されることもあるので、積極的に大豆製品を摂るのは止めましょう。
イソフラボンと肝がん
多目的コホート研究から導き出された結果では、イソフラボンの摂取は、肝臓がんのリスクを上げることが示されました。
食事内容から割りだしたイソフラボンの摂取量によってリスクを検討したところ、女性では、摂取量が最多(1日当たり豆腐なら100g以上)のグループでは、肝臓がんの発がんリスクは、最小(同50g未満)グループに比べて最大3.9倍という結果でした。
これは、エストロゲンに肝臓がんを予防する作用がある可能性があるためで、肝炎ウイルス感染者の割合に男女差がほとんどないにもかかわらず、肝臓がんの発生率は女性のほうが男性より低いのは、それが原因の1つだという考えもあります。
イソフラボンを摂取することで、エストロゲンの作用が競合的に妨げられる可能性があるとみられています。
これらの結果から、乳がんのリスクが高い人は、大豆製品(豆腐、納豆、煮豆、油揚げ、みそなど)などを通じて、イソフラボンをバランスよく食事に取り入れることが推奨されます。
一方で、肝臓がん患者の約8割を占める肝炎ウイルス感染者は、大豆製品の摂取について見直す必要があるかもしれません。
ホットフラッシュと大豆イソフラボン
更年期障害の代表的な症状にホットフラッシュがある。
ホットフラッシュは、顔を含む上半身に突発的にのぼせやほてりを感じ、頬が赤らんだり汗をかいたりするもので、QOLに大きく影響する。
ホットフラッシュの患者がサプリメントを摂取するケースは多く、大豆イソフラボンがよく用いられる。
大豆イソフラボンは植物性エストロゲンとも呼ばれ、1990年代から更年期障害への投与試験結果が多数報告されているが、有効性については評価が一定していない。
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