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サリチル酸ワセリン軟膏でサリチル酸中毒?
公開. 更新. 投稿者:痛み/鎮痛薬.この記事は約3分2秒で読めます.
2,100 ビュー. カテゴリ:サリチル酸中毒
サリチル酸中毒ってあるの?
エアーサロンパスの添付文書を見ていたら、
過量投与
類薬での報告(外国症例)
魚鱗癬、乾癬症等に対してサリチル酸軟膏を大量、広範囲に塗布した例で、サリチル酸中毒を起こしたとの報告がある。
という記載がみられた。
10%サリチル酸ワセリン軟膏が数百グラム処方されている皮膚科の患者はたまにいる。
魚鱗癬、乾癬などの患者がサリワセ使い過ぎて気持ち悪くなっていたら、中毒起こしているかも知れないので注意。
100gの10%サリチル酸ワセリン軟膏には10gのサリチル酸が含まれる。
皮膚からどの程度吸収されるかはわからないが、仮に1%が血中に移行するとしたら、100g塗ったら100mg。このくらいなら大したことない。
500gのボトルそのまま渡すような患者じゃなければ、サリチル酸中毒まではいかない。
ちなみにサリチル酸中毒の症状。
一般に,アスピリンは150mg/kg以上服用すると嘔気,嘔吐などの症状が出現し,300mg/kg以上で重症となる.アスピリンおよび体内で加水分解されて遊離したサリチル酸により,次の作用を示す.①中枢神経の刺激により呼吸中枢が刺激され,頻呼吸となり,呼吸性アルカローシスと代償性の代謝性アシドーシスにいたり,また脱水症の一因となる.②細胞内では,酸化的リン酸化を切断し,ブドウ糖と脂肪酸の代謝を阻害する作用がある.③脳および肺の浮腫の発症機序は明らかでないが,毛細血管の透過性の変化と関係がある.④サリチル酸が血小板を変化させ,そしてプロトロンビン時間も延長させる.日本中毒学会 その5 サリチル酸
日本中毒学会 その5 サリチル酸
アスピリン150mg/kgとしたら、体重30kgで4.5g。
アスピリンの用量が、1日1.0~4.5gなので、アスピリンの1日量を飲んでサリチル酸中毒を起こすことは十分考えられる。
サリチル酸ワセリンは寄生性皮膚疾患剤?
サリチル酸ワセリンの薬効分類を見たら「寄生性皮膚疾患剤」となっていた。
サリチル酸ワセリンの作用機序をインタビューフォームで確認すると、
「サリチル酸は角質を剥離する作用が強く、角質層に多く存在する白癬菌とともに脱落させることにより抗菌作用を効果的にする」
と書かれている。
角質溶解薬は広くとらえると、抗菌薬という分類のようだ。
サリチル酸は抗菌薬?
サリチル酸といえば、スピール膏とかサリチル酸ワセリンとか。
皮膚軟化剤みたいなイメージ。
サロンパスなどのシップには鎮痛剤としてサリチル酸メチルが入っている。
サリチル酸系NSAIDsというイメージ。
アスピリンも肝臓でサリチル酸となる。
そんなサリチル酸。
抗菌作用もあるようです。
サリチル酸
3.サリチル酸には、抗菌作用がある
サリチル酸(サリチル酸メチル)は、病原菌に感染した植物で、感染した葉から感染した信号として産生され、他の葉に病原菌の存在を知らせ、酸性PR蛋白質(pathogenesis-related protein)と呼ばれる抗病菌タンパク質を誘導する。ジャスミンの木などの植物は、葉などが障害されると、MAPキナーゼホモログが、リン酸化により活性化され、ジャスモン酸(ジャスモン酸メチル)が産生され、塩基性PR蛋白質が、誘導され、他の葉に危険を知らせる。ジャスモン酸の構造は、動物の炎症物質である、プロスタグランジン(PG)やロイコトリエン(LT)などの構造と、相似している。
サリチル酸とジャスモン酸は、拮抗的に作用する:サリチル酸やアセチルサリチル酸は、ジャスモン酸のような、シグナル伝達物質の合成を、阻害すると言う。
サリチル酸やジャスモン酸は、植物が侵害を受けた時に、発せられる香りや匂い成分。サリチル酸は、黄色ブドウ球菌の毒性を弱める:毒素産生の抑制(α溶血素の分泌抑制)や、宿主組織への接着能力を抑制(フィブロネクチン結合を抑制)する(in vitro)。アスピリンは、体内で、サリチル酸に代謝されるので、抗菌効果も期待出来るが、殺菌作用はない。
アスピリンにも抗菌効果が期待できる。
血液サラサラにしたり、痛みをとったり、抗菌効果まで期待できて、万能だなあアスピリン。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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